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第834話◇

「あ、玲央の鯉、居た」 「すぐ見えるよな。目立つ」 「ほんとに玲央みたいだね」  そう言うと、はは、と玲央が笑いながら、ペットボトルを「飲む?」と渡してくる。オレが受け取ると、玲央は蓋を開けて、水を煽った。  ――――……上向いた首が、綺麗だなあと。  絵になるなあ、と、綺麗な青空を背景に、玲央を見上げてしまう。 「ん?」  気づいた玲央が、蓋を閉めながらオレを見下ろす。 「……なんか。カッコイイなぁ、と」 「なんだそれ」  は、と笑って、ふに、と頬に触れられる。 「襲うよ?」  ふ、と緩む瞳に、どき、と心臓が弾む。 「オレ、昨日からすっげー我慢してんだけど」  すり、と頬を撫でられて、そんな風に言われると。  ……その触れ方に、ぞく、と背筋に何かの感覚が走る。 「……今日、早めに帰ろうかな。もうじいちゃんが優月と触れ合うのは出来たと思うし。どっかデートに行ってもいいよな」  ふ、と笑って、玲央がオレをよしよし撫でる。 「どこかデート、行きたいとこある?」 「えっ玲央とデートでしょ? いっぱいある」 「そうなの? 例えば?」 「今日行けるところ?」 「今日じゃなくてもいいよ。オレとデートしたいとこ全部言ってみな?」 「玲央はもしかしたらいっぱい行っちゃってるかなあ?」 「って、何で楽しそうなの。むしろそういうの言う時は嫌がれよ」 「えーだって。オレが今から言うの、すっごいデート、て感じのとこだから」  ふふ、と笑ってしまうと、「いいから、言ってみ?」と、玲央が優しい。 「んとね。水族館とか、遊園地とか、美術館……はオレの趣味だけど、動物園とか、アスレチックとか……? あっ日帰り温泉とか? 映画とか。でっかい公園とか。カラオケとかは玲央のコンサートになっちゃうけど。あっ、ディズニーランドも行ってみたい」  思いつくまま、誰かと付き合ったらデートしてみたいなーと思っていた場所あげている間、玲央は面白そうにオレを見つめていた。 「うーん、ぱっと浮かぶのはこれくらいかなー」 「いっぱい言ったな」  クスクス笑って、玲央はまたオレの頭をなでなでしてる。 「そういうデートかぁ」  玲央が楽しそうに笑うので、あれ? と首を傾げる。 「そういうデートって、どういう意味?」 「今までオレがしてたのは……適当に街ぶらついて買い物したり、カフェ行ったり、クラブとか……」  とか、で何かを言いかけて、玲央が口をつぐんだのに気づいて、玲央を見上げると。 「……あーと、まあ」 「……??」 「……不健全なのは、今優月に言いたくない」  少し困ったように言う玲央に、あ、なるほど、と頷いていると。  むぎゅ、と抱き寄せられた。 「なるほど、とか納得すんなよ」  苦笑交じりの玲央の声。なんか困ってる。 「――――……」  前のことだし、別に今更そんなに困ってくれなくてもいいのにと思うんだけど。……なんかそんな感じで困ってくれる玲央が、なんか可愛い。  ていうかそれよりも。 「オレが言ったデートって、子供っぽすぎる……??」    そっちが気になってしまって、聞いてみると。  玲央は、オレを少し離して、見下ろしてくる。 「んー……まあ、聞いてて、可愛いなと笑ってたけど」 「ですよね……」 「ただ、オレは、そっちのデートが新鮮」 「――――……」  新鮮、なんだ。 「あんまり、行ってない?」 「行ってないな、特にテーマパーク系。グループで連れ出されたことはあるけど、二人でとかは無い」  そうなんだ。……そっか、玲央の付き合ってたって、恋人、とかだったのは、高校の途中まで、だったんだっけ。あとは全部、そういう関係の……。なるほどー。 「……ってことはね?」 「ん?」 「玲央もあんまり、ちゃんとデートっぽいのはしてないってこと?」  行きつくしちゃってたかと思ってたんだけど。と思いながらそう聞くと。 「してないな」  と玲央は苦笑い。 「だから行こうな、これから、たくさんデート」 「じゃあ、玲央が行きたいと思ってくれるとこ、いこ?」 「優月が楽しそうなら、多分、オレ、どこでも平気」 「――――……」  わー……。  なんかもう。……嬉しすぎて困る。  言葉を失ったオレを、玲央は、ん? とにっこり笑って見つめてくる。   (2024/5/17) すぐするとは限らないんですがいつかのために。。 どこデートが最初に見たいです? もしあれば(*'▽')?

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