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第846話◇

 少し冷めてから、頬から手を外すと。クスクス笑ってる玲央が、オレを見つめる。 「こういうのは、照れちゃうか」 「……照れる、どころじゃないかも……燃える??」  ちら、と玲央を見上げて言うと、玲央はオレの顔を見て、「燃える?……まあ確かにそんな感じかも」と繰り返して、可笑しそうに微笑む。 「――まあでも冗談じゃなく、ほんとにそう思うんだけどな。元気になる」 「……余計に燃えそう」 「ごめん」  玲央はクスクス笑って、オレを見つめてくる。  そっかぁ。玲央は、元気になるのか、あれで……。  正直オレは、全部の体力使い果たし……というか、体力どころか、気力も使い果たしてる気分なんだけど、この差は一体。慣れ、かなあ??  うーん。慣れたら、元気になるのかな??  あーでも、きっと基礎体力が違う気がする。  玲央についていけるだけの体力、つけた方がいいよね。じゃないとオレ、夜いっつもお世話してもらっちゃうし。申し訳ないもんね。なんて考えていたら 「んー……オレ、体力つけないと……」  つい、ぼそっと漏れたひと言。最近色々あって玲央もジム行けてないと思うし、前に連れて行ってくれるって言ってたし。頼んでみようかな、と玲央を見上げると。  玲央は、手を口元にあてて、笑いをこらえる、みたいな感じ。  ん?? 思わず首を傾げる。 「それってさ」 「うん??」 「体力つけて、付き合ってくれようとしてンの?」 「――――付き合う??……あ」  意味が分かった瞬間、玲央の顔をマジマジ見つめてしまう。  焦って、ちがう、と言いかけたけど、よく考えたら、そういうことを言ったことになっちゃうのかも、と気づいた瞬間。もう本当に、あっつくなって、手の甲で口元を隠しながら、玲央をただ見つめ返す。  ふ、と笑った玲央が伸ばした手に、くしゃ、と頭を撫でられた瞬間。  なんか周りで、きゃー、と、女の子の声が。……複数したような。気のせいかな……。  なでなで、とされたところで運ばれてきた料理。  玲央は特に狼狽えることもなく、そっと手を離して、料理を置かれるスペースを開けた。 「食べよ」 「ん。いただきます」  手を合わせてから、食べ始める。なんかまだ顔は熱いけど、少しは収まったかな。なにげなく、周りに視線をむける。人とは目が合わないようにちょっと上の方を。……さっきの、きゃーってなんだろう。玲央がオレを撫でたから?? 「……優月」 「え?」    玲央に視線を戻すと、玲央は、ふ、と笑って、オレをまっすぐ見つめた。 「無理しなくていいよ」 「……無理?」 「少し反省してる」 「反省??」  首を傾げてしまうと、玲央は、苦笑しながら、一口お水を飲んだ。 「ライブなのに、連れ込んで、結構手加減なしだったし。ごめんな。体力つけなきゃ、とか言わせる位疲れた?」 「……あ、いや……違くて」  わーなんか、玲央になんか心配させてる。しかもなんかちょっと違う。  説明……恥ずかしいけど。でも。誤解させてるのはやだし。 「今はだいじょぶ。……今日のことっていうより、あの……普段、オレ、夜寝ちゃうでしょ……」 「……ん?」 「寝ちゃって、玲央に……綺麗にしてもらっちゃったりする、でしょ」 「ああ。……あ、そっち?」 「そう。寝ちゃわないように……」  そう言うと、玲央はちょっと黙った後、ふ、と笑い出した。 「あれは、寝ちゃってるっていうより、気持ち良くて落ちちゃってるって感じだからな。オレは嬉しいけど。つか、永遠にあれでいいけど? 可愛いから」  ちょっと小声で、ちょっと妖しく。囁いてくる玲央に、ぼっとまた顔に熱が集まる。  もー玲央……!  優しくて大好きなのだけど! ……ぜったいからかってる……! 

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