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第851話◇
勇紀の心配を、ちょっと考えてみる。
玲央が落ち着いて、色気みたいなのがなくなったら。
まったり、猫抱っこして、オレと一緒にほのぼの玲央になっちゃったら。
バンドの危機……?
ていうか。
――玲央から色気みたいなのがなくなることなんて、ある??
「玲央……」
くいくい、と玲央の服をつまんで引くと、玲央が「ん?」とオレを見つめた。じっと見つめ返すと、玲央の瞳が、キラキラする。
「……大丈夫だと思う」
オレが自然と発した言葉に、皆がオレを振り返った。
「玲央が色っぽくない時なんて、来ないよ」
理由とか根拠なんてないけど、もうそれは絶対。
ついさっきも、もう壮絶に色っぽかったし。
確かにクロを抱っこしてる時の玲央は優しくて、すごく良い感じだけど。
……何というか。
何してても、すぐ、あやしい雰囲気にもっていくのは玲央の特技……? みたいな気がするし。――ていうか、特技ってなに。
自分の思ったことに、ふふ、と笑ってしまいながら、オレは玲央を見上げた。
「バンドの危機なんて、来ないよね?」
そう言って、玲央の返事を待っていると。
玲央は、面白そうにオレを見つめてから、ふと三人に視線を投げる。
「だってさ」
玲央の言葉に、皆は、一瞬黙って、その後、ははっと笑い出した。
「一番近くで見てる優月がそう思うなら、そうかもな」
颯也の言葉に皆が頷いてる中、玲央が「あーでも」とオレを見つめる。
「優月次第かも?」
「え??」
オレ次第? どういう意味?と玲央を見つめると、玲央は、ふ、と瞳を細めて、キラキラした瞳でオレを見つめる。
「優月が可愛ければ、オレはずっとそのまま行くかな」
「え。そ、それはどうだろう……」
「――どうだろうな?」
なんだか楽しそうに笑って、玲央がオレの肩を抱き寄せる。
オレ次第とか言われちゃうと、それはなんか、オレには無理なような……玲央を見上げようとすると、めちゃくちゃ至近距離の玲央は、めちゃくちゃ楽しそうにオレを見つめている。
「――――っっっ」
玲央の顔、大分近くでも見慣れてきたのに、なんかもう、どうしてか急に外で、皆の前でだと、一気に恥ずかしくなって、かあっと熱くなった。
「――――あー、もう、可愛い」
「え。あ」
頬に手が触れたと思ったら、そのまま優しく上向かされて、玲央の顔が少し傾いて。キラキラの瞳が、目の前にきたと思ったら。
「ん」
唇が重なってきて――玲央しか見えなくなる。
「――――っ」
一瞬だけ舌が触れてきて、ついつい応えてしまいそうになった瞬間、玲央が唇を離して、オレの目の前で――舌で自分の唇をぺろ、となめて笑った。
笑顔が強烈すぎて、心臓の音がめちゃくちゃうるさい。
「アホらしい」
低い、颯也の声。
「勇紀が変なこというから、こうなったんだぞ」
ため息とともに、甲斐の声。
「ええっ!!二人だってそれは困るって心配してたじゃん!!」
勇紀がそんな風に訴えて、「もーなんなの、玲央ー!」とむくれてる。
「ていうか、もう優月真っ赤だし」
勇紀はオレに視線を移すと、やれやれと笑う。
VIP席の入り口はすいてるとは言っても、人は居るのだけど……。今のキス見られなかったのかなと、ちょっと唇を押さえながら、周りを見ると。
「――ほっぺ挟んでたから大丈夫だよ」
玲央は、クスクス笑った。なんか悪戯っぽい顔をして。
…………それは、ほんとに唇のとこだけ隠れてるだけで、キスされてるのは丸見えだったのではないのかなと思うのだけど。だから、そんな、楽しそうな顔してるんだろうけど。
「――――玲央」
「ん?」
「……大好き」
ふふ、と笑って言ったオレに、皆が一斉に「アホらしい」と言いながら歩き出した。「ほらもう中入ろうぜ-」と勇紀に呼ばれて、うん、とついて歩くと。
「玲央が枯れるわけなかった。そうだった。肉食獣って感じじゃんね、マジで。すげーアホな心配しちゃった。なんか優月次第って言ってるから、優月、頑張って。無理な時は断るんだよ?」
そんな台詞の勇紀の呆れた笑顔に、もう苦笑するしかないけど。
一応、うん、と頷いた。
オレ次第、とかじゃなくて、玲央は、絶対ずっとキラキラしてると思うし、色っぽい人だと思うんだよね。
なんて言うのかなぁ。なんかこう……魂から、キラキラしてそ。
ふふ、と笑ってしまう。
(2024/9/24)
前回の本にするかもな話。
いつかできたらいいなぁと思います✨
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