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第858話◇
結局、何も詳しいことは言えずにその話は終わった。
玲央も言わないでくれているし、ゾクッてしちゃったなんて言えるわけないし。
顔が熱いのもやっと落ち着いた頃。
「そういえばさ、優月。免許、取るんだよね?」
勇紀がそう言ってオレに視線を向けた。
「あ、そうそう。夏休みとかに合宿にしようかと思ってたんだけど、学校行きながら取ろうかなって。土日もあるし」
「ていうか玲央が合宿なんて行かせてくれないでしょ。絶対心配しそうだもんねぇ?」
くくっと笑いながら、玲央を見てる勇紀。
「だってほら、誰かと一緒の部屋になったりもするしさ。なんかねえ、恋が生まれたり……」
「しないけど……」
「しないだろうけど、でも、優月がしなくたって迫られることもあったりしたらさ、ほら、心配性の彼氏はね……」
面白そうに言いながらじっと見つめる勇紀の視線に、玲央が、ふ、と息をついた。
「まあ確かに合宿は反対したけど」
「やっぱり―?」
喜んだ勇紀は、クスクス笑いながら「大変だね優月」と言ってくる。
「まあでも、心配性は抜きにしても、ライブもまわるし、夏休み前にとれたらいいよね。あ、どこの教習所に行くとか決めた?」
「友達が一か所パンフレットくれたんだけど、いいこといっぱい書いてあってね」
「まあパンフレットは良いことしか書いてないよね」
「うん、まあそだね」
うんうん、と頷いて、「別のとこのパンフレットも見てみようかなって思ってるんだけどね」と言うと、勇紀がちらっと玲央を見た。
「玲央にもどこがいいか聞いてみた方が良いんじゃない? 心配性だから」
クスクス笑ってる勇紀をチラ見して、玲央はオレを見つめた。
「すぐ入るなら、バンドの練習の帰りとかに迎えに行きやすいとこがいいかな」
「え。迎えに来てくれるの?」
「だって遅くなるだろ」
そんなオレ達の会話を、他三人が、それぞれな顔をして見守っている。
勇紀は、ひえーて笑ってるし、甲斐もなんか呆れて笑ってるし、颯也は、よく言ってる「慣れてきた」みたいな顔でなんかちょっと頷いてるし。
「付き合ってる子の迎えに行くことをまず考えるように、なれたんだねぇ……なんか成長? したねぇ……」
途中疑問な感じで言いながら、勇紀が笑ってる。
成長って、と笑ってしまいそうになりながら。
「オレ、一応男だから迎えはそんなに……って思うんだけど」
言いながら玲央を見ると、玲央は「ん?」と首を傾げる。
「でも、顔見れるのも一緒に帰れるのも嬉しいから。どこかで待ち合わせとかできたら嬉しいなぁ……」
ふふ、と玲央を見上げて伝える。
すると玲央が答えるより早く、勇紀が「顔見れるのも嬉しいって」とオレを見つめてくる。
「いいなぁ。付き合ってる子に言って欲しい」
勇紀の言葉に、え、となんと言って良いか止まっていると。
「いいだろ」
ふふん、て感じで、玲央が笑う。「……なんか、めちゃくちゃムカつくんですけど……」と勇紀が言って、颯也と甲斐が苦笑してる。
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