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第9話

二日後。 俺の足は再び、ハルのクラス、2-Bに向かっていた。 ハルから事情を聞き出したいのと、させ子を辞めて欲しい旨を伝える為だった。 クラスに着き、教室内を見渡すとハルを探した。 「ハルなら居ませんよ」 先日、ハルに声を掛けていたハルのクラスメイトが俺を見上げて言った。 俺のタッパや正直、どちらかというと強面に思われがちな俺の真顔に緊張しているようだが、強い眼差しだ。 「佐伯....先輩ですよね....?」 「そうだけど」 なんで俺を知ってるんだ?と考えている間に、 「ハルを助けてあげてください!」 「助ける....?」 「ハルなら風邪で休んでます」 ああ、そういうことか、と俺は納得した。 「あ、あと、ハルの寮の部屋、15号室です。よろしくお願いします」 「わかった」 俺は学校を早退し、購買部で一通り、風邪に良さそうなものを買い漁り、寮へと向かった。 「....ここがハルの部屋か」 自分の部屋とは何ら変わりはしない扉に違いないのに、その先に胸が高鳴った。 軽くドアをノックした。 何回かそうしてノックしたが、出てくる様子はない。 どうしたものか、と俺は腕を組み、頭を捻った。 しばらく、そうして、突っ立っていると一人の生徒が校舎側から廊下を走ってきた。 「ハルに用事ですか?風邪で寝込んでます」 「クラスメイト?」 「いえ、1年のときに」 「看病に来たんだけど、ノックしても出ないんだ。倒れてやしないか、て」 ハルが1年の頃のクラスメイトの表情が変わった。 俺の持っている、ポカリやプリンの入っているビニールを確認するかのように見つめた。 「ハルはノックじゃ、絶対に出てきませんよ。番号、教えるんで、LINE追加してください」 そうして、忘れ物を取りに来たという彼のお陰でハルの連絡先を入手した。 早速、LINEで、部屋の前に来ていること、看病しに来たことを伝えた。 (...だけど、ノックじゃ開けない、てどうしてだ?) ゆっくり、ドアが開き、ハルが顔を覗かせた。 ケホケホ、と咳をしながら、 「先輩、どうしてここを、それに僕が風邪、てなんで....」 「いいから。一人で風邪だとか難儀だろう、看病してやるから」 ドアが開かれ、ハルに招き入れられた。 予想していた几帳面な性格通り、きちんと整頓された清潔感のあるシンプルな部屋だった。

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