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どうにも止まらない②
眞門が寝室の扉を開けると、そこには、あられもない姿をした星斗がベッドの上にいた。
「星斗・・・」
眞門はその姿を見て、思わず絶句する。
ボトムスと下着を全て脱ぎ捨て、下半身を丸出しにした格好で股を大きく開き、尻の方に伸ばした右手の人差し指と中指を使って、尻の恥部を自分で虐める淫行に耽っていたからだ。
「・・・あぁ~っん、早く~~っ!
見て・・・もうこんなになってる・・・っ、
早く・・・ご褒美・・・っっっ!!」
尻の中にある快い場所に指が届かないもどかしさからか、星斗は眞門を熱く見つめると、甘くおねだりした。
「・・・・・」
眞門は唖然としながら、状況を眺める。
星斗の方からイヤらしく煽られたのは、星斗と初めて出会った夜の日以来だ。
しかし、あの夜とは明らかに淫 れ方が違う。
あの時は俺と繋がることだけを求めていた。
しかし、今は、ただ淫乱に、自分の中にある肉欲を貪ることだけに耽っている。
そんなあられもない星斗を見ていると、薬で抑え込んだはずのDomの衝動がまたメラメラと蘇ってくるのを感じる。
「・・・チッ」
眞門は静かに舌打ちをした。
『こんな愚かな姿をさらけ出すSubには、きちんとした躾が必要じゃないのか?』
・・・違う。
これは父のせいだ。
眞門の中に棲むDomが、まるで、もう一人の人格者のように、眞門を煽り立ててくる。
眞門は必死でそれをなんとか抑え込もうとする。
『お前が甘やかすからだ。お前の言うことしか聞かないように躾してないお前が悪い』
だから、違うっ。
俺は星斗を大切にしているだけだ!
『大切にした結果がこれだ。見てみろ、なんて、下品で浅ましいSubだ』
違うっ!
星斗はそんなSubじゃない!
「あぁ〜〜〜ン、ご主人様〜〜っ、早くぅ来てぇぇ〜〜っ」
星斗がだらしない顔で眞門を求める。
「星斗・・・」
星斗の淫らに求める声に、眞門の中で何か弾けてしまう。
『ご主人様なら、きちんと躾してやれ』
・・・抑制剤も、効かないっ・・・。
なんとか抗おうとしたが、眞門の中に棲むDomが容赦なく、眞門の全身を再び覆いつくしていった―。
気がつくと、眞門は両腕を胸の前で組んで高圧的な態度を見せ、星斗を見下すような目つきを浮かべていた。
「星斗。なんだ、そのはしたない格好は!」
と、いきなり叱りつける。
「俺はエレベーターの中でなんて言った?
お利口にして、寝室で待ってなさいって命令したんだぞ。
なのに、なんだ、ひとりでそんな下品な真似・・・っ、どうして俺 をきちんと待っていないんだっ」
「だって・・・限界・・・っ、知未さん、早く、ご褒美・・・っ!
俺、知未さんのCommandにきちんと従ったでしょ!」
眞門の見下す目がSubの欲情を更に掻き立てるのか、星斗は眞門を見つめたまま、自分の尻を虐めることを止めない。
「ご褒美目当てで、Commandを要求したのか?
だとしたら、本当に下劣なSubだな。
はしたないから、今すぐ、その行為はやめなさい」
「・・・ムリっ! なに、これ・・・っ、俺の体、どうしたの・・・っ!」
そんな戸惑いの声を上げながらも、星斗は尻を虐め続けた。
自分の言うことを聞き入れない星斗に、呆れたと言わんばかりの顔を浮かべると、眞門は星斗に歩み始めた。
ベッド脇にある引き出しからファー付きの手枷を取ると、星斗の両手を強引に奪い、星斗の頭の上で星斗の両手首を手枷で拘束して、星斗が自ら尻を虐めることを力ずくで止めさせた。
「ご主人様の言うことがどうしてすぐに聞けないんだ?」
眞門は高圧的な表情で見下す。
「だって・・・っ!
知未さんがいけないんだろう・・・っ!
知未さんが俺のチンコなんかに首輪なんかつけるからっ!
自分じゃどうすることも出来ないっ、俺はこんなもの、最初からいらないっ!!」
「フーン、今日はやけに聞き分けの悪い子だな。
うちの父親に何をされた?
私 以外のDomの命令は聞くなとでも躾けられたか!
星斗のご主人様は誰だ!」
眞門は怒鳴りつけた。
「・・・知未さんです」
「だったら、俺の言うことがどうしてすぐに聞けない?
星斗の一番は誰なんだ?」
「・・・知未さんです」
叱られた。
知未さんが久しぶりに本気で怒っている。
ずっと穏やかで安らぎだけを与えてきてくれた森の景色が、暴風で荒れ狂ってる。
星斗は怖さ半分、嬉しさ半分、複雑な気持ちに包まれる。
「いいかい、星斗・・・」
眞門はそう言いながら、星斗の近くに腰を下ろした。
「俺は下品なSubを相手にするのがこの世で最も嫌いなんだよ」
そこまで言うと、眞門の右手が星斗の唇に伸びた。
そして、親指で星斗の下唇を優しく摩る。
「俺の前で下品なSubに成り下がるなんて、父が言う通り、俺の躾がなっていないのかな・・・?
なあ、星斗、どうなんだ?
Say !」
言い終わると同時に、眞門の親指が星斗の口内にゆっくりと侵入していく。
星斗は眞門の親指がまるで唯一与えられた施しのように、口の中で味わいつくそうとする。
「こんなものがおいしいのか?」
「はい・・・」
「もっと違うものが欲しかったんじゃないのか?」
「そうです」
「下品だなー、星斗。
星斗がお利口にしたら、もっと良いものあげたのに・・・」
「・・・・・」
そう言われても、星斗は上目遣いのまま、眞門の親指をただひたすらイヤらしく愛撫する。
「見るに堪えないな・・・」
眞門が蔑んだ目で星斗を見つめる。
その瞳が星斗のSubの欲望をまた焚き付けた。
もっと、怒らせたい・・・もっと、もっと・・・そして、そのまま、ずっと俺だけに夢中になって・・・。
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