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どうにも止まらない④
息がかかるほどの距離で向かい合うふたり。
荒い呼吸が収まらない星斗の息が眞門の顔に何度もかかる。
しかし、眞門は高圧的な顔をまだ崩さない。
「そうじゃないだろう」
「えっ・・・?」
その瞬間、眞門の右手が星斗の首をいきなり掴むと、首筋に爪を立てた。
「!」
「俺をご主人様に選んだのは星斗だぞ。
なのに、俺以外のDomの言う事を聞くなんてどういうつもりだ!」
星斗は殺される!!
そんな恐怖を感じた。
「たとえ、相手が俺の父親であっても"マスター"であっても、俺以外のDomの言うことを聞くなんてどういうつもりでいるんだ?」
「・・・・・」
「下品なSubを演じたのは、俺の父親に命令されたからだろう?」
「・・・・・」
「今度、俺以外のDomの命令を聞いたら容赦なく殺す からな」
「・・・・・」
眞門は右手をゆっくりと離すと、星斗の首筋に痕を付けるために噛みついた
「!」
そして、口元がゆっくりと離れると、眞門は星斗を見つめた。
「星斗は俺のものだ。
だから、こんなに大切に扱っているんだろう。
なのに、今度、こんな真似したら、俺に抱かれている中で殺す からな。
俺は本気だ」
とても凶暴な顔つきで訴えてくる眞門の瞳が、星斗にはなぜかとても悲しく映った。
「違うっ、これは本当の俺じゃないっ」
瞳の奥から、もうひとりの眞門がそんなふうに訴えている。
星斗はそんな気がしてならなかった。
どうしたの、知未さん?
何にも心配いらないよ。
俺はどんなことされても、知未さんのことを恨んだりしない。
だから、知未さんの元に戻ったんだよ。
だから、安心して欲しい。
瞳の奥にいる、もうひとりの眞門に伝わるように、星斗は熱く見つめ返した。
殺される。
さっき、そんな恐怖を感じたはずなのに。
今度は違う恐怖が襲ってくる。
眞門の悲しい瞳を見つめていると、眞門がまた自分の目の前から去って行くのではないか?
そんなイヤな予感がしてたまらない。
星斗はどこへも行かせないとばかりに、眞門に抱き着いた。
「どうぞ、あなたの好きにしてください。
俺を好きなだけ殺し てくださいっ。
あなたを失うぐらいなら、俺はあなたを思う中であなたに殺されたいっ」
そう願うと、星斗は眞門をまた見つめた。
「俺のご主人様は知未さんだけです。
だから、俺を信じて」
星斗がそう伝えると、眞門の怒りが急に収まったのか、息も出来ないような激しい口づけを星斗に狂ったように始めた。
その傍ら、眞門はスマホを手に取ると、何やら操作する。
星斗のペニスに装着されたリング が外れて、ベッドの上へと落ちた。
眞門は星斗を押し倒すと、そのまま星斗を激しく求めた。
星斗は臆することなく眞門に体を全て預け、されるがままの中で快楽に浸った。
・・・知未さん、大丈夫だよ。
あなたに何をされても、俺はあなたを選んだことを絶対に後悔はしません。
だから、安心して、殺してください。
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