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その先は・・・?②

同じ頃、Playを終えた星斗と眞門もまたアフターケアの時間を迎えようとしていた。 ふたりとも服を着直すと、眞門がいきなり星斗を後ろからギュッと抱きしめてきた。 「ハアー、ようやく手に入れた」 嬉しさをかみしめるように更に強く星斗を抱きしめる。 「ようやくここまできたね。俺たち、ついに結婚するよ」 眞門はとても幸せそうだ 「はい・・・」 しかし、星斗は浮かない顔を見せる。 「なに? 嬉しくないの?」 眞門はすぐに不機嫌な顔つきを見せる。 「いえ、結婚が決まったのはすごく嬉しいです。けど、お父様のところで働くことになったのが少し憂鬱で・・・」 「ああ、それなら、俺が後で交渉して取り消しにするよ」 「本当ですか!?」 「前から言ってるだろう。俺は星斗のことを監禁したいって」 「・・・えっ、あれ、本音だったんですか!?」 「ああ」 眞門は真顔で答えた。 その表情を見て、眞門のいつもの質の悪い冗談じゃないのだと気づく。 それはそれで喜んでいいんだろうか・・・? 星斗はなぜか複雑な気持ちになった。 「でも、お父様のところで働かなくて良いとなったとしても、俺の就職が結婚の条件に加わりましたよ」 「そんなの、奥の手を使えば良いじゃん」 「奥の手?」 「俺が子会社を作るから、そこの社長になるの」 「俺がいきなり社長になるんですか!?」 「うん」 「いや、母ちゃんにそんなの偽りの就職だってすぐにバレますよ・・・いきなり肩書が社長だなんて・・・」 そこまで言うと、星斗が申し訳なさそうな顔をした。 加奈子の言い分がなんとなく理解出来るからだ。 「あの、母ちゃんじゃないですけど、本当に俺で良いんですか?」 「はあ?」 「いや、俺はパートナーのままで充分ですよ。結婚ってなると俺を色んな人に紹介することになるじゃないですか・・・」 「ここで、また、そんなこと言いだすの? もう、俺の今のこの嬉しさがどんなものかホント見せてあげたいっ」 眞門が痛いくらいに星斗を強く抱きしめた。 「欲しいってずっと願ったものを永遠に手に入れることが出来たんだよ。このDomの喜びがどれだけのものか分かる? Domにとって、なによりの幸せを俺は手に入れたんだよ」 「でも、俺は・・・」 「俺は星斗のことをみんなに早く紹介して自慢したいの。俺の人生のパートナーです。俺の自慢の夫ですって。星斗には充分、その価値があるの。だから、またそんなこと言ったら、今度はクソデかいディルドを罰として入れるからね」 「いや、それだけは・・・ホント、ごめんなさい」 絶対にそれだけは阻止したい星斗は素直に謝った。 「それよりさ、新婚旅行はどこに行く? 俺は星斗とヨーロッパにずっと行きたいって思ってんだ~。DomSubしか宿泊できない、すっごいエッチなホテルとかあるんだよ~」 「知未さん、長期にまた休みって取れるんですか?」 「あっ・・・」 「あれだけ休んでたのに、まだ取れるんですか?」 「・・・ダメなら、社長の権力使うまでだよっ」 「ダメですよ、今、パワハラ、モラハラがうるさい世の中で・・・」 「なんで、働いてない星斗に注意受けんのよっ! 俺より星斗の方が本当に社長に向いているんじゃないっ」 そう言って眞門は星斗の体を思いっきりくすぐった。 「あははははっー」と、ベッドに笑い転げてしまう星斗。 すぐに覆いかぶさった眞門が星斗を見つめた。 「必ず幸せにするから。安心して、ずっと側に居てね」 眞門はとても優しい表情で星斗を見つめた。 星斗はその表情を見つめながら思った。 さっきのPlayの時の顔とはもう別人の顔をしている。 本当に知未さんって不条理の塊で出来上がっている人なんだな。 星斗は手を伸ばすと、眞門の顔を優しく撫でた。 この人が与えてくれる色んな物が俺のMっ気の性には堪らない。 星斗は眞門を愛している理由が再確認出来た。 「もう充分幸せですよ」 ふたりは愛を確かめ合うように、何度か軽い口づけをした。 「じゃあ、そろそろ戻ろうか?」 眞門が星斗の手を引っ張って、ベッドから起こしてやる。 「親同士でうまく親睦を深めてくれてたら嬉しいんだけどなー」 「そう言えば、父ちゃん、今日はやけに静かだったな・・・」 「ねえ、結婚式どうする?」 「え、結婚式するんですか!?」 「しないの?」 「いやー、全然そんなこと考えてなかった・・・てか、俺の未来に結婚式を挙げるなんてことはないと思ってましたから・・・しかも男の人となんて・・・。友達呼ぶのどうしよう・・・驚くよな・・・? てか、人生ってどうなるか分からないもんですね・・・」 「ホントにね。だから、希望を捨てずに前に進まなきゃね」 手を取り合うと、ふたりは部屋を出て行った。 様々なトラブルを乗り越えて、将来を約束できるところまでやってきたふたり。 しかし、二人の知らないところで、また新たなトラブルが発生していることをこの時は知る由もなかった。 そのトラブルのせいで、結婚がまた遠いものへとなってしまうが、力を合わせてそれをまた乗り越えていくふたりだった―。 【※『目が覚めたら、首輪がついてあった件について』はこれにて完結です。長い間、ありがとうごいました!!】

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