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第1話
死のうとすれば君が笑った。生きようとしたら君が消えた。元気になったらそちらに行くよ。
アルコールとタバコと自身でも気づくほどの体臭。また死ねなかった。埃だらけのカーペットから起き上がろうにも起き上がれない。しばらくこうしていようと瞼を閉じる。
また目覚めた。今度は辺り一面白色、鼻につく薬品の匂いと自身の体臭が入り交じり吐き気がした。視線を横にずらすとそこには看護師とそいつがいた。看護師は起きた俺に気づくとそそくさとカーテンの裏に消え、医者を呼んでいる。
そいつは怒っているのか泣いているのかはたまた無感情とも読み取れるよく分からない顔をしてこちらに一言「よく眠れた?」眠っていたのは事実だが起きた時の不快感のせいで快適な睡眠ではない。なんと答えたらよいのかと答えあぐねていると看護師が医者を連れて戻ってきた。医者は淡々かつ簡単に説明した。
私はそいつに連れられて運ばれてきたこと、睡眠薬の過剰摂取によってこんな事になってしまったこと、もう何錠か多く服用していれば長期入院が必要だったこと。こういう時は頭を下げて礼を言うべきだと思い、心にもない礼を言い、然るべき態度でその場を凌いだ。
2,3日は入院が必要との事だった。そいつはいつの間にか私の下着やら財布やら身の回りの物をベッドの隣のロッカーに入れていた。厳重注意を医者と看護師から受けるとまたそいつと2人きりになった。
そいつは何を言うでもなくただパイプ椅子に腰をかけている。そいつとは大学のミステリー同好会で知り合った。入会したての頃以前の私は友人と呼べる関係性を築いてこず、いつも教室で本を読んでいた。そのせいか大学に入学していざ友人を作ろうと意気込んでみても肝心の作り方が分からなかった。私は友人を作るにはまず作れるほどの社交性を身につけていなければならなかったのだとその時気がついた。それでも私は挫けず大学といえばサークルだろうという安易な考えを持ち、片っ端から勧誘のチラシを肩が外れる程受け取った。どのチラシも手が込んでいてキラキラしていた。その中に1枚だけボールペンで殴り書きとも言える字でこう書かれていた。「ミステリー同好会はミステリー好きのみを求めます。華やかなキャンパスライフを目論んでいる者は速やかにこのチラシを破り捨てるか燃やしてください。そして興味がある者は3年山本弘まで」山本弘とは一体誰なんだよとイライラしたが社交性皆無の私なりに何回も吃りつつ上級生らしい人を見つけては山本弘なる人物を探し続けた。だがその山本弘はいつになっても見つからない。どうやら知ってはいるがいつもどこかにすぐ行ってしまうらしい。疲れ果て自販機の缶コーヒーを飲んでいるとそこにある男がこちらを睨んでいるのを見つけた。体を小さくして怯えているとズカズカとこちらに歩み寄り「君が入会希望者の成宮ナントカ君だね!いやぁまさかあのチラシで来るとは思わなかったからろくに勧誘もしてなかったんだよ!さぁ!行こうじゃないか!」と御手洗潔の劣化版みたいな口調と風貌の山本会長は私の手を引き同好会の活動場所である棟の暗い隅っこにある部屋に連れていった。
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