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第1話

きっかけなんて些細なことだった。 たまたま結木隆也が先輩の金本にちょっかいをかけられているところに出くわしただけ。 ただそれだけ… の、はずだったのに… 「ほらっ、ちゃんとお願いしなくちゃダメだろ?」 「もう…焦らさない下さい…」 「じゃあ、このままお預けでもいいってわけだ…」 「意地悪…」 「だったら…わかるよね?」 散々その気にさせて、肝心なところで寸止め。 欲望を吐き出すには、部長である本木晃成の言うことは絶対だ。 「部長…僕をイカせて下さい…」 欲しい… 隆也は自分の中を晃成でいっぱいにして欲しいと切に願う。 僕で感じて欲しい… 僕だけを見て欲しい… 今だけでいいから…この時間だけでいいから… 全てを忘れて僕だけに夢中になって欲しい… 「よく出来ました。いい子だ…」 優しくて大きな手が隆也の髪を撫でると、一気に隆也の中に大きくなった晃成の欲望が入り込んでいく。 「うあぁぁぁっ…おっきい…」 「お前が可愛いのが悪い」 「そんなっ…僕は何も…」 「もうこんなになってるし」 「ひぁっ…ダメ…触ったらでちゃう…」 「まだだ…もっと、俺を感じろ…」 すでに起ち上がっている隆也の中心を擦りながら、晃成は後ろから激しく突き上げる。 「あぁっ、あっ、はぅっ…んぁっ…」 イきそうでイケない。 こんなに全身が震えているのに、まだ足りない。 もっと晃成を感じていたい。 自分の中で晃成の存在を感じていたい。 必死で吐き出しそうになるのを耐える。 だけど、そんなの長くは続かない… 「はぁんっ…んぁっ…ダメッ、もう…イクッ」 「くっ…」 「あっ…ダメッ…もう…イッちゃう…あっ、あぁぁぁっ…」 勢いよく先端から白い液が飛び散った。 それなのに… 「うそっ…あんっ、ふぁっ…」 晃成の動きは止まってはくれない。 激しく突き上げられて、イッたばかりのそこは、またすぐに力を持つ。 「まだだって言ったのに…悪い子だ」 「だって…僕…」 「次は我慢すること。いい?」 「はっ、はい…」 グッと身体を自分の方へと引き寄せて耳朶に唇をくっつけると、晃成が言った。 隆也にNOの選択肢なんてない。 晃成は、それをわかっている。 「んちゅっ、はぁ…んぁっ…」 そのまま唇が触れて、どんどん深くなっていく。 絡まる舌が離れていかないように追いかける。 その間にも、隆也の中には晃成がいて、ゆっくりと確実に感じる場所へとあててくる。 「いくよ…」 「はい…」 「もっと、もっと俺を感じろ」 一気に動きが加速していく… 晃成の息遣いが荒くなっているのは、感じてくれてるからだろう。 最奥で動く晃成の欲望に、イッたはずの身体は反応していて、気づけばまた自分でも腰を動かしていた。 「あっ、はっ、あんっ…いい…気持ちいい…」 「くっ…俺もっ」 「もっと、もっと…部長が欲しい…」 「うっ、たっまんねぇ…」 更に奥まで入り込んでくると、そのままグングンと激しい動きが続く。 あたっている… 隆也の一番感じる場所… 「はあんっ、部長…部長…激しっ…あっ、あんっ…」 「まだイクなよ…」 「はい…」 晃成に感じる場所を何度も突かれて、隆也の身体がブルブルと震え出す。 「お願い…もうきて…僕の中に…吐き出してっ」 「くっ、ふんっ、んっ…」 「あんっ…あぁぁぁっ、はぁっ…イキそう…部長…イキたいっ」 「はぁっ…きっつぅ…」 「あんっ…あぁぁぁっ、あっ…僕っ、イッちゃう…あっ、ああっ…イクッ」 「俺も…イクッ…はぁっ…」 ドクドクと中に温かい感覚が広がっていく… 机にうつ伏せになっている隆也の髪に、晃成の唇がそっと触れる。 「やっぱ、お前可愛すぎっ」 「からかわないで下さい」 「このまま連れて帰りたいくらいだ…」 「バカ…無理なくせに…」 可愛いという言葉が、晃成の「好き」。 ただ、お互いにその二文字は口にしない。 それはきっとその言葉を言ってしまったら、気持ちにセーブがきかなくなってしまうからだ。 本気になっちゃいけない。 二人は男同士で、上司と部下。 そして、晃成には壊すことの出来ない家庭がある。 このままでいい… 隆也は自分を求めてくれるなら、それに精一杯答えたいという思いで晃成との時間を過ごしていた。

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