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第110話

少しぬるめのお風呂は、身も心も満たされた身体にはとても心地よくて油断をすると眠ってしまいそうだ。 僕の中で創士さんが2度達した。 1度目の時、余韻に浸りながら無意識に創士さんの胸の傷に吸い付いてしまった。 直後、僕の中で元気を取り戻した創士さんに再び激しく突かれた。 その後、創士さんはグッタリした僕を子供のように抱えてバスルームに行き全身を綺麗にした。 掻き出す指は僕を誘うように厭らしくて、ついまた挿れて欲しくなったけど、明日は大学とバイトがあるから必死に我慢した。 僕を抱えて何も喋らない創士さんが気になって振り返ると難しい顔で何かを考えていた。 「難しい顔をして、どうかしたんですか?」 「あーいや、大したことじゃないんだが……」 「僕にも関係のあることですか?」 「あるといえばある……うーん」 激しい情事の後で僕は少し不安になった。 「さっきの告白はなしにして」とか言われたら……。 が、次の瞬間にはその不安は無用だった。 「やはり、2階にもバスルームを増築するか」 「……はい?」 「こういう時、やっぱり近くにあった方がいいだろう?すぐ綺麗にできるし、その分柊の負担は少ないかなって」 「創士、そんなことを考えていたんですか?」 「ああ……えっ、柊?」 僕は目を細めて創士を見る。 空気が冷えたことに気づいたのか創士さんは焦った。 僕が幸せにまどろんでいた時、創士さんはそんなこと考えていたんだ。 だから、ついトゲのある言い方になってしまった。 「僕の身体を気遣うなら、創士が加減してくれたらいいだけじゃないですか」 「あ、あの……柊さん?」 「僕は……この幸せなひと時をあなたと共有できていると思っていたのに……」 トゲなんてすぐに取れてしまった。 声はどんどん小さくなって、前を向いていた顔は下を向いた。 バスルームに負けた……。 そんな僕を創士さんは後ろからギュッと抱きしめてくれた。 「ごめん。そんなつもりじゃなかった。……でも、2階にもバスルームがあったらもっと触れ合う時間が増えると思ったんだ」 「エッチなことをする時間ですか?」 「そ、それも……でも、抱き潰した柊を抱えてここまで来るのもそんなに悪いもんじゃないから迷ってる」 「っ!」 そう言って弱い耳にキスをするから、僕の中心はまたゆるゆると勃ち上がってしまった。 「ん、柊どうした?」 「創士さん……ワザとですね」 振り返って涙目で睨むと創士さんは「バレたか」と笑って僕の唇にキスを落とした。

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