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第117話(最終話)
今年のクリスマスの料理は創士さんと作った。
もちろん、家政婦さんに手伝ってもらいながら、だけど。
飾りつけたケーキのクリームは歪だったけど、味はケーキ屋さんにも負けないほどだと思う。
この日は家政婦さんと家政婦さんの旦那さんを招待した。
田村も誘ったのだが、クリスマスは稼ぎどきだからと断られてしまった。
洋食屋以外にも単発でクリスマスケーキ販売のバイトを入れていて本当に忙しそうに走り回っていたので、気を遣われた訳でないようだ。
いつもより賑やかなクリスマスパーティーは夕方には終わり、今はリビングルームで創士さんと2人のんびりしている。
ローテーブルには飾りつけで残ったフルーツとシャンパンがあり、僕は既にほろ酔いだ。
「ねぇ、創士さん」
「ん?」
繋ぐ手を撫でながら、点けていないテレビに映る創士さんを見つめる。
「僕、この家で猫を飼いたいです。あと犬も」
「急にどうした?」
「1人でお留守番は寂しいけど、2人なら寂しくないでしょ」
「ん、そうだな。車で少し行ったところに保護施設があるから今度見に行くか?」
「はい!……あとーー」
お酒の勢いでなら言えそうだと思っていたけど、いざその時になると緊張で酔いなんて吹っ飛んでしまった。
俯き口籠る僕を創士さんが覗き込む。
「ちゃんと聞くから話して」
僕の目を見て優しく言ってくれる姿にゆっくり瞬きをして深呼吸をした。
創士さんと向かい合うようにソファーに座り直し、背筋をピンと伸ばすと口を開いた。
「僕が社会人になって、……あなたの隣で並んで歩いていけるようになったらーー」
「うん」
もう一度深呼吸をする。
「子どもが欲しいです」
「……え?」
「ぶ、物理的には子どもは成せませんから引き取って。……創士さんが僕を引き取って育ててくれたように、僕も僕のような子どもを創士さんと育てたいです」
「柊」
「そして、あなたが僕を愛して幸せにしてくれたように、僕も愛を注いで幸せにしたいです。……あなたと一緒に」
真剣な目で真っ直ぐ見つめると、目を細めてふっと微笑んだ。
「ああ、俺と柊と子どもとみんなで幸せになろう」
「犬と猫もです」
「ははっ、そうだな」
声を上げて笑う創士さんに抱きつくとすぐ抱き返してくれた。
「だが今は、俺たちが幸せになろう」
合わせた唇は甘く深く混じり合い、お互いの熱でその境目がわからなくなるくらい蕩ける。
僕の人生は、これからも山あり谷ありで何度も立ち止まってしまうだろう。
でも、創士さんと一緒なら大丈夫だ。
それが僕が見つけた幸せだからーー
end
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