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第10話 ファイヤウォール

 なぜ、会ってしまったのだろう。  全てはある、か弱いおとこのささいな間違いが引き起こした物語である。 「アプセトネデブ」  すると、一人の会社員が奥の方からジリジリやって来る。白昼堂々と。  美術館で作品を(ナガ)めていた際に、ボクは素晴らしさのあまり(ツブヤ)いただけなのに。  それからというもの、親切にIT関連のニュースやアルゴリズムの構造、極めつけはネットワークの知識まで植え付けられた。  ボクはそこから人生が一変する。かつて清掃員を三年(ツイ)やしてきたことも今となってはいい思い出である。  「すまん、このファイアウォール見直してくれへん」  意味のわからなかったネットワークの知識も対応できるようになってきた。まさかボクがシステムエンジニアに()くとは、あの方のおかげで今こうして渡り歩んできた。 「承知しました。」

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