4 / 4

第4話

 その後の誠視点。  目を覚ました誠は、鳴る前にアラームを解除する。毎日アラームはセットしているが、それが鳴る前に目を覚ますことが多かった。  まだ充分時間に余裕がある。  誠は隣で眠る直人の寝顔を見て、うっとりと微笑んだ。  彼と同じベッドで朝を迎えるのは何度目だろうか。こうして目を覚まして一番に直人の寝顔を目にし、眺めるのが既に恒例となっていた。飽きることなく舐めるように見つめ続ける。この時間のために早く目を覚ましていると言っても過言ではない。  今日も直人は可愛い。悪戯したくて堪らない。我慢せずに手を出すこともあるが、今日は我慢して見るだけにする。  直人と同棲をはじめて一月以上が過ぎた。  知り合いの経営しているマンションだから安く借りられると嘘をついて、直人の予算を遥かに上回る家賃のマンションの一室に、二人で暮らしている。セキュリティと防音のしっかりとした、高級ホテルのように綺麗な部屋。直人と暮らすのだから、妥協はできない。  直人は本当にこんな広くて高そうな部屋に安い家賃で住んでいいのかと恐縮し、かなり躊躇っていたが、うまく丸め込んでこうして同棲まで漕ぎ着けた。  それから、毎朝毎晩一緒に食事をして、同じベッドで眠る日々を過ごしている。  直人と付き合う前は、心の声だけが聞こえていて、触れたくても触れられない、忍耐の毎日だった。だが今は、すぐに触れられる距離に直人がいる。そして触れることが許される関係なのだ。  幸せを噛み締めていると、やがて、直人の瞼が震えた。ゆっくりと開いていく。  ぼんやりと宙を見据える直人の瞳が、傍らの誠に向けられた。  誠はにっこりと微笑む。 「おはよう、直人」  途端に、直人は顔を真っ赤に染める。 「お、おは、おはよう、ま、誠……っ」  つっかえながら、挨拶を返す。  彼の初々しい反応は何度見ても興奮する。 (うぅっ……またどもった……! でも、目が覚めて一番に誠の顔があるの、まだ慣れない……色気がすごい……カッコよすぎて心臓痛い……)  直人の心の声は、今も変わらず誠の耳にしっかりと届いていた。  直人はそれを知らない。知れば羞恥に悶えることになるだろう。それだけでは済まず、もう誠と顔を合わせられなくなるのではないか。  可愛いことを考える直人に、誠の笑みは深くなる。  ベッドに押さえつけて酸欠になるまでキスして全身撫で回して思う様可愛がりたい。  その衝動を抑えて、優しく頬を撫でるにとどめる。  直人はますます頬を赤くして、表情でも、心の中でも、誠に好きだと伝えてくる。照れ屋な直人は、エッチのとき以外はなかなか言葉では伝えてくれない。だが、声に出さなくても誠はそれを聞くことができるし、表情だけでも充分に読み取れた。  軽く口づけてから、ベッドを下りる。身支度を整え、二人で朝食を作った。  直人は料理が苦手だが、誠の手伝いをしながら徐々にできることを増やしていっている。  危なっかしい手付きで、一生懸命料理を作る直人は可愛い。  苦手な料理をこうして頑張っているのは、誠のためだった。  誠の手料理を食べれて、直人はとても嬉しかった。だから直人も、誠に手料理を振る舞いたい。  そう考え、直人は料理ができるようになろうと必死なのだ。  直人はそれを誠には伝えていない。  だが彼の心の内は誠には全て筒抜けだ。  直人が自分のために頑張ってくれているのだ。そう思うと、料理中の彼を見る度に押し倒して裸に剥いてとろとろに甘やかして滅茶苦茶に感じさせてやりたい気持ちになる。  もちろん懸命に頑張っている直人の邪魔はできないので我慢するが。  誠の心の内など知らず、直人は真剣な表情で味噌汁の味見をしていた。  満足する味だったのか、直人の表情がパッと輝く。  その様子が可愛くて、後ろから襲いかかってしまいたくなるが、ぐっとこらえた。  朝食を済ませたあと、二人で大学へ向かう。  混雑する時間なので、直人を壁際へ追いやり、誠は彼の正面にぴったりと張り付く。向かい合う形で電車に揺られていた。  直人の顔は赤い。顔だけでなく、首まで赤くなっている。体はガチガチに強張っていて、視線はうろうろと忙しなく動いていた。 「大丈夫? 体、苦しくない?」  直人の耳元で囁けば、大袈裟に肩が跳ねた。 「ぁんっ……うんっ、大丈夫……っ」  直人の顔は更に紅潮する。  そんな可愛い反応を見せるから、悪戯したくなるのだ。 (うわっ、ちょっと変な声出ちゃった……恥ずかしい……誠に聞かれなかったかな……!?)  もちろんばっちり聞こえていた。  真っ赤になって俯く直人を見下ろし、誠はうっそりと微笑む。 (うう、心臓の音も凄いし……顔も絶対赤くなってる……っ)  既に何度も体を重ねているのに、こんなことで狼狽える直人が可愛くて可愛くて堪らない。いじめて泣かせて縋りつかせて可愛がって甘やかしたい。  歪んではいても、直人に対する愛は本物である。  電車が揺れ、誠の体が傾いて二人の距離が更に近づいた。 (あ、誠の、匂い……)  直人は瞳をとろんとさせ、恐らく無意識に、誠に顔を寄せる。 (俺の好きな、誠のいい匂い……誠は香水とかつけてないし……シャンプーか柔軟剤の匂い? なら、俺も同じの使ってるから、同じ匂いするのかな……?)  頬を紅潮させて、すんすんと匂いを嗅いでくる直人を間近で見下ろし、堪らなくムラムラした。 (誠と、一緒の匂いするの、嬉しい……でも、自分で自分の匂いってわかんないよな……俺からこんないい匂いするなんて思えない……きっと誠だから、すごくいい匂いに感じるんだ……好き……誠の匂い嗅いでると、ドキドキして、体、熱くなる……)  たまに思うのだ。  実は直人は自分の心を読まれていることに気づいていて、わざと誠を煽るようなことを考えているのではないかと。  もちろんそんなことはなくて、それは誠の思い過ごしに過ぎないのだけれど。  本当にたまに思うのだ。彼は誠の理性を試しているのではないかと。  これ以上嗅いでたら変な気分になっちゃう……と必死に息を止める可愛い直人を見つめ、脳内で彼を裸にひん剥いていきり立つ男根をアナルに捩じ込みぐっちょぐちょに犯した。  こんな公共の場でそんなことはできないので妄想にとどめておく。  そうこうしている間に降りる駅に着いた。とても人には言えないようないかがわしい妄想で頭の中をいっぱいにしながらも表向きは爽やかなオーラを纏い、直人と並んで大学へ向かう。  付き合いだしてからは、大学内でもできる限り直人と一緒に過ごしていた。  直人は誠のお気に入りなのだと認識され、それはすぐに周囲に広まった。  そうすると、今まで直人に見向きもしていなかった輩が、彼に近づくようになった。  誠はこれまで、合コンの類いは誘われても全て断ってきた。色んな理由をつけてどんなに必死に頼み込まれようとも誘いを受けることはなかった。  しかし何度断っても諦めようとしない。  そして周りは直人に目をつけた。お気に入りの直人が頼めば誠は断らないのではないかと考え、直人を介して誠を合コンに誘おうとする。  離れた場所にいても、誠には直人の心の声が聞こえる。だから、誠を合コンに誘ってほしいと頼まれて困惑する直人の声が聞こえたら、誠はすぐに彼のもとへ駆けつけた。  誠のせいで直人は迷惑を被っているというのに、彼はうまくあしらえない自分の不甲斐なさを嘆いている。直人はなにも悪くないというのに、そんないじらしい彼が愛おしくて、これ以上彼に被害が及ぶことのないようにしなくてはならないと強く思った。  それから誠は、恋人がいると明言し、それを理由に誘いを断るようになった。相手が誰かは言わないが、誘いを断るための嘘だと思われない程度に具体的に恋人について隠さず話した。  そうすることで、その手の誘いは随分減った。  減りはしたが、煩わしいことに完全にはなくならなかった。 「ねぇねぇ、佐々木くん、今度飲み会あるんだけどー、佐々木くんも来ない?」  大学内の学食で直人と一緒に食事をしていると、許可もなく正面の席に座った名前も知らない女子が声をかけてきた。  誠は穏やかに微笑み、きっぱりと断る。 「ごめんね、恋人がいるから、そういうのは全部断ってるんだ」 「えー、合コンじゃないよ、飲み会だよ? 皆でわいわいするだけだし、別によくない? 佐々木くんのカノジョって、嫉妬深いタイプ? 友達との飲み会も許さないって、心狭くない? めっちゃ束縛してきそう」  勝手なことをペラペラと喋る彼女に、誠は笑みを浮かべたまま言った。 「違うよ。僕が嫌なんだ。恋人を不安にさせるようなことはしたくない。不安にさせて、嫌われたくないからね」 「ええー、佐々木くんのカノジョ、めっちゃ愛されてるじゃん!」 「うん、もう可愛くて可愛くて仕方ないんだよね」 「ぶほっ……」  隣で直人がご飯を噴き出す。  顔を赤くして水を飲む直人の背中を摩りながら、誠はつづけた。 「やることなすこと全部可愛くて」 (か、可愛いって……。いや、違う、これは俺のことじゃない! 誠の恋人は俺だけど、これは誘いを断るために大袈裟に言ってるだけで、本心じゃない! だから動揺するな!) 「僕の言葉に分かりやすく反応するとことか、すぐに照れて真っ赤になっちゃうとことか、僕に食べさせるために一生懸命料理覚えようとしてくれてるとことか、もう本当に可愛いんだよね」 (なっ、バレてる……!? 俺が誠に手作り料理食べてもらいたいって思ってるの、なんで知ってるの!? 俺ってそんな分かりやすい!?) 「ちょっとしたことですぐ嬉しそうな顔するし、僕の作ったご飯、毎回美味しそうに食べてくれるし、僕のこと大好きなのすごく伝わってきて、一緒にいると幸せな気持ちになれるんだ」 「うわー、もうラブラブじゃん」 「うん」  若干引き気味の女子に、恥ずかしげもなく頷いてみせる。  直人は顔だけでなく耳や首まで赤くして、ぷるぷると震えていた。俯いていて表情は見えないが、かなり恥ずかしがっているのはわかる。  そんな直人を視界に映しうっすらと微笑んでいると、彼の心の声が聞こえてきた。 (そ、そんなの、俺だって、言いたいっ……。誠は、自慢の恋人だって……優しくて、カッコよくて……俺が困ってたらすぐに気づいて助けにきてくれて、頼りになって、料理もうまくて、いつも俺のこと気遣ってくれて、俺は恥ずかしがってばっかであんまり好きとか言えないのに、誠はたくさん言ってくれて、頭とか顔とか撫でてくれて、そういうのすっごく嬉しくて、俺の方がずっとずっと幸せな気持ちにしてもらってるのに……っ)  言いたいのに、言えない。そのもどかしさに直人は悔しがっている。  あまりの可愛さに危うくこの場で彼を押し倒しそうになった。どろっどろに溢れるくらい精液注ぎ込んで全身精液まみれにしてもう誠のちんぽなしでは生きられなくなるまで犯し尽くしてやりたくなったがこらえた。ここは人目がありすぎる。直人の痴態は誰にも見せたくないし、彼の可愛い喘ぎ声も誠だけのものだ。  もう頭の中では直人を犯すことしか考えていなかったが、それをおくびにも出さず午後の講義を受けた。  全ての講義を終え、直人と一緒にマンションに帰る。  玄関に入り、ドアを閉めた瞬間、誠は直人の唇を塞いだ。 「んんっ……!?」  いきなり激しく唇を貪られ、直人は驚いている。けれど一切抵抗はせず、無防備に口を開いてされるがままに受け入れていた。  しがみついてくる直人が可愛くて、彼の舌を音を立てて吸い上げる。吸って、ねぶって、甘噛みし、それから彼の口内に舌を挿入して隅々まで舐め回した。 「んぅっ、はっ、ふぅっんんっ」  苦しそうに息を漏らしながらも、直人は決して嫌がらない。だらだらと唾液を零し、キスに応えようと懸命に舌を動かしている。  必死な様子が可愛くて、一層愛しさが増した。 (気持ちいい……誠のキス、好き……口の中、誠にぐちゃぐちゃにされるの、気持ちよくて、キスだけでいっちゃいそうになる……もっとしたいのに、足が、震えて……立ってられなくなる……っ)  ガクッと直人の膝が折れ、すかさず誠は彼の体を支える。  唇が離れ、こちらを見上げる直人の顔はすっかり蕩けていた。 「ぁっ……ごめ……俺、立てなくなっ……」  瞳を潤ませ、はあっはあっと息を荒げ、直人は誠に縋りついてくる。  唾液にまみれた彼の唇に、ねっとりと舌を這わせた。 「んっ……はあっ……」 「僕の方こそ、いきなりごめんね。大丈夫?」 「ん、うんっ……」 (謝らないで……誠にキスされるの好き、どこでだって、されたら嬉しい……でも、キスだけでこんなに気持ちよくなって、恥ずかしい……どんどん、気持ちいいことに弱くなって、誠に呆れられないかな……)  誠に淫乱だって思われて軽蔑されたらどうしよう、なんて可愛いことを考える直人に情欲を煽られる。  呆れるわけがない。軽蔑なんてするはずがないのに。直人が淫乱になったのだとしたら、それは間違いなく誠がそう仕込んだからだ。  感じやすい直人の体に快楽を与え、体がそれを貪欲に求めるように、とろとろに溶かして、繰り返し快感を教え込んでいった。  すっかり与えられる快楽を覚えた体は、ほんの少しの刺激にも反応し、誠を求めるようになった。  それを喜びこそすれ、軽蔑するなどあり得ないのに。  毎日のように溢れるほど愛を注いでいるというのに、直人はまだわからないようだ。  自分がどれだけ愛されているのか、じっくり時間をかけて教えなければならない。  直人がもういいと泣いて縋っても離しはしない。  もう離れられないのだと、心にも体にもしっかりとわからせなくては。  今すぐにでも襲いかかりそうになるのを我慢して、寝室に移動した。  互いに全裸になり、ベッドに座って再びキスを交わす。舌を絡ませ、混ざり合う唾液を啜る。  ちゅうちゅうと拙い技巧で誠の舌に一生懸命吸い付く直人の可愛さに体は昂っていく。  キスをしながら彼の首や腰を撫でれば、体がぴくぴくと震えた。 「んぁっ……」  つう……っと糸を引いて唇を離す。 「あっ、あんっ」  直人の耳をぬるぬると舐め回した。  背中を反らせて快感に喘ぐ直人の胸を、やんわりと揉んだ。 (あっ、気持ちいい、耳、舐められるとぞくぞくして、びくびくってなるっ……胸も、あっ、指でかりかりされるの、気持ちいいっ)  心の中で素直に気持ちを吐き出す直人の反応を確認しながら愛撫する。 (あ! また、誠にしてもらって、俺ばっかり気持ちよくなってる! 今日こそ、言わなきゃ……今日は、俺も誠を気持ちよくするんだ……っ)  そんな決意の言葉が聞こえてきた。  直人がなにをしようとしているのかは、誠は既に知っている。 (こういうときは、相手に任せっきりはよくないって聞いたし! なのに俺はいっつもされるだけで、わけわかんなくなるくらい気持ちよくなっちゃって……これじゃ、すぐに誠に飽きられる! つまんないって思われる!)  飽きるなんてあり得ないし、つまらないなんて思うわけがない。毎日一日中だって抱いていたいくらいなのに。  そうは思ったが、直人が誠のために色々考えて色々しようとしてくれるのは嬉しいので止めはしなかった。  直人は最近ずっと自分から行動を起こそうとしていたが、しかし恥ずかしくてなにもできずに終わるのだ。  でも今日は、勇気を振り絞って口を開いた。 「んまっ、こと……!」 (うわぁっ、噛んだ、恥ずかしい!!)  羞恥に悶える直人に、誠は噛んだことは指摘せず愛撫の手を止めてにっこり微笑みかける。 「どうしたの?」 「あっ、あっ、あのっ……」 (うわっ、どうしよう、いざとなるとなんて言えばいいのかわからない! フェラチオさせてって言うのか!? え!? 恥ずかしくて言えない!!)  赤面する直人は口をぱくぱくして、あ……あ……しか言えなくなっている。  その可愛い口に肉棒を突っ込んでやりたい衝動に駆られるが、誠はそれを耐えて直人の頭を優しく撫でた。 「どうしたの、直人?」 「あのっ……」 (ちんちん舐めさせてって言えばいい!? いや、それこそそんな恥ずかしいこと言えないし! 俺にさせてって言おうか!? でもそれじゃ抽象的過ぎて伝わらなくないか!? なにをさせてほしいのか訊かれたらどうする!? 結局ちんちん舐めさせてって言うのか!?)  最早直人はパニック寸前だ。  ぐるぐると頭を悩ませる直人が可愛くて堪らない。  誠から口淫を頼んでもいいのだが、混乱する直人を見ていたくて黙って見守っていた。  でもそろそろ助け船を出そうか……誠がそう考えたとき、直人に押し倒された。  誠は僅かに目を見開く。 「直人……?」 (うああぁ!! 思わず押し倒しちゃった! でももう後には引けない!!) 「まままま誠は! 動かないで! じっとしてて!」  直人は真っ赤な顔で誠の下半身に手を伸ばし、しかしすぐにピタリと動きを止めた。 (勢いで押し通そうとしたけど、いきなりこんなことしたら引くかな……? ちゃんと許可を取ってからするべきかも……いやでも、フェラチオしてもいい? って恥ずかしくて訊けないし……)  どうするべきかうろうろと視線をさ迷わせたあと、直人は不安そうに誠に言った。 「あああの、嫌だったら、言って……すぐ、やめるから……」  嫌なわけがない。寧ろ無理やり口に男根を捩じ込んで直人が嫌だと泣いてもやめずに口の中を誠の精液でいっぱいにしてやりたい。  そんなことを考えているとはおくびにも出さず、誠は上半身を起こし直人を安心させるように穏やかに微笑んだ。 「直人がしてくれることなら、嫌なんて思わないよ。直人からなにかしてくれるなら嬉しいって思うから、怖がらないで、してごらん」 「うん……」  直人は嬉しそうに目を細めた。 (誠、優しい……好き、大好き……いっぱい誠に触りたい……)  こくりと喉を鳴らし、直人は誠の下肢に触れた。 (誠の……おちんちん……)  直人は蕩けた瞳で眼前の肉棒を見つめている。  男の性器を見て発情した表情を浮かべる直人に、誠は唇の端を吊り上げた。  すっかりコレが好きになってしまったようだ。誠が、そういう風に仕込んだのだ。そう考えると堪らなく興奮した。 「んっ……」  直人は舌を伸ばしてぺろりと陰茎を舐めた。  グロテスクな肉棒に、直人の小さな舌が這う光景に息が上がる。舌の動きは拙くて、ぺろぺろと舌を動かす様は子猫のようにあどけなく、酷く倒錯的な気分だった。  反応を示し、固く張り詰めていく男根に、直人は夢中になって舌を這わせる。ふうっふうっと息を荒げ、すりすりと頬擦りし、大きく口を開いて咥え込んだ。 「はむっ……んんっ……」  小さな口いっぱいに肉棒を頬張る直人を目に映し、誠の体温は上昇していく。  直腸とは違う、狭くて温かい粘膜の感触にぞくぞくした。 「はふっ、んっ、ぁんんっ……」  懸命に舌を動かし、ちゅぱちゅぱと陰茎に吸い付く直人の頭を撫でる。 「気持ちいいよ、直人……っ」  誠の言葉に喜び、直人の口淫は激しさを増した。 (嬉しい、もっと気持ちよくなってほしい……)  情欲に瞳を潤ませ、直人は手も使って誠の剛直を刺激する。 (誠のおちんちん、美味しい……きっと誠のだから、美味しいって感じるんだ……美味しくて、涎いっぱい出て、止まらない……)  直人は溢れる唾液を、鈴口から滲み出す先走りと共に啜り上げる。 「はあっ……可愛い、直人、なお、なお……っ」  美味しそうに自身の肉棒をしゃぶる直人に、愛しさが込み上げる。  興奮して、直人の頬を撫で回した。 (誠が、気持ちよくなってくれてるの、嬉しい……口の中、誠でいっぱいで、俺も気持ちいい……お尻にも、欲しい……いっぱい、奥まで埋めてほしい……でも、誠の精液飲みたい……口にもお尻にも欲しい……全部、誠でいっぱいにしてほしい……) 「っ直人……くっ」  喉奥まで突っ込んで、溺れるほど精液を注いでやりたくなるが、歯を食い縛って耐えた。  こちらの気も知らず、直人は誘うように蕩けた瞳で誠を見上げ、はしたなく口を開けていやらしい表情を晒し肉棒に耽溺している。 「はんっ、んっ、んんぅっ」  口を窄め、じゅるじゅると卑猥な音を立てて先走りを吸い上げる。  拙い技巧と、直人の表情と聞こえてくる熱に浮かされたような心の声に酷く興奮した。  絶えず先走りを漏らす鈴口をちろちろと舌で舐められ、射精感が込み上げる。 (美味しい……誠の……精液飲みたい……)  精飲を望む直人が可愛くて、誠はそんな可愛い恋人の願いを叶えてあげる。  欲望にまみれた笑みを浮かべ、直人の後頭部を押さえた。 「直人、口に出すよ? 直人のお口に僕の精液全部出すからね?」 「んんっ、ふぅっ、んっんっ」  誠の言葉に歓喜する直人の声が聞こえてきた。  射精を促すように手で幹を擦り、先端を強く吸い上げる。その直人の必死な様子に、ぞくりと背筋が震えた。  低く呻いて、誠は精を吐き出す。 「んぐっ……」  顔を歪めながらも、直人は決して男根から口を離さず、一滴も零さないよう懸命に精液を喉へ流し込む。 (口の中、誠の味でいっぱい……嬉しい……)  陶酔した表情で、本当に美味しそうに飲み干す直人に劣情を煽られ、精を吐き出したにも関わらず誠の体の熱は冷めることはなかった。 「んはぁっ、はっ……」  陰茎から唇を離し、直人は大きく息を吐く。  頭を優しく撫でながら、息が整うのを待った。 「大丈夫?」 「うん……。あの、気持ちよかった……?」  不安そうにこちらを窺う直人に、にっこりと微笑む。 「もちろん。すごく気持ちよかったよ。ありがとう、直人」  直人は嬉しそうに顔を綻ばせた。  誠は彼の腕を引き、仰向けになる自分の体の上に乗せる。  裸の体がぴったりと重なり、触れ合う肌の感触に直人は擽ったそうに身を捩らせた。そうすると乳首が誠の胸板に擦れ、「あんっ」と可愛らしく声を上げる。  直人の背中をなぞりながら、徐々に手を下半身へと滑らせていく。 「んああぁっ」 (あっ、背中、ぞわぞわ、する……っ)  直人は擽ったさと快感の狭間で、甘い喘ぎ声を漏らす。  ぶるぶると震える直人の背筋を辿り、腰を撫で、臀部を掌で揉み込んだ。 「ふぁっ……」  尻臀を揉みながらアナルに指で触れると、まるで刺激を催促するかのように直人の尻が持ち上がった。  その無意識の反応に、誠はクスリと笑みを零す。 「可愛いね、直人。お尻動いちゃうの? 早く中弄ってほしい?」  指摘されてはじめて、直人は腰を突き上げていることに気づく。 「あっ、ご、ごめ……っ」 (うわっ、恥ずかしい、俺、変なかっこして……っ)  真っ赤になって涙ぐむ直人の眦にちゅっと唇を落とす。 「どうして謝るの? 欲しがって我慢できなくなっちゃう直人は可愛いのに」 「うぅ……」 (可愛くない……はしたないのに……でも、誠は可愛いって言ってくれる……) 「可愛い直人をもっと見せて? 僕のこと欲しがって。いっぱいいやらしくなって。その方が僕は嬉しいから」 (嬉しい? 俺がいやらしいと、誠は嬉しいの……? はしたなくなっていいの……?)  直人の理性がぐずぐずになっていくのがわかった。  とろりとした表情で誠を見つめ、ゆっくりと口を開く。 「お尻……中、誠に弄ってほしい……」 「うん」 「いっぱい、ぐちゅぐちゅして、誠のおちんちん奥まで入れて、中、奥まで、全部、擦ってほしい」  興奮に掠れる声で欲望を口にする直人。  誠は獲物を前にした肉食獣のように舌舐めずりし、ローションを纏った指を後孔に突き入れた。 「ひあっ……」  漏れた悲鳴は愉悦が滲んでいた。  粘液を塗り付けるように、肉壁をぬちゅぬちゅと指で擦る。 「んあっ、あっあっあっあんっ」 「いっぱい、ぐちゅぐちゅ弄ってあげるね」 「あぁんっ、んっ、ぐちゅぐちゅ、されてるっ」 「うん。指増やすよ?」 「ひゃうっ、ぅんんっ、あっあぁっ」  二本の指を抜き差しし、蕩ける肉筒を刺激する。  きゅうきゅうと襞が指に絡み付き、物欲しげに蠢いていた。 「気持ちいい?」 「うんっ、指、気持ちいい、あっ、あっあっ」  指の動きに合わせ、直人の腰がかくかく揺れる。  ぽたぽたと蜜を漏らす直人の勃起したペニスが、誠の下腹に擦れた。膨らんだ乳首も誠の胸板に押し潰され、直人は後孔以外からも快感を得て身悶える。  後孔の刺激に身を捩れば他のところが擦れてまた刺激され、快楽に翻弄される直人を見て誠は笑みを漏らした。 「ふふ、気持ちよくなってる直人、可愛いね」 「ひんっ、気持ちいいっ、あっあっ、誠、好き、好きだから、あんっ、誠にされると、いっぱい気持ちいいっ、体、全部、んんっ、気持ちよくなるっ」  直人は快感に喘ぎながら、感じるまま素直に気持ちを口にする。 「ほんと可愛いなぁ。もうどうしてくれようか」 「あっ、んんぅっ」  唇を重ね、貪るように直人の口内を犯す。  奥まで舌を捩じ込みながら、指で後孔を掻き回した。 (気持ちいい、誠のキス、好き、誠の指でぐちゅぐちゅされるのも、好き、でも、もっと奥、おちんちんでも、ぐちゅぐちゅされたい……)  指を咥え込んだ腸壁が、物足りないと訴えるように蠢いている。  体も、心でも誠を欲しがっているのが如実に伝わってきて、彼を貪り尽くしたいという欲求に男根が痛いくらい張り詰めた。  誠は唇を離し、指を引き抜く。  物欲しげにこちらを見下ろす直人を見つめ、艶然と微笑んだ。 「直人、自分でちんぽ入れられる? 直人のおまんこの奥まで、僕のおちんぽでいっぱいにできる?」  誠の言葉に感じたように、直人はふるりと体を震わせた。 「うん、誠の、おちんぽ、入れる……っ」  直人は顔をとろんとさせ、上体を起こして誠に跨がった。  誠の陰茎を手で押さえ、腰を浮かせてアナルに宛がう。 「んあぁっ」  恍惚とした表情で自身の欲望を埋め込んでいく直人を、じっくりと視姦する。愉悦に顔を歪め甘い声を上げる直人にぞくぞくした。 「ひあっ、あっ、誠の、おちんちんで、いっぱいになってくの、気持ちいいっ」  言葉でも煽られ、我慢出来ずに腰を突き上げた。  ずぶんっと、剛直が一気に奥まで捩じ込まれる。 「あああぁっ」  悲鳴と共に、直人のペニスから精が噴き出した。  肉筒がぎゅうぅっと締まり、誠は陰茎を締め付けられる快感に息を乱す。  直人は目を見開き、唇の端から唾液を零してはーっはーっと荒い呼吸を繰り返していた。  その顔を眺めながら、下腹に飛び散った精液を指で掬った。そのまま口へ運んで、彼の体液を味わう。  正気のときにそんなことをすれば直人は羞恥に慌てふためき制止の声を上げるが、今は快楽で殆ど理性を失っている状態だ。誠の行動を視界にとらえてはいても、あまり理解できていない。  ねっとりと指を舐めながら、直人に微笑みかける。 「可愛いね、直人。ちんぽ突っ込まれてイッちゃって……気持ちよかった?」 「ふあっ、気持ち、いっ、誠の、奥まで入って、いっちゃった、あっ、あんっ」  快感に思考が蕩けた直人は、思ったままを口にする。羞恥に悶える直人も可愛いが、快楽を素直に享受する直人も可愛い。 「腰動かせる? 自分で腰振って、おまんこぐちゅぐちゅできる?」 「あっ、あっ、んっ、するっ、おまんこ、ぐちゅぐちゅ、いっぱい、んあっ、あっ、ひんっ」  快感に震えながら、直人は腰を上下に振る。  絡み付く肉壁に陰茎を扱かれ、その心地よさに誠は熱い息を吐いた。  上体を下へ傾けた直人の乳首へ手を伸ばす。 「んひぁっ」 「直人が僕のちんぽ気持ちよくしてくれてるから、僕は直人の乳首可愛がってあげるね」 「ひあぁっ、あっ、あんっ」  両方の乳首を指でくにくにと捏ね回す。ここを刺激すれば、連動して腸壁が蠢いた。  しゃぶりつくような肉襞の感触を味わいながら、ぷっくりと膨らんだ突起を爪の先で優しく引っ掻く。  直人の体がぴくびくと跳ねた。 「あぁっ、あっ、あんっ、んあぁっ」 「直人はすっかり乳首で感じるようになったね」  毎日のように弄り回してしっかりと性感帯へと作り替えた。形も色も感度も、誠の手でじっくりと変えていった。その変化に誠は満足げに唇を歪めた。 「ぅんっ、んっ、気持ちいいっ」 「もう直人は乳首だけでイけるからね」 「うん、うんっ、乳首で、いくっ、んんっ、でも、誠じゃなきゃ、いけないっ、あっ、あっ、誠に、されないと、んあっ、あっ、あんっ、誠だから、きもちぃのっ、ひんんんっ」  また直人の言葉に煽られ、激しく腰を突き上げてしまう。  奥を貫かれ、直人は射精を伴わず絶頂を迎えた。  蠕動する肉筒を、誠は休む暇も与えず穿ちつづける。 「はあっ、直人が可愛いこと言うからっ、我慢できなくなっちゃう……っ」 「んひっ、あっ、あっ、あぁっ、あっ」 「おまんこ思いっきりずぼずぼして、奥の奥までちんぽ捩じ込んで、直人のお腹膨れるまで精液注いで、直人の体の中、僕でいっぱいにしたくなるっ」 「ひあぁっ、あんっ、して、誠で、いっぱいっ、んあっ、あっ、あっ」  直人はもう自分がなにを言っているのかわかっていないだろう。 「好き、誠、あっ、ひゃうんっ、好き、好きっ、誠、まこと、すきぃっ」  蕩けた顔で、甘い声で好き好き言われて、もう堪らなくなって上半身を起こして直人をきつく抱き締めた。直人は嬉しそうに誠にしがみつく。 「はっ、可愛い、なお、なお、僕も好き、大好き」 「あんっ、うれし、んんっ、あっ、あっ、すきぃっ」  じゅぼっじゅぼっと、直腸を掻き回す。  射精しないまま直人は何度も達していて、その度に男根を強く締め付けられ、誠もそろそろ限界だった。 「直人、出すよ、直人のお腹の中、僕の精液まみれにするからね、どろどろの精液で、お腹たぷたぷになるまで、いっぱい出すからね」 「はひっ、中、なか、あっ、あっ、誠で、いっぱいに、してぇっ」 「直人……っ」  直人の腰を掴んでぐぽんっと最奥を貫き、そのまま射精した。びゅるるっと、熱い体液を注ぎ込む。 「んあぁっ、あっ、あっ、~~~~っ」  ぶるぶる震える直人の体をしっかりと抱き締め、彼の胎内に全てを吐き出した。  脱力する直人をゆっくりと持ち上げ、陰茎を引き抜いていく。  直人は抵抗するように僅かに身を捩った。 「あっ、だめ、抜いたら、零れちゃう……お腹、誠でいっぱいにしたいのに……」  無意識にそんなことを口にする直人に、射精したばかりの肉棒が再び頭を擡げた。 「ほんとに、妊娠させてやろうか。ベッドに縛り付けて孕むまでぐっちゃぐちゃに犯しまくってやりたいよ」 「ふぇ……?」  ぶつぶつと呟いた誠の不穏な発言は、直人の耳には届いていなかった。 「誠……?」 「ごめんね、なんでもないよ」  にっこり微笑んで、直人をベッドに押し倒す。 「心配しなくても、またたっぷり注いであげる。零れても、またいっぱいになるまで何回でも直人の中に出すからね」 「あ……」  頬を染め、嬉しそうに頬を緩める直人に口づける。  そうしてまた、飽きることなく抱き合った。  数時間後、気を失ってしまった直人を連れて浴室に移動した。どろっどろの直人の体を丁寧に洗う。精液でぬちょぬちょの直腸も綺麗にした。  誠が触れるとそれに反応して直人が可愛い声を出すのでついつい乳首やペニスに触れる手が不埒な動きをしてしまったが、洗うだけにとどめて、彼を抱えて浴槽に浸かる。広々とした浴槽は二人で入っても狭さを感じない。  のぼせないようぬるめにしたお湯の中で、背後から直人を抱き締めゆったりとした時間を過ごしていると、直人が目を覚ました。 「ん……あれ……?」  ぼんやりしていた直人は、徐々に状況を把握して誠を振り返る。 「ご、ごめん、誠、俺、また……っ」  こうして気絶した直人を風呂に入れるのははじめてではない。既に何度も繰り返していて、目を覚ます度に直人は申し訳なさそうに謝った。 「気にしないで。直人の体洗うの好きだから」  そう言って、直人を宥めるのもいつものことだ。  もちろん本心で、誠は喜んで直人の世話を焼いている。  だが直人はそれを誠の優しさだと思っている。 「あ、ありがとう……」  直人は膝を抱え、真っ赤な顔を俯けた。  背を向けているので彼の美味しそうなうなじが露になり、むしゃぶりつきたくなる。 (また、気絶した……。っていうか、誠と、ああいうこと、すると、気持ちよくて、すぐわけわかんなくなって……なんか、いっぱい恥ずかしいこと言ってる気がする……)  セックスの最中、直人は正気を失ってしまうことが殆どだ。快楽に弱いので、仕方がない。 (誠、いい加減呆れてないかな……俺、絶対おかしいことしたり、言ったり、してるよな……)  直人の思うおかしいこととは、誠にとっては可愛くて堪らないことだ。だから寧ろもっとおかしくなってくれて構わない。 「なお……」  背後から、優しく抱き締める。 「好きだよ、直人。直人のこと、大好き」  耳元で甘く囁けば、直人の全身が真っ赤に染まった。体ごと誠の方へ振り返り、しがみついてくる。 (俺も好き、大好き……)  恥ずかしくて声に出せない直人の声が聞こえてくる。  誠は笑みを零した。 「甘えてくれるの? 嬉しい、可愛いね、直人」  直人は赤い顔を隠すように誠の首筋に顔を埋める。 (可愛くなんて、ないのに……でも、誠が嘘を言っているなんて思えない……だから、たぶん、きっと、ほんとに可愛いって思ってくれてる、はず……。誠に、可愛いって思われるの嬉しい、好き、誠、大好き)  直人の気持ちが伝わってきて、散々貪ったあとだというのに、また彼が欲しくなる。  直人が相手だと、際限がなくなる。満足したと思ったのに、すぐにまた求めてしまう。満たされているのに、でも、満たされることなどない。  誠は直人の背中に手を滑らせ、まだ熱を持っているアナルに触れた。 「あんっ」  直人の体が揺れ、ぱちゃりとお湯が跳ねた。  綻んだままのそこは、すんなりと誠の指を飲み込む。 「ひぁっ、んっ、誠……?」  中を弄られ、直人は戸惑うように誠を見上げる。  誠はうっそりと微笑んだ。 「直人が可愛くて、またしたくなっちゃった」 「ぁ……ん……っ」 「嫌?」  誠の微笑を見つめ、直人の瞳がとろりと蕩けていく。 (嫌、な、わけない……。もう、たぶん、おちんちんなにも出ない……体もくたくたで……でも、誠が欲しい……いっぱいしたのに、また、すぐ、欲しくなる……きっと、ずっと欲しがっちゃうんだ……)  直人も同じように思ってくれている。自分を求めてくれている。  それが伝わり、激しい渇望に襲われた。 「誠、好き……」  誠を求める気持ちを、その言葉に込めて伝えてくる。  誠はそれにキスで応えた。  了

ともだちにシェアしよう!