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第3話
直人の意識は徐々に覚醒する。いつもと違うマットの感触に違和感を覚えた。寝返りを打とうとして、身動きが取れないことに気づく。まるで抱き締められているような感じがする。自分の体に、別の誰かの体が密着しているような。
そこで直人ははっと目を覚ました。
目の前には佐々木の顔がある。
「っ……!?」
声にならない悲鳴を上げる。
(ななななな、なんで!? どうして!?)
直人は今、ベッドの上で、彼に抱き締められている。
それを理解して、弾かれるようにがばりと体を起こした。
直人を抱き締めていた佐々木は腕を跳ねのけられる形になり、そのせいで彼を起こしてしまったようだ。
しまった、と思うけれど、混乱しすぎて謝罪の言葉は出てこない。
一体どういう状況なのか、必死に記憶を辿る。
その間に、目を覚ました佐々木が直人を見て微笑んだ。
「おはよう、直人」
「おおおおおおはっ……!」
色気がだだ漏れの寝起きの佐々木を直視してしまい、まともな挨拶を返せない。
(いやいやいやいや、佐々木に見惚れてる場合じゃない、なにがどうなってこんなことになってるのか思い出さないと……!)
動揺していた直人は、佐々木に下の名前で呼ばれたことにも気づかなかった。
(昨日、佐々木の部屋でご飯食べて、お酒飲んで、それで、それで……ダメだそこからなにも思い出せない! 酔っ払って寝ちゃった? だから佐々木がベッドに寝かせてくれたのか?)
必死に思い出そうとするが、お酒を飲んだ辺りでばっさり記憶が途切れている。
酔っ払って、佐々木になにか失礼なことをしてしまったのではないだろうか。
直人は青ざめた顔を佐々木に向ける。
「さ、佐々木、お、俺……」
「直人、もしかして昨日のこと覚えてない?」
「ご、ごめ、俺……」
(あれ? 今、『直人』って呼んだ? なんで?)
困惑する直人に、佐々木は苦笑する。
「じゃあ、直人が昨日自分で言ったことも覚えてないんだ?」
「っえ? お、俺、なんか、言った……?」
「うん。僕のことが好きだって、告白してくれたんだよ」
にこりと笑顔で告げられた言葉に、直人の全身から血の気が引いていく。
ついにやってしまった。あんなに自分の気持ちがバレないようにって気を付けていたのに。お酒に呑まれ、あっさり自爆してしまうなんて。
直人は項垂れた。佐々木の顔が見られない。
(嫌われた、きっと気持ち悪いって思われてる……もう佐々木に近づくこともできないんだ……)
絶望し、直人は体を震わせた。込み上げる涙を必死にこらえる。
「ご、ご、ごめん、俺っ……」
「直人、顔上げて」
「っ……」
佐々木の顔を見るのが怖かった。
そっと顔を上げると、優しくこちらを見つめる佐々木と目が合った。
「もう、どうして謝るの? そんな泣きそうな顔、しないでよ」
「ご、ごめ……っ」
「謝らないで。僕、直人に告白されて嬉しかったんだよ?」
「…………え?」
「ちゃんと昨日返事したのに、それも忘れちゃったんだね」
「ぁ、う……」
「僕も直人が好きだよ」
「っ、っ、っ……」
直人は酸欠のようにぱくぱくと口を開閉する。
(え? 今なんて? あれ? 今、佐々木、俺に、俺が、え……?)
混乱する直人に言い聞かせるように、佐々木は言葉を繰り返す。
「直人のことが好き。だから、直人が僕のこと好きって言ってくれて、本当に嬉しかった」
「は、ぁ、え……?」
「それとも、直人は本気じゃなかった? 酔っ払って言った冗談だったのかな?」
佐々木が悲しげに目を伏せる。
直人は慌てて否定した。
「違う! 俺、佐々木が好きだ!」
「ほんと?」
「う、う、う、うん」
「よかった、僕、フラれちゃうかと思ったよ」
「そんなわけないよ!」
佐々木は嬉しそうに瞳を細め、直人を優しく抱き締める。
「あっ……」
「もう僕たちは恋人だから、こういうことしてもいいんだよね?」
「え、あ、う、うん……」
信じられない状況に戸惑いながらも、直人の心は彼に抱き締められて喜んでいる。
(嘘、夢みたい、これって夢じゃないよな? 現実? 本当に? 佐々木が、俺のこと好きって……俺が佐々木の恋人? どうしよう、嬉しすぎて、頭変になりそう……)
頭がふわふわした状態の直人を抱き締める腕に、ぎゅっと力が籠る。
「可愛いね、直人」
「ふぇ……?」
「耳が真っ赤」
「ひゃうんっ」
ぺろりと耳を舐められ、びくんっと肩が跳ねる。
直人は狼狽え、更に顔を赤くした。
「さ、さ、佐々木っ……」
「違うよ」
「え……?」
「誠って呼んで」
「ええっ」
「だって恋人同士なんだから」
「あ、あ、う……」
だから佐々木は直人を名前で呼んでいたのか、と思い、そしていざ自分が佐々木の名前を呼ぶのかと考えると恥ずかしくてなかなか言葉が出てこない。
「あ、あの、あの……っ」
「うん」
「ま、ま、まこ、と……」
つっかえながらも名前を呼べば、佐々木は満面の笑みを浮かべた。
嬉しそうな彼の表情に、きゅんと心臓が締め付けられる。
ぼうっと見惚れているとどんどん顔が近づいて、気づけば唇が重なっていた。
ふわりと伝わる唇の感触に、自分がなにをされているのか実感する。
(あ、わ、ウソ、佐々木と、誠と、キスしてる……!)
直人はぎゅっと目を閉じてキスを受け入れた。
(うわ、は、はじめての、キス、誠と、してる……)
昨晩既にファーストキスは済ませているのだが、覚えていない直人ははじめてのキスに感動した。
重ねるだけの唇を、今度は食まれ、それから舐められた。びっくりして口を開けば、そっと舌を差し込まれる。
「ふぁっ……」
佐々木の舌が、愛撫するように直人の舌を撫でる。はじめて味わう感触に戸惑っていたが、蕩けるような佐々木のキスに直人の体から力が抜けていく。
「んんっ、は……ぁん……」
佐々木は直人の体を抱き締めながら、甘やかすようなキスを繰り返す。不慣れな直人は彼の優しい口づけにメロメロになってしまった。
(気持ちいい、頭ぼーっとする。好き、佐々木、キス、気持ちいい、もっとしたい、佐々木……誠、誠)
気づけば直人も舌を動かし、もっととねだっていた。
伸ばした舌をちゅうっと軽く吸い上げられ、快感にぞくんと背中が震える。
水音を立てながら唇が離れ、直人はとろとろの瞳で佐々木を見上げた。
佐々木はいつものように優しく微笑んでいた。けれどその双眸は見たことのない熱を孕んでいた。
(あ、なんか、佐々木に見られてるだけで、ぞくぞくして、おかしくなりそう……)
視線に感じてしまっている自分が恥ずかしくて、直人は目を逸らした。
そんな直人の体を、佐々木はそっと押し倒す。
「さ、ささっ……誠……!?」
驚く直人に、佐々木の熱っぽい視線がまっすぐに注がれる。それだけで直人は身動きが取れなくなった。
「もっと直人に触りたい。触らせて?」
「は、ぅ……」
囁くように言われて、直人はこれ以上ないほどに全身を赤く染める。
頭は混乱して、恥ずかしくて、けれど拒むことなんてできなくて、直人は小さく頷いた。
佐々木は嬉しそうに目を細める。
「ありがとう、直人」
佐々木は直人の頬に口づけ、服を捲り上げた。
貧相な体が露になり、直人は思わず隠したくなる。
佐々木の手が肌に触れ、そのまま撫でられた。
「んんっ……」
擽ったいような感じがして、ふるっと体が震える。
胸元を撫で上げられ、乳首が掌に擦れた瞬間、ピリッとした感覚が走り抜けた。
(え、なに、今……)
普段体を洗うとき、そんな風に感じたことはない。
それなのに、今、佐々木の掌が軽く触れただけで痺れるような感じがした。
戸惑う直人の胸を、佐々木の掌がすりすりと撫でる。
両手で刺激され、直人の乳首はすぐに固く尖った。
(え、え、なに、なんで……!?)
昨晩佐々木にたくさん弄られたせいで敏感になっているのだが、それを覚えていない直人は戸惑うばかりだ。
「あんっ」
乳首を指で擦られ、鼻にかかったような甘い声が漏れてしまう。
困惑する直人の心とは裏腹に、体はしっかりと快楽を覚え、与えられる刺激にびくびくと反応した。
(ど、どうしよう、なんで、こんなに感じちゃうんだ? 男なのに、ち、乳首でこんな……。はじめてなのに、こんなんじゃ佐々木に淫乱って思われる……)
焦り、どうにか快感を逃がそうと思うけれどそんなことできるはずもなく、佐々木の指に翻弄されつづける。
「ひぁっ、あっ、あんんっ」
(やだ、変な声出るし、体びくびくして、抑えられない……!)
佐々木にどう思われるのか怖くて、じわりと涙が浮かぶ。
そんな直人の耳に、佐々木の優しい声が聞こえた。
「気持ちいい、直人?」
「あっ、は、お、俺……っ」
「可愛いね。直人が僕の指で気持ちよくなってくれるの、すごく嬉しいよ」
「嬉しい……?」
「うん。だから我慢しないで、いっぱい気持ちよくなってね。気持ちよくなってる可愛い直人、僕に見せて」
「ひぁんっ」
ぺろりと乳首を舐められ、背中が仰け反る。
(あ、うそ、乳首、舐められてる、佐々木に、あ、気持ちいい、恥ずかしい、でも、気持ちよくなっていいって、佐々木が……)
敏感な乳首を舌で転がされ、強い快楽になにも考えられなくなってくる。
「ひぅっ、んんっ、ん、あっあっあっ」
声を我慢するべきなのか、感じるままに上げるべきなのかわからない。気持ちよくて、もうそれだけで頭がいっぱいになってしまう。
「舐められるの、気持ちいい?」
「ぁんっ、い、いいっ、気持ちいい、ま、誠……っ」
「よかった。もっと気持ちよくなってね」
そう言って佐々木は再び乳首へ顔を寄せた。はむはむと唇で食み、舐め回し、音を立てて吸い上げる。
「ひんっ、んっ、あっ、あぁんっ」
気持ちよくて、ひっきりなしに声が漏れる。
(気持ちいい、誠に、舐められるの、すごく気持ちいいっ、吸われるのも好き、じゅうって、口の中熱くて、ぬるぬるで……っ)
佐々木からもたらされる快感に耽溺する。
直人は無意識に腰を揺すっていた。ぺニスはすっかり反応している。
(あ、どうしよ、ちんちん熱い、パンツ汚れる……)
そんな不安が頭を過ったとき、佐々木がゆっくりと顔を上げた。
「直人、こっちも触っていい?」
佐々木の手が、下肢へと伸ばされる。
「えっ、あっ、わっ……」
了承する前に、佐々木はズボンと下着に手をかけた。そのままいっぺんに下ろしてしまう。
「わあっ、あっ……」
直人は真っ赤になって狼狽した。
(み、見られっ、佐々木に、誠に、あ、あんなとこ、見られる……!)
しかも触られてもいないのに、既に勃起しているのだ。今度こそ淫乱だと思われるのではないか。
怯える直人のペニスに、佐々木は躊躇いなく触れた。掌に包み込まれ、自分のとは違うその感覚に直人はびくっと腰を浮かせる。
「ひぅっ、んん……っ」
「直人のここ、もうこんなになってるんだね」
「あ、ごめ……」
「嬉しいよ。直人が気持ちよくなってくれて、すごく嬉しい」
淫乱だと軽蔑されてはいないようだ。寧ろ本当に嬉しそうで、直人は胸を撫で下ろす。
「こっちでもいっぱい気持ちよくなろうね」
微笑んで、佐々木はぺニスを上下に擦りはじめる。
「ひあっ、あっあっあっあっ」
自分のよりも大きな掌に握られ、扱かれ、すぐに先走りが漏れ出した。
蜜で濡れた亀頭を、くちゅくちゅと捏ねられる。
「んやあぁっ、ま、待っ、そこ、だめ、あっ、あっ、あぁっ」
「ここ、気持ちいい?」
「気持ち、いっ、あっ、だめ、そこ、そんなにされたら、すぐ、出ちゃ、あっあっ」
「いいよ、一回このまま出して」
「やっ、だめ、だめぇっ、あっ、あんっ」
懸命に我慢しようとするけれど、佐々木の手淫にどんどん追い詰められていく。
ぺニスを擦りながら、佐々木は再び乳首を愛撫する。
乳首をちゅぱちゅぱ吸われ、ぐちゅぐちゅとぺニスを擦られ、あっという間に限界が訪れた。
「あっあっ、だめ、いくっ、いくっ」
「好きだよ、直人。可愛くイくところ、僕に見せて」
「あっ、~~~~~~ッ!!」
びくんっと腰が跳ね、精が吐き出された。
自慰よりもずっと強烈な射精に、直人は呆然と余韻に浸る。
呼吸を整えながらふと視界に入った佐々木の掌が、自身の体液でべっとりと汚れていることに気づいて慌てて体を起こす。
「ご、ごごご、ごめん!!」
きょろきょろと視線をさ迷わせてティッシュを探し、引き抜いた。
佐々木の掌をごしごしと拭う。
(うわあ、佐々木の手に出しちゃうなんて……)
恥ずかしいやら申し訳ないやらで、直人は顔を赤くしたり青くしたりと忙しい。
昨晩同じように佐々木の手に射精していて、しかもその精液を全て佐々木に舐め取られているとは夢にも思わない。
「ご、ごめん、誠……」
「謝らないでよ。こんなの、気にしなくていいのに」
「で、でも、汚いし……」
「直人のなら、汚いなんて思わないよ。好きな人の体液なんだから。直人は違うの?」
そんな風に言われて、確かにそうだと直人も思った。佐々木のものならば、汚いなんて思うはずがない。もし佐々木が同じように直人の手で射精してくれたら、嬉しいと感じるだろう。
「お、お、俺も、同じ……」
小さな声で同意すれば、佐々木はにこりと笑った。
「よかった。直人も同じ気持ちでいてくれて」
唇に、ちゅっとキスを落とされた。ちゅっ、ちゅっと口づけられながら、再びベッドに押し倒される。
(俺、どうしたらいいんだろう? 俺も触っていいのかな? それとも誠に任せてればいいのかな? でもしてもらってばっかりで申し訳ないような……。どうしよう、こういうときどうすればいいのかわかんない……)
経験のない直人はぐるぐると考える。
「はあ、可愛い、全身舐め回したい」
「え、な、なに……?」
「なんでもないよ」
なにか言われたような気がしたのだが、佐々木は笑顔で首を横に振る。独り言だったのだろうか。
どうするべきかおろおろする直人の耳を、佐々木がぱくりと食んだ。
「ひゃうっ」
口に含まれ、ペロペロと舐め回される。
ぞくぞくぞくっと背筋が震えた。
「ひあぁっ、だ、だめ、耳、だめぇっ」
「んん?」
「ひゃあんっ」
「可愛いね、直人。体びくびくしてる」
舐めながら喋られ、直人はびくびくが止まらない。
「顔もとろんてなってる。こんな可愛い顔、僕にしか見せちゃだめだよ?」
「んぁっ、うん、うんっ」
「可愛い。耳、気持ちいい?」
「気持ちいっ、あっあっ」
快感にまた頭がぼうっとしてくる。
耳の中まで舐められて、気持ちよくてはしたなく腰が浮いてしまう。ペニスが再び頭を擡げた。
快楽に蕩ける直人の脚が佐々木の手で広げられる。
いつの間にかローションを纏った佐々木の指が、ペニスの下の奥まった箇所へ伸ばされた。滑る指でアナルを撫でられ、気づいた直人は目を見開く。
「あっ、そ、そこは……っ」
思わず佐々木を止めるように下肢へ手を伸ばした。
佐々木が不安そうに直人の顔を覗き込む。
「ここは嫌? 触られたくない?」
「嫌、じゃ、ない……けど……」
「触らせてくれる?」
「う、ん……」
拒めなくて、直人は頷いた。
別に触られるのが嫌なわけではない。受け入れるのが怖いわけでもない。
濡れた指が、つぷりと後孔に差し込まれる。抵抗もなく、直人のそこは彼の指を受け入れた。
(あっ、すんなり、入っちゃった……はじめてなのに、慣れてるって思われたらどうしよう……自分でそこ弄ってたのバレたら、佐々木に、誠に嫌われちゃうかも……ど、どうしよう……)
佐々木に軽蔑され嫌われてしまうかもしれないという恐怖に、うるうると瞳が潤んでくる。
「はあっ、可愛い、全身、穴の中まで舐め回して、匂いつけて完全に僕のものにしたい……」
「えっ、誠、なんて……?」
「なんでもないよ」
顔を向けると、佐々木はにっこりと微笑んだ。
「直人、痛くない? 大丈夫? 指一本でもきついから、ゆっくり慣らしていこうね。もし痛かったら言ってね?」
「う、うん……」
(あ、きついんだ、よかった、緩くなってるかと思った……ぬるぬるしてるからすんなり入っただけなのか……)
直人は胸を撫で下ろした。
佐々木の息が荒くなっていることに直人は気づかない。
挿入された指が、ゆっくりと中を解していく。ローションを追加し、指を増やし、綻んだ肉筒をぬちゅぬちゅと掻き混ぜた。
「んあっ、あっ、あっ、そこ、だめぇっ、ああんっ」
「ここ、気持ちいい? 指でぐりぐりすると、中がきゅうきゅうって締まって、直人の腰ががくがくして、はあっ、かわい」
「んやぁっ、そこ、だめ、だめ、あっ、はぁんんっ」
前立腺を執拗に嬲られ、直人は強烈な快楽に乱される。
ペニスは完全に勃起し、先端からたらたらと先走りを漏らしていた。
乳首まで舐められて、気持ちよすぎて頭がおかしくなりそうだ。
(お、俺ばっかり、気持ちよくなっちゃってる……また一人でいっちゃう……誠も一緒に気持ちよくなってほしいのに……でも、俺から入れてって言っていいのかわかんない……はじめてのくせにそんな風にねだったら淫乱だって思われるかも……)
快感に蕩けながらも、僅かに残る理性が直人を押し留める。
「はあっ、言わせたい、いやらしい言葉でねだらせたい、でも今は我慢……はあっ、はあっ」
佐々木がぼそぼそと呟いていたが、直人の耳には届かなかった。
「なお、直人、入れていい? 直人のここに、僕を入れさせてくれる?」
「ぅんっ、あっ、あっ、い、入れて……っ」
直人は望んでいた言葉をもらえて、こくこくと頷いた。
指は引き抜かれ、とろりとローションを漏らすアナルに佐々木の陰茎が押し当てられる。
一瞬視界に入った彼のそれは自分のそれよりもずっと大きくて、直人は息を呑んだ。
(おっきい、誠の……ちゃんと入るかな……入らなかったらどうしよう……がっかりされたくない……こんなことならもっと自分で慣らしておけばよかった……)
直人が思ったのは恐怖よりも受け入れられるのかという不安だった。
「はっ、はあっ……なお、なお、直人、我慢できない、もう入れるよ?」
「は、はいっ……あっ、はっ、あっあっあっ」
心なしかギラつく佐々木の瞳に見据えられ、直人は覚悟を決めた。
ずぶずぶ……っと亀頭が埋め込まれていく。
直人の不安は杞憂に終わり、しっかり解された後孔は佐々木の熱を柔軟に受け止めた。
指とは違う、硬い楔に肉壁をごりごりと擦られる感覚に直人は喘いだ。
「ふあっ、あっあっ、んはぁっ」
「直人、直人、大丈夫? 苦しい?」
「んぁっ、だいじょ、ぶ……まことは、誠は苦しくない……?」
「うん。直人の中、あったかくて、すごく気持ちいいよ」
「ほ、ほんと……? あっ、よかった、もっと、気持ちよくなって、ひぁっ、あっ、誠も、いっぱい気持ちよく、なってほし、あっ、んあぁっ」
「ああ、もう、可愛すぎる、めちゃくちゃにしたい、腹の中全部僕の精液で満たしてやりたい……っ」
佐々木の小声で呟かれた不穏なセリフは、やはり直人には聞こえていなかった。
「ありがとう、直人。直人も一緒にいっぱい気持ちよくなろうね」
「はひっ、ひあぁっ、そ、そこ、あっあっ」
「ここ、直人の気持ちいいところ、僕のでたくさん擦ってあげる」
「ああぁっ、そん、そんな、ごりゅごりゅ、しなぃでぇっ、あっはっ、あぁんっ」
指よりもずっと太い亀頭で前立腺をぐりゅぐりゅと押し潰され、直人は快楽に身悶えた。
理性は吹き飛び、もうなにも考えられなくなってしまう。
「らめ、そこ、たくさんされたらぁっ、いく、いっちゃ、また、出ちゃうぅっ」
「いいよ、ほら、直人、僕のちんぽでごりごりされてイって」
「んゃっ、いくっ、いっ、あっ、あああぁっ」
びゅくっと、直人のペニスから精が噴き出す。
直人の腹や胸元に、ポタポタと体液が飛び散った。
射精の余韻に震える直人を、佐々木は絶えず刺激しつづける。きつく絡み付く肉筒を掻き回し、前立腺を抉るように擦り上げた。
絶頂に達しても継続して快楽を与えられ、直人は終わらない淫楽に悲鳴を上げる。
「んひあぁっ、あぁっ、あっあっあっ」
「なお、直人、直人の可愛いおっぱいに、直人のエッチなミルクがかかって、はあっ、おいしそ……」
「あんっ、あっ、ひゃぅんっ」
飛び散った精液が、ぺろぺろと舐め取られていく。
「こんなにたくさん飛ばして……そんなに僕のちんぽ気持ちよかった? 僕のちんぽで擦られるの好き?」
「ひっ、あっ、す、き、まこと、まことの、ちんぽ、きもちいっ、まこと、すきぃっ」
快楽に頭を支配されている直人は、もう自分がなにを言っているのかもわかっていない。
「ああ、かわい、僕も好きだよ、大好き」
「すき、すきぃっ、まこと、あっあっ」
「もっといっぱい直人のおまんこぐじゅぐじゅにするからね? もっと奥に入れるよ? 僕のちんぽ奥までほしいよね?」
「あっ、ほし、まことの、おく、おくにっ、あっあっあっ、ああぁっ」
前立腺を越え、更に奥へと剛直が突き入れられる。
直人は圧迫感に目を見開いた。
「んはっ、はっ、はあぁっ」
「直人、なお、大丈夫だよ、おちんちんくちゅくちゅしてあげるからね」
「んぁっ、あっ、おち、ち、きもちぃっ」
ペニスを軽く扱かれ、直人の体から力が抜ける。
佐々木は直人の性器を刺激しながら、腰を進めた。
「んっ、あぁっ、おく、お腹の中に、きてるよぉっ」
「うん、僕のちんぽ、直人の奥まで入ったよ」
「あんっ、誠のっ、奥まで、うれし、あっ」
「嬉しい?」
「うんっ、いっぱいなの、うれしい」
「はあっ、僕も、嬉しい。中、ぐちゅぐちゅしてもいい? ちんぽで奥、ずんずんしていい?」
「あっ、して、ぐちゅぐちゅ、奥まで、いっぱい、してぇっ」
無自覚に煽り、激しく中を突き上げられる。
色々混ざった卑猥な音が、下半身から絶えず響いていた。
大きく脚を広げられ、強く腰を打ち付けられる。
直人は喘ぐことしかできない。
触らなくても直人のペニスは勝手に精を吐き出す。
中を犯されながら乳首を散々弄られた。直人がもうだめと泣いて縋るまで舐めしゃぶられ、乳首は痛々しいほどに赤く染まっていた。
「なお、直人っ、可愛い、好き、直人、直人からキスして?」
「はっ、ん、んんっ」
顔を近づけられ、直人は言われるまま彼に口づけた。彼の首に腕を回し、濃厚なキスを交わす。
舌を絡ませ合い、混ざり合う唾液をぴちゃぴちゃと舐める。
キスをしながらも繰り返される抽挿に、直人のペニスからまた精液が零れた。
「ん、はあっ、僕も出していい? 直人の中に精液注いでいい?」
「いい、あっ、だひて、なか、まことの……っ」
「奥に出すよ? 僕の精子、直人のおまんこの奥にいっぱい出すからね?」
「してっ、だひて、せーし、おくにっ」
陶酔した顔の直人に再び深く口づけながら、佐々木は男根で激しく内奥を貫いた。
次の瞬間、どぷどぷっと熱い体液が流れ込んでくるのを直人は感じた。恍惚とした表情で、吐き出される精を受け止める。
直人は充足感に包まれ、うっとりと目を閉じた。
その後、直人が放心している間に風呂に入れられ体を洗われ、気づけば佐々木とくっついてまったりとした時間を過ごしていた。
佐々木に後ろから抱き締められ、まるで恋人のようだと思って、恋人のようではなく本当に恋人になったのだと思い出す。
信じられない。でも、夢ではない。先ほどの激しい行為を思い出し、直人は羞恥に悶えた。
恋人になれるなんて、思っていなかった。佐々木に自分の存在を知られることなく大学を卒業し、二度と会うこともなくなるのだろうと思っていた。
それが、こんなことになるなんて。
(なんか、幸せすぎて怖い。でも、嬉しい。こんな風に誠と一緒にいられるの、すごく嬉しい……。いつか、誠と一緒に暮らしたりできるのかな……なんて……)
「直人、僕と一緒に暮らしたいの?」
「えっ!?」
直人はぎょっとして後ろを振り返る。
「お、俺、声に出してた……?」
「うん」
「あ、わ、ご、ごめん、変なこと言って……っ」
実際は声に出してなかったのだが、直人はあっさりと佐々木の嘘を信じる。
顔を赤くして慌てる直人に、佐々木はにっこりと微笑む。
「変なことじゃないよ。嬉しいな、直人が僕と一緒に暮らしたいって思ってくれて」
「えっ……」
「だって、僕も同じこと考えてたから。お隣さんじゃなくて、直人と同じ家に住みたいなって」
「ほ、ほんと……?」
直人は信じられない気持ちで佐々木を見上げた。
(そ、そんな、まさか……きっと、俺に気を遣って言ってくれてるんだよな、本気にしちゃだめだよな……)
付き合ったばかりで同棲したいなんて、重いと思われたくない。
直人は笑ってこの話題を流そうとしたが、佐々木がそれを許さなかった。
「ね、一緒に暮らそう、直人」
「へ、え、いや……」
熱っぽく囁かれ、直人はぽかんとする。
直人の頬を、佐々木が優しく撫でた。
「二人で家賃を払えば、もう少し広くてセキュリティのしっかりした部屋を借りられるよね」
「え、う、うん、でも……」
「毎日ご飯作るね。僕の作った料理、直人に毎日食べてほしいな」
「あっ、う……」
キラキラの笑顔で見つめられ、直人は狼狽え赤面する。
(うわ、なんか、プロポーズみたいなこと言われた……。冗談だとしても嬉しいけど、冗談なんだよな? あれ? 笑えばいいのか?)
反応に困っていると、佐々木にちゅっと軽く口付けられた。
「来週、一緒に部屋を探しに行こうね」
(え? あれ? 本気?)
戸惑う直人に、満面の笑みが向けられる。
「楽しみだね、直人」
「あ、うん……」
頷く以外になくて、直人はこっくりと首を縦に振った。
「今日はずーっとイチャイチャしてようね」
「う、うん……?」
抱き締められながらも、直人の頭の中はぐるぐるしていた。
(え? ほんとに? え? いや、まさか、でも、ええ?)
動揺する直人は、佐々木がにんまりとこちらを見つめていることに気づかない。
そして本当に彼と一緒に暮らすことになるのだが、直人はまだそれを知らない。
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