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第5話
更にその後の魔王視点。
「ユータ、来週末、学校で文化祭があるのだろう?」
魔王の言葉に、悠太は口に入れようとしていたマカロニをぽとりと落とした。
ここは人間界の魔王の住み処であるマンションの一室だ。悠太と一緒に魔王の作った晩御飯を食べている最中である。明日は休日なので、悠太が泊まりに来たのだ。
人間界での独り暮らしに慣れた魔王は、一通りの家事はこなせる。こうして手料理を可愛い恋人に振る舞うことも多い。今日のメニューはグラタンだ。
悠太は常に可愛くて、魔王と愛し合っているときが一番可愛いが、ご飯を食べているときもそれはそれは可愛いのだ。
ふーふーと息を吹き掛けて冷ましてから、小さな口をいっぱいに広げて食べ物を詰め込み、頬を膨らませもぐもぐする幸せそうな顔は絶品だ。この顔を見たくて、ついつい彼に色々と食べ物を与えてしまう。
料理を振る舞えば悠太は毎回美味しいと言って、本当に美味しそうに平らげてくれる。そこも可愛い。
たまに口許を汚してそれに気づいていないのも可愛い。汚れた口許を舐めると照れて真っ赤になるのも可愛い。
そんな彼の姿を目にするたび、悠太はなんて可愛い生き物なのだろうと、胸がじんと熱くなる。彼を愛しいと思う気持ちはとどまるところを知らない。
そんな可愛い悠太が、テーブルを挟んだ向こうから目をまんまるくして魔王を見ている。この表情もとても愛らしい。
「え、えっと、今、な、なんて……?」
「だから、文化祭があるのだろう」
魔界生まれ魔界育ちの魔王だが、人間界での生活も長い。人間界の学校に通った経験はなくても、学校行事は知っている。
「な、な、なんで、知って……」
「私の愛するユータのことだからな」
「いや、理由になってないって……」
悠太は頬を引きつらせている。
もちろん調べたのだ。悠太のことはなんでも把握しておきたい。学校行事も然り。
文化祭は一般公開される。こういう場合、恋人を招待したりするのだ。だから魔王も悠太に誘われるのを待っていた。
しかし悠太は、文化祭が来週に迫っているというのに、文化祭のことを話題にすら出さない。痺れを切らした魔王は、自分から切り出すことにしたのだ。
悠太はうろうろと視線をさ迷わせている。なにかを誤魔化そうとしているように見えた。
「私も……」
「お前は来るなよ!!」
なにも言っていないのに、それを遮るように悠太は声を上げた。
悠太は明らかに様子がおかしい。
怪しい。彼はなにかを隠している。
「なぜ行ってはいけないんだ? 私はユータの恋人だぞ?」
「そ、それは、そうだけど……」
「文化祭とは、友人や家族や恋人を招待するのだろう?」
「そ、そういう場合も、あるけど……」
「ならば私も……」
「それはダメだ!!」
悠太は強く拒絶する。その表情はあまりにも必死で、隠し事があると言っているようなものだった。
「なぜ駄目なのだ?」
「あ、ぅ……だ、だって、お前、すっごい目立つだろ……。この前学校に来たときだって、めちゃくちゃ注目されてたし……」
「ならば、顔を隠せばいいのか?」
「そ、それでもダメだ! 顔隠したってイケメンオーラだだ漏れなんだよ! 雰囲気でカッコいいのバレるからダメだっ」
焦っている悠太も可愛い。しかも魔王をカッコいいと言っている。魔王は自分の容姿にあまり関心はないが、悠太に褒められるのは嬉しかった。
イケメンだと言われて悪い気はしないが、もちろんそれで納得はできない。
なにか、文化祭に来てほしくない理由があるのだ。
魔王は真っ先に浮気を疑った。前は否定していたが、やはり学校に浮気相手がいるのではないか。
浮気なんてするはずない、できるわけがないと悠太はことあるごとに言うが。
彼はまるで自分の魅力をわかっていないのだ。悠太のような可愛らしい生き物は他にいない。奇跡のような存在だというのに、魔王がそれを口にすれば、彼は決まって否定する。
自分がどれだけ愛らしく魅力に溢れ他人を惹き付ける罪深き存在なのか、全く自覚していない。
だから魔王は不安になる。悠太が無意識に男を誘惑し、夢中にさせ、その男にさらわれてしまうのではないかと。さらわれ、監禁され、陵辱されてしまうのではないかと。そして心まで奪われてしまったら。
そう考えると不安で仕方がなく、だから悠太を誰の目にも触れさせたくない。閉じ込め、自分だけが愛でていたい。悠太の声を聞くのも、悠太の目に映るのも、悠太に触れるのも、自分だけでありたい。
そんな風に考えてしまうのだ。
魔王は、生まれたときから魔王として生きてきた。
欲しいものは命じれば全て手に入り、他人のものも奪って自分のものにした。
手に入らないものなどなかった。
だが、悠太という存在は、どれだけ大切に思っても、手に入れることができない。自分のものにできない。
無理やり手に入れようとすれば、きっと壊れてしまう。
自分のものにしたい。
壊したくない。
悠太と出会ってからずっと、狂おしいほどもどかしい思いが胸の内を渦巻いていた。
そして魔王の抱えるジレンマを、悠太は知りもしないのだ。
愛しくて、愛しすぎて、壊してしまいたくなる。
魔王がそんなことを考えているなんて気づかない悠太は、とにかく、と念を押してくる。
「文化祭には絶対来るなよ!! 絶対だからな!!」
魔王は返事をしなかったが、悠太は無言を了承と捉えたようだ。話は終わったとばかりに食事を再開する。
もちろん、魔王は了承などしていない。
そして文化祭当日。
魔王は一応サングラスで顔を隠し、悠太の通う学校へやって来た。魔王は人間が好む顔立ちをしているようで、人混みへ行けば注目を集めてしまうという自覚はある。魔王も無駄に目立ちたくはないし、そのせいで余計な時間をとられては堪らない。
午前中は仕事のトラブルでどうしても職場へ行かなくてはならなくなり、それは無事に解決したが、学校に着く頃には昼をとうに過ぎていた。
魔王は立ち並ぶ出店には目もくれず、人で賑わう廊下を足早に進み、まっすぐに悠太の教室へ向かった。もちろん場所は前もって調べている。迷うことなく辿り着くことができた。
悠太のクラスの出し物はカフェだ。
魔王はドアから離れた場所から、そっと中を覗いた。
そして教室内の光景を目にし、カッと目を見開いた。
メイド服を着た悠太が、客に注文を取っている。
紺色のワンピースに、フリフリの白いエプロン、黒のニーハイを身に付けていた。
簡素なメイド服だが可愛らしく、それはそれは悠太に似合っていた。
悠太が歩くのに合わせ、スカートと腰で結んだリボンが揺れる。
その愛らしくも卑猥で妖艶な姿を、不特定多数の男に見られているのだ。
悠太を見る男共の目を残らず潰してやりたい。
そんな衝動に駆られた。
沸き上がる怒りをそのままに、魔王の目は悠太から片時も離れない。
その強い視線に気づいたのか、悠太がこちらに顔を向ける。そしてぎょっと目を見開いた。
慌てふためいた様子で、クラスメイトに声をかける。
「ごごごごめん、俺、ちょっと抜けてもいいか!?」
「おー、いいぞ。今はそんなに忙しくないし。休憩入ってる奴らもそろそろ戻ってくるし」
「ごめんなっ、ありがとう!」
ぺこぺこと頭を下げながら、悠太が教室から出てくる。そして青ざめた顔で魔王のもとへと駆け寄ってきた。
「おおおお前、来るなって言っただろ!?」
小声で怒鳴る悠太を無視し、彼の腕を掴む。
「こちらに来い」
「えっ、わっ、ちょっ……!?」
ぐいぐいと腕を引き、無人の教室に連れ込む。校内の地図は既に頭に入っていた。
ドアの鍵をかけ、悠太に詰め寄る。
「どういうつもりだ! そんな可憐でいやらしく淫らで愛らしい姿を大勢の男共に見せつけるなんて……襲われたいのか!? それとも誘惑していたのか!?」
「ちっがうわ!! んなわけあるか!!」
悠太は大声で否定するが、信じられない。
「嘘をつけ! 私を呼ばなかったのがいい証拠だ! 私に隠れてこんな男の劣情を誘う衣装を着て、愛想を振り撒き、感じやすく快楽に弱いその体を他の男に差し出そうとしたんだろう!」
「違うっつーの! これはウケねらい! ギャグなの! 他の奴も着てただろ! 男は全員この衣装で接客してただけだ!」
そうは言われても、魔王は悠太の姿しか目に入っていなかったので、他の生徒がどんな格好をしていたかなど覚えていない。
「では、なぜ私に隠していた!? 恋人の私にこそ、その可愛らしい姿を見せるべきではないか!」
「お前がそうやって、すぐ変な誤解するからだろ……」
悠太は呆れ顔で溜め息を零す。
「そもそも可愛くねーし。俺がこんなカッコしたって、笑いにしかならないっつの」
言いながら、ひらひらと掴んだスカートを揺らす。
太股がちらちらと見えて、そんな無防備な姿を晒すから、こちらは気が気ではないというのに。
魔王はサングラスを外し、ねっとりとした視線で悠太を視姦する。
「可愛いだろう、ユータは」
「だから……」
「可愛い。可愛くて堪らない」
「っ……」
「ユータだけだ、こんなにも、私を翻弄するのは」
ぎゅうっと、男にしては華奢な体を抱き締める。
膨らんだ股間を擦り付ければ、悠太はぎょっとして顔を真っ赤に染めた。
「う、ウソだろ、こんなところで……っ」
「貴様が悪い。私を誘惑するから」
「してな……、あっ」
スカートの上から、両手で臀部を揉みしだく。弾力があり形のいい尻臀にむにゅむにゅと指を食い込ませた。
「んあぁっ」
感じやすい悠太は、それだけで甘い声を漏らして身をくねらせる。
「ば、バカっ、こんなとこで、なに考えて……っ」
悪態をつきながら睨み付けるが、その瞳は潤んでいて、魔王の情欲を煽る結果にしかならない。
もじもじと揺れる尻を更に激しく撫で回す。
「では、私の部屋に行くか?」
魔王の力を使えば、一瞬で移動できる。
悠太は首を横に振った。
「ダメ、んんっ、ダメだっ……行かない……っ」
部屋に行ってしまえば、長時間拘束されることになるとわかっているからだろう。
「もっ、離せ……教室、戻んないと……っ」
「そんな状態で戻れるのか?」
「あんっ」
「ほら、もうペニスが膨らんでるのがスカートの上からでもわかるぞ?」
「やあぁっ」
やわやわと、触手を使って布越しにペニスを弄る。
スカートの中に両手を潜り込ませ、下着の上から双丘の狭間を指で撫でた。
下着は悠太がいつも履いている男物で、少し残念に思う。今度、悠太に履かせるために卑猥な下着を用意しよう。はじめて出会ったときに悠太が履いていたような、扇情的なものを。
「ひぁんっ」
「ここも、男を欲しがってひくひくしているぞ? 誘うようにパクパク口を開けて、下着ごと指を飲み込むつもりか?」
「や、やっ、違っ、そんな……」
「こんな発情した体で歩き回ろうとするなど、やはり襲われたいのか? このいやらしい体をめちゃくちゃに蹂躙されたいのか? 私以外の男に抱かれたいのか? ここに他の男の欲望を捩じ込まれ、腹の中に精液を注がれたいのか?」
怒りに言葉が止まらなくなる。
自分の言葉に更に沸々と怒りが込み上げ、下着越しに触手でぐにぐにとペニスを嬲り、指でアナルをカリカリと引っ掻く。
この感じやすく可愛い愛する悠太の体に他の男が触れるなんて、許せるわけがない。頬の赤らんだ愛らしい顔を自分以外の男に見られるだけでも腸が煮えくり返る。
「やぁっ、そんな、の、しないっ……他の、男に、なんて……んんっ、こんなこと、させないっ」
与えられる刺激に身悶えながら、悠太は震える声を絞り出す。
「お前にしか、させるわけないって……いい加減、わかれよっ……こんなこと、お前としか、したくない……お前だけって、思ってるのに……っ」
涙を滲ませ、悠太は気持ちを吐露する。
耳まで赤くして恥じらいながら、魔王への熱い気持ちを訴えていた。
「ユータ……!」
「んんぅっ」
いじらしさに胸を締め付けられ、魔王は突き動かされるように悠太を抱き締め唇を重ねる。
甘くて柔らかい彼の唇を食み、角度を変えて貪った。
溢れる唾液を啜り、悠太のものよりも長くて太い舌で口腔内を蹂躙する。
魔王のものと比べるとあまりにも小さくて可愛らしい悠太の舌をしゃぶり、思う様味わい尽くした。
「んんぁっ、ふぅ、んっ、んんっ」
ふうっ、ふうっ、と必死に酸素を取り込もうとする悠太の様子に興奮し、更に激しく口内を犯す。
「んはぁっ……も、くるひ、ってぇ……っ」
顎まで唾液を垂らして根を上げる悠太の後頭部を掴んで押さえ、喉奥まで舌を伸ばして舐め回した。
くぐもった呻き声を上げながら、悠太は縋るように魔王の腕にしがみつく。
そうされるとますます止まらなくなり、呼吸さえ奪う勢いで悠太の小さな口にしゃぶりついた。
「んぁぁ……はっ、あ……」
唇を離せば、悠太は必死に呼吸を繰り返す。
真っ赤な唇が唾液でてらてらと光っていて、酷く淫らだった。舌を伸ばし、しつこく唇をねぶってしまう。
「んんっ、はあっ……もう、やめろって……」
「ユータが可愛いからやめられないのだ」
膝がガクガクの悠太を触手で支えながら、ワンピースのボタンを外して襟元を寛げ胸元を露にする。エプロンの肩紐がずり落ち、乱れた衣服の隙間から尖った乳首が覗く。そのしどけない姿に魔王は酷く昂った。
「触る前から、こんなに美味しそうに膨らませて……」
「やぁ……っ」
舐めるように乳首を見つめれば、悠太は恥じらい身を捩る。
「恥ずかしいのか? もう何度も見られているくせに。見るだけでなく、指でも口でも散々可愛がってやってるだろう?」
「っこんな、恥ずかしいの、慣れるかよ……っ」
恥ずかしさに涙まで滲ませ、赤面する悠太。
いつまで経っても初々しいその反応に、この上なく興奮する。
けがしたくて堪らなくなる。
自分の手で、滅茶苦茶にしてしまいたくなるのだ。
「ひあぁっ、あっ、あんっ」
身を屈めて乳首にむしゃぶりつき、舌で転がす。
もう片方は指で挟んで捏ね繰り回した。
悠太は甘い声を上げ、快感に背中を反らせる。
胸を差し出され、愛撫に一層熱が籠った。
「んやぁっ、あっ、あっ、あぁっ」
長い舌を小さな突起に絡め、吸い上げる。
悠太の肌は甘くて柔らかくて、本当に食べてしまいたいほど美味しく感じた。
両方の乳首を交互に味わい、空いている方も常に指で可愛がる。
音を立ててしゃぶりながら、触手を動かし悠太の下着を脱がせた。悠太は僅かに抵抗する素振りを見せたが、乳首に柔らかく歯を立てれば、途端に体から力が抜ける。
「やっ、もうそこ、やだぁっ」
「感じるくせに、嫌なのか?」
「しつこい、から……弄られたあと、じんじんして……服、擦れて、変な感じ、するから……っ」
悠太は頬を紅潮させてそんなことを言う。
可愛くて可愛くて、だからいじめたくなる。
もっともっと快楽に溺れさせたい。魔王から離れられなくなるように。
「んあっ、やあ……って、言ってる、のに……っ」
乳首を押し潰すように舐めながら、両手を下肢へと伸ばした。
スカートの中に手を差し入れ、既に蜜を漏らしているペニスを握る。数度擦れば、魔王の指は鈴口から溢れた先走りでぬるぬるになった。
蜜を纏った指を後ろへ回し、ひくひくと蠢く蕾に塗りつける。
「ひあっ、あっ、あんっ」
「くく……物欲しげに口を動かして、自ら咥え込もうとしているのか?」
「ちが、あっ、あぁっ」
「嘘をつけ。腰を揺らして、私の指に擦り付けているではないか」
「んぁんっ、だ、ってぇ……奥、むずむず、するから……あぁんっ」
アナルの表面を撫でれば、焦れったそうに悠太の腰がもじもじと動く。
なんて淫らで可愛い体なのだろう。
この体を知っているのは魔王だけだ。
魔王の前でだけ、こんなにはしたなく乱れるのだ。
その事実に心は歓喜し、興奮に息が上がる。
下肢は痛いほどに張り詰めていた。
「あっ、もう、指、入れて……中、弄って……っ」
我慢できなくなったかのように悠太はねだる。
切なげに瞳を潤ませ、懇願するその表情に酷くそそられ、再び唇に貪りついた。
「ぁんっ、んっ、ふうぅっ」
舌を絡ませ合いながら、蕾に指を挿入する。
熱く蕩ける粘膜が、悦ぶように指を締め付けた。
指を出し入れし、もう片方の手でペニスを扱く。
「んんぁっ、はあっ、んんっ」
後ろと前を同時に刺激され、快楽に思考が蕩けた悠太は可愛らしく魔王の舌にちゅうちゅうと吸い付く。
口腔内をどろどろに犯しまくりたい衝動をこらえて、されるがまま、悠太の好きにさせた。
「はっ、んっ、ぁふ……っ」
夢中で舌を吸う悠太の中を、指で擦る。柔らかく解れたそこに二本目の指を差し込んだ。
敏感な膨らみを指で挟んでこりゅこりゅと捏ねれば、悠太は過敏に反応する。唾液を零しながら唇を離して、びくびくと体を震わせた。
「ひあっ、そこ、らめっ、んあぁっ、そんな、しちゃ、やあぁっ」
「ここがユータの気持ちいいところだろう? ほら、ペニスから蜜がたくさん漏れてきた」
「あぅっ、だめ、いっちゃ、いっちゃうからぁっ」
「イけばいい」
「ひんっ、らめ、らめっ、服、汚れるっ」
悠太はいやいやと首を振り、射精をこらえて唇を噛み締めた。
赤く染まった悠太の耳に囁く。
「汚せばいいだろう? 悠太のいやらしい蜜でどろどろに汚してしまえば、もうこれを着たまま人前に出られなくなるからな」
「そん、なっ、あっ、だめぇっ、まだ、終わってない、からっ……お願い、汚したくないぃっ」
膨らんだペニスを容赦なく擦り上げ、中も指で刺激する。このまま射精すれば、確実にスカートにかかるだろう。そうなれば、悠太は着替えるしかなくなる。
こんな可愛い格好をした悠太を、これ以上誰にも見せたくない。
だから魔王は愛撫の手を緩めなかった。
「やだぁっ、お願い、だからぁ……っ」
悠太はひんひん泣きながら、魔王の首に腕を回してしがみついてきた。
許しを請うように、涙で濡れた頬を首筋に擦り付けてくる。
「許してっ、汚すの、やだっ、お願いぃっ」
「っく……」
可愛い仕草にぐらりと心が揺れた。
結局、最後の最後で魔王は悠太に逆らえない。
いつもは照れて素っ気ない態度ばかりとるくせに、こんなときは甘えるように魔王に縋るのだから。
このズルくて可愛い生き物が、魔王は可愛くて仕方がないのだ。
ペニスから手を離し、代わりに触手を巻き付ける。触手の先端の形状を変え、亀頭を覆った。
「ほら、これでいいだろう? 悠太のいやらしい蜜は全部触手で吸ってやる」
「あっ、あっ、あんっ」
くちゅくちゅと触手でペニスを擦り、中の膨らみを指で押し潰す。
「あっ、いくっ、んあっ、ああぁっ」
ぶるぶるっと体を震わせ、悠太は射精した。先端に張り付いた触手で、吐き出された体液を吸い上げる。
「んあぁっ、いってる、のに、吸っちゃ、あんっ、気持ちぃの、終わんないぃ……っ」
射精の最中に触手にじゅるじゅると吸い付かれ、悠太は更なる快楽に身悶える。
後ろを弄る指の動きも止めずに快感を与え続ければ、悠太の体はぐずぐずになっていく。もう自分の足で立てなくなっている悠太の体を、触手と腕でしっかりと支えた。
アナルから指を引き抜き、悠太の片足を抱える。
「ひあっ……!?」
後孔に取り出した陰茎の先端が当たるように悠太の体を持ち上げれば、ぎゅうっとしがみついてきた。
宥めるように優しく口づけながら、ゆっくりと男根を埋め込んでいく。
「んんっ、ふぁっ……んうぅっ」
「はあっ……ユータ……っ」
熱い肉襞に包み込まれる快感に、魔王は熱い吐息を漏らした。
悠太の中は奥へ奥へと迎え入れるように蠕動し、いやらしく絡み付いてくる。
息を荒げ、一気に突き上げてしまいたい欲望を抑えつつ、慎重に隘路を押し広げていった。
「んあぁっ、奥、まで、きてる、んんっ」
「ああ……ユータの中は、熱くて気持ちいい」
「んっ、んっ」
「私のものに一生懸命しゃぶりついて、喜んでいるな」
「んあっ、あっ、あんっ」
「可愛いな、ユータ、可愛い」
甘い声を漏らす可愛い唇を啄みながら、腰を緩く突き上げた。
内部の膨らみを亀頭で何度も擦り、肉筒の締め付けを堪能する。
「んひあぁっ」
抉るように押し潰せば、悠太はまた絶頂を迎える。噴き出す精液は全て触手で飲み込んだ。
「ふあぁっ、んっ、やあぁっ」
ゆっくりと抜き差しを繰り返していると、悠太がきつく抱きついてきた。
彼に甘えられると、魔王の心はこれ以上ないほどに高揚する。
甘やかして、なんでも言うことを聞いてやりたくなるのだ。
足は触手で抱え、両腕で抱き締め返して震える背中を撫でる。
「どうした、ユータ? どうしてほしい?」
「あんっ、あっ、もっ、と、強くして、いいからぁっ、あぁっ」
悠太は誘うように、不安定な体勢のまま腰を揺する。
その媚態に劣情を擽られ、魔王の欲望は更に体積を増した。
「ひんっ、もっと、一番、あんっ、奥まで、入れて、いっぱい、おく、んんっ、してぇっ」
こんな風に誘われて、断るわけがない。断れるわけがない。
「ユータ……!」
「ひあぁっ」
思い切り腰を突き上げ、ぐぽっと奥まで捩じ込んだ。
「ユータ、どうして、そんなに可愛いんだっ」
「はひっ、ひっ、んあっ、あっ、あっ」
「ユータが、可愛いすぎるから、はあっ、壊したくなるのだっ」
「あひっ、あっ、あっ、あぁっ」
「っく……めちゃくちゃに、して、壊して、私だけのものに、したくなるっ」
「ひあっ、あっ、ひんっ、んんっ」
「私が、どれだけ、はっ、我慢しているか、知らない、だろうっ……くぅっ」
「はあぁんんっ」
ずんっ、ずんっと、繰り返し最奥を穿つ。
奥を突くたびに、悠太は射精をせずに達していた。恍惚とした表情を浮かべ、体を痙攣させながら、何度も絶頂へと上り詰める。
可愛くて、可愛くて、滅茶苦茶に壊してしまいたい。
でも、愛しいから大切にしたい。
結局、こんなに可愛い生き物を、壊すことなんてできないのだ。
「ユータ、ユータ……っ」
「んんぁっ、ふぅんんっ」
唇を重ねれば、懸命に舌を伸ばしてキスに応えてくる。
彼を愛おしいと思う気持ちは募る一方だ。
「ユータ、好きだ、愛してる……っ」
キスの合間に囁き、激しく悠太の体を貪った。
肉筒が陰茎を締め付け、射精をせがむように絞り、吸い上げてくる。
「っは……ユータ……っ」
「ぁんんっ、んっ、~~~~~~!」
しっかりと唇を重ね合わせ、魔王は悠太の胎内に精を吐き出した。びゅるびゅるっと、大量の精液を注ぎ込む。
それを感じているのか、悠太はぶるりと体を震わせた。
「んふぅっ、んっ、んっ……」
ぴちゃぴちゃと舌を絡ませてから、唇を離す。
とろんとした悠太の潤んだ瞳が、魔王を見つめた。
可愛らしいのに艶を帯びた無防備な表情に誘われるようにもう一度口づけてから、ゆっくりと男根を引き抜く。
「んあっ、ま、待っ、零れる……っ」
アナルから魔王の体液が流れ出し、悠太は慌て、どうしていいかわからずに太股を閉じる。
そんな悠太をじっくり視姦してから、触手を中に押し込み、自身の精液を吸い出した。せっかく悠太の中に出したものを自分の体に戻すのは嫌だったが仕方がない。
悠太のペニスからも、一滴残らず触手で吸い上げた。
その間、悠太はずっと艶かしい声を漏らしていた。我慢しているのに漏れるのが余計に猥りがわしいのだと、悠太は気づいていないのだろう。
衣服を整え、体の熱を冷まし、悠太は室内の時計を見て慌てふためく。
「やばっ、もうこんな時間だ。俺は教室に戻るから、お前はもう帰れよ」
悠太の言葉に、魔王は頷けない。
「駄目だ、そんな可愛らしい姿のユータを一人で放り出すことなどできない」
「だから……」
呆れ顔の悠太の声を遮り、言葉をつづける。
「ユータの色気に惑わされた輩が襲ってくるかもしれない。そうなったら、非力なユータは力ずくで手込めにされてしまう」
「いや……」
「私は、ユータが心配で堪らないのだ」
自分の知らないところで悠太にもしなにかあったらと思うと、気が気ではない。
悲痛な表情を見せれば、悠太は困ったように口ごもる。
「うぅ……。じゃあ、人気のない場所には行かないし、もし万が一なんかあれば、大声出して助けてもらうから」
「助けにきた男までユータに誘惑され、襲いかかってくるかもしれない」
悠太は痺れを切らしたように大声を上げる。
「あーもう! ないから!」
「そんなの、」
「ない! 絶対に! もしあったとしたら、死に物狂いで逃げるから!」
そう言って、魔王に背を向けドアを開けた。そのままスタスタと廊下を歩いていく。
魔王は慌ててあとを追いかけた。
「待て、ユータ! 危険だ!」
「だから、なんも危険なんて……」
周りのざわめきに気付き、悠太は言葉を止めた。そしてキョロキョロと周囲を見回す。
たくさんの視線を感じたが、悠太しか目に入っていない魔王は全く気にしなかった。
「ユータ、せめてなにか大きな布で体を隠すんだ」
「おまっ、お前が隠せ! 顔を!」
言われて、サングラスを外したままだったことを思い出した。それで周りの人間に見られていたのだろう。
今更ながら、サングラスをかけた。
悠太はなにか言おうと口を開いて、でもなにも言わず唇を引き結び、踵を返して走り出した。
「ユータ!?」
魔王は走って追いかける。
走って走って、行き着いた先は玄関だった。
悠太はくるりと振り返り、怒ったように魔王に言う。
「もう帰れよっ」
「どうしたのだ、ユータ……」
様子のおかしい悠太に、魔王は狼狽えた。
らしくもなくおろおろする魔王をキッと睨み付け、悠太は顔を真っ赤にしながら口を開く。
「おま、お前はっ……」
「ユータ……?」
「俺に、浮気だとかなんとか言って、散々、俺のこと疑うくせに……っ」
なにを言いたいのかわからないが、悠太が怒っているのはわかった。怒っていて、そして非常に恥ずかしがっている。
羞恥のせいで言葉をつっかえさせながら、必死になにかを伝えようとしていた。
「俺……俺だって、お前が、他の人に、いっぱい、見られたりすんの、嫌なんだからなっ」
魔王は目を見開き、赤く染まった悠太の顔を見つめた。
「自分ばっか、嫉妬してるみたいに、好き放題、言いやがって……俺も、俺だって、焼きもちとか……そういうの、あるんだから……」
「…………」
「だからっ、お前だって、ちゃんと気を付けろよっ」
言うだけ言って、悠太は一目散に駆け出していってしまった。
魔王は追いかけることもできず、その背中を見送った。
頬が紅潮しているのを感じる。
心臓は高鳴り、胸が甘く締め付けられる。
こんなにも喜ばせるようなことを言って、抱き締めることもさせずに走り去ってしまうなんて。
やはり悠太は、魔界に住むどんな生き物よりも魔性の存在だ。
きっと一生、悠太には敵わない。
了
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