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第4話
その後。
教室の掃除を終え、悠太は帰り支度をしていた。
なんだか周りが騒がしい。気になって、悠太はクラスメイトに声をかける。
「なんかあったのか?」
「スッゲー美形が、校門の前に立ってるんだって」
「びけい……」
なんだか嫌な予感がした。金曜日の今日、悠太は恋人の家に泊まりに行く約束をしている。いやでもまさか。確かに迎えに行くとしつこく言ってきた。でも絶対に来るなと断固拒否したはずだ。拒否はした。が、それを聞き入れる相手ではないと、悠太はよくわかっている。
急いで昇降口を出て遠目に確認すると、案の定、そこにいたのは魔王だった。
黒ずくめにマントという服装ではなく、スーツに身を包んだ魔王は、どこから見ても完全に人間だった。ただその美貌がどうしても人目を引き、立っているだけで注目を浴びている。
声をかけようかとはしゃぐ女子達。勝手に写真を撮る者もいれば、チラチラと視線を送りながら前を通りすぎる者もいる。
とにかく目立っていた。
ここで声をかければ、悠太まで注目の的だ。それは嫌だ。知り合いだとバレれば、紹介しろと頼まれる可能性が高い。
人混みに紛れて、立ち去ろう。悠太は来るなと言ったのに、勝手に来るのが悪いのだ。
一緒にここまで来たクラスメイトに壁になってもらい、悠太は何食わぬ顔で校門を通りすぎようとした。
だが、魔王は目敏く悠太の姿を見つける。
「ユータ!」
なかなかに大きな声で名前を呼ばれ、心臓が飛び上がった。
けれどそのまま無視して足を進めた。
「待て、ユータ、どこへ行く!」
呼び止める声を必死に聞こえない振りをするが、親切なクラスメイトが悠太の肩を掴んで引き止めた。
「ユータって、お前のことじゃないのか?」
「いや、人違いだと……」
「ユータ!」
悠太が足を止めた隙に、魔王が一気に近づいてくる。そして悠太をクラスメイトから引き離した。
「ユータ、私を無視してその男と浮気を」
「うわー、わー、わー!!」
悠太は大声で魔王の言葉を遮った。
ここをどこだと思っているのだ。周りには人がいて、彼らは全員こちらに注目していて、聞き耳まで立てている。そんな状況で、迂闊なことを言われては堪らない。
クラスメイトが、悠太と魔王を見てきょとんとする。
「その人、悠太の知り合いなのか?」
「う、うん。なんかよく見たらそうだった。顔見知りのような、親戚のような、そんな関係の人!」
「複雑な関係だな」
「そうなんだ。俺、この人と約束してたの思い出したから、もう行くな」
「おー、またな」
クラスメイトに手を振り、悠太は魔王を連れて急いでその場を離れた。
「うう……嫌な汗かいた……」
人気のない場所まで来て、悠太はじんわり浮かんだ額の汗を腕で拭う。
魔王が悠太の手首を掴んだ。
「そんな乱暴に拭いては、ユータの白く滑らかな肌が傷つく。私が舐め取ってやるからじっとしていろ」
「やめろ、変態っ」
素早く魔王から距離を置く。
「それより、もしかしたら後をつけてくるかもしれないから、さっさと行こう」
「な、まさかユータのストーカーか!?」
「違う! 俺じゃなくてお前の後をつけてくるかもって」
「私の? カツアゲか? ふん、そんな奴ら返り討ちにしてくれる」
「じゃなくて! ……もういい、家までつけられたら面倒だから早く行くぞ」
「そうか、つまり一刻も早く私と二人きりになりたいのだな」
そんなこと一言も言っていない。もうすっかり、会話が噛み合わないことが普通になっている。
会話を諦め、とにかくここから離れようとする悠太を魔王が抱き締めた。
「わ!? ちょ……」
慌てた悠太が体を引き離そうとする前に、周りの景色が変わった。
自分の立っている場所が魔王の家の玄関だと気づき、ほっと体の力を抜く。
魔王は魔力を使えばこんな風に一瞬で場所を移動できるらしい。
「便利だよな、この能力」
「ユータ!」
「え、わ、んんっ」
靴を脱いで部屋に上がった途端、悠太の体を抱きすくめ、魔王はむしゃぶりつく勢いで唇を重ねてきた。
悠太の唇を舐め回し、吸って、柔らかく歯を立てる。唇を充分に味わってから、口の中に舌が入ってきた。
「ふっ……ぅ……んんっ」
人間のものとは違う魔王の舌が、口腔内を動き回る。たっぷりと唾液を流し込みながら、口の中の隅々まで舌を伸ばす。
長い舌に口内を蹂躙されるような感覚にも随分慣れた。魔王の舌に舌を絡め、ちゅくちゅくと吸う。舌の感触が気持ちよくて、うっとりと目を閉じた。
呼吸もままならないほどの濃厚なキスに、体から力が抜けていく。ガクガクと足が震え、よろける悠太の体を魔王がしっかりと支えた。
悠太の腰に腕を回し、キスをしたまま体を持ち上げる。その状態で寝室まで移動した。
ベッドに下ろされても、キスは止まらない。向かい合い、ベッドに座った体勢でキスを繰り返す。
「ん、ふぁっ……」
口づけながら、魔王の手が悠太の体を撫で回す。掌がするすると背中を下りていき、腰を摩る。更に下へ移動した手が、臀部をむにむにと揉みしだいた。
びくびくっと体を震わせ、悠太は口を離した。
「んはっ……は、はあ……っ」
「大丈夫か、ユータ」
尻を揉みながら、魔王は悠太の口の周りを汚す唾液を舐め取る。舌は顎を辿り、首筋まで舐め上げる。尻を揉む指が、ズボンの上からアナルを撫でた。
「は、わっ、ちょ、待て待て待て!」
制止の声を上げ、悠太は身を捩って魔王から離れようとした。だが、魔王の手はしっかりと悠太を拘束して離さない。
「なぜ待たなければならないのだ? 私はもう、充分待っただろう。ユータが平日のまぐわいは嫌だと言うから、週末まで待ったではないか」
「し、仕方ないだろ……。俺はあんまり体力ないんだから……」
魔王とそういう行為をすると、ごっそり体力を削られるのだ。もう無理だと泣いても離してもらえず、散々に貪られ、翌日はまともに歩けなくなる。だから悠太はそういう行為は学校が休みの前日だけにしてほしいと頼んだのだ。言う通りにしなければ二度と触れさせないと脅したら、魔王はおとなしく言うことを聞いた。
「私はきちんとユータとの約束を守った。明日は学校が休みなのだろう? ならばもう待つ必要はないはずだ」
「別の件で言いたいことがあるんだよ。俺、学校には絶対に来るなって言ったよな?」
「あれだけ頑なに断られたら、浮気を疑うのは当然だろう! だから見に行ったのだ。そしたら案の定、貴様は私以外の男に軽々しく肩を触らせていたではないか!」
魔王はくわっと目を見開いて怒号する。
いつものことだが、魔王の言い分には呆れを通り越して感心する。よくあれだけで浮気現場を目撃したかのような物言いができるものだ。
「ちょっと肩掴まれただけだろ。あんなの浮気でもなんでもないからな」
「私のことを無視して、あの男とどこかへ行こうとしていただろう!」
「家に帰ろうとしただけだって。無視したのは悪かったけど、勝手に来たお前も悪いんだからな。めちゃくちゃ注目浴びてただろ。俺は目立ちたくないんだ」
「私という恋人がいることを知られたくないのか? それは浮気相手が学校にいるからではないのか?」
「だから浮気なんかしてないって言ってるだろ! そんなに俺が信用できないのかよ!」
ムッとして声を荒げると、魔王は苦しそうに顔を歪める。
「ユータが心配なのだ。ユータが天使のように愛らしく、可憐で、あどけなさを振り撒きながら、誰もを誘惑する色気を兼ね備えているから」
「そう見えるのはお前だけだ」
「ユータに魅了された男共が、いつ襲いかかってくるかわからないだろう? 抵抗するユータを無理やり押さえつけ、いやらしく縛り上げ、衣服を切り裂き、滾る劣情をぶつけてくるかもしれない」
「それってお前のことか?」
「私は心配で堪らないのだ。私のユータが他の男に奪われるなど許せない。相手の男を殺しても気が済まない。やはりユータを自由に出歩かせるのは危険すぎる。このままここに監禁して」
「落ち着けって! そして人の話を聞け!」
ぶつぶつと不穏なことを言いはじめたので慌てて遮る。
「俺は浮気なんてしないし、俺に欲情する人間もいない。お前が心配する必要なんてないんだって」
「そんなはずはない。ユータを見れば誰もがムラムラし、興奮のままに襲いかかってくるに違いない」
「それはお前だけだ」
「ああ、誰の目にも触れさせたくない! ユータが目に映すのも触れるのも、私だけだ!」
「うわっ、ん、んん──ッ」
興奮した魔王がキスをしながら覆い被さってきた。悠太の体は傾き、そのまま押し倒される。
手と触手を使い、魔王は器用に悠太の制服を脱がせた。全裸になった悠太の体を、魔王の手が這い回る。
「ふぅんっ、んぁっ……」
ねっとりと糸を引きながら、唇が離れる。
「可愛いな、ユータ。触る前から、ここを尖らせて」
「ひんっ」
乳首を指で弾かれ、びくっと体が反応した。
ますます固く膨らんだ乳首を見て、魔王は舌舐めずりする。
「食べ頃の果実のように美味そうだ」
「んあっ、あっ」
すりすりと乳輪を撫でられ、もどかしさに胸を突き出してしまう。
その姿を、魔王は情欲の滲む双眸で見下ろす。
「どうした、ユータ。早く食べてほしいのか?」
「ん、食べて、ほし……」
「ユータ!」
恥じらいながらねだれば、魔王は興奮した様子で乳首にしゃぶりついた。濡れた音を立てながら強く吸い上げ、コリコリと歯を立てる。
「ひあぁっ、あ、あんっ」
甘ったるい嬌声を上げ、悠太は快感に身悶えた。
魔王の舌が形を辿るようにペロペロと乳首を舐め回し、唾液まみれになったそこを指でくりくりと磨り潰す。
「ひぁんっ」
「ああ、赤く染まって、更に美味そうに育ったな。気持ちいいか、ユータ?」
「いいっ……あぁっ」
刺激されるたびに、びくびくと体が跳ねる。
そんな悠太の反応を楽しみながら、魔王は乳首への愛撫をつづけた。
優しく、なぞるように触れられれば、物足りなさに背を仰け反らせる。そうやって催促すれば、今度は強く引っ張られる。甘やかすように舐め上げたあとに、かりっと歯を立てられる。痛みにすら感じ、悠太は与えられる快楽に翻弄された。
弄られれば弄られるほど敏感になり、軽く撫でられただけでも快感が走り抜ける。
思う様嬲り尽くされ熱を持った乳首から、魔王は漸く顔を離した。
「はあっ……あまりにもユータが可愛くて、弄りすぎてしまったな。痛くないか?」
「痛くはないけど、じんじん、する……」
「あとで薬を塗ってやろう」
「いらない。塗るなら自分で塗るからな」
「だめだ。私の責任だからな。ユータの体は私が管理する」
勝手なことを言い、悠太が抗議をする前に、既に勃ち上がっていたペニスを握ってそれを遮る。
「ひゃんっ」
「ここも、触れる前から蜜を垂らすほどに膨れ上がって……。健気に私に触れられるのを待っていたのだな」
「あっ、あっ、んん」
「今すぐ舐めて、蜜を啜ってやるからな」
「あっ、だめ、それだめっ、だめだから待って!」
下半身に顔を埋めようとする魔王に、焦って声を上げる。
舐められたら、すぐに達してしまう。一度では済まず、手と口で二、三度イかされてしまうだろう。悠太はそれだけでかなり体力を消耗する。そして結合したあとも、精液が出なくなっても何度もイかされるのだ。もちろん気持ちはいいのだが、何度も絶頂を迎えると体の負担が大きい。だから今日は挿れるまで射精せずに事を進めたい。
しかし悠太の全身を舐め回すことに異常な悦びを見出だす魔王をどうやって止めればいいのか。
「どうしたのだ、ユータ」
「え、えーっと、その……そう! 今日は俺がするっ」
これで悠太を舐めたがる魔王の意識を逸らせるかもしれない。
悠太は勢い込んで言った。
「俺がしたい!」
魔王は愕然とした表情を浮かべ、ふるふると体を震わせる。
「な……ユータが……私のものを頬張り、私のもので喉の奥まで犯され、恥じらいながら舐めしゃぶり、いやらしく舌を這わせ、私の吐き出した体液で口の中をいっぱいにして、涙を浮かべ顔を真っ赤にしながら飲み干すというのか!?」
「え、」
「ユータがそれを望むと言うのなら、遠慮はいらない」
いや、望んではいないのだけれど。
魔王は嬉々として上半身を起こし、衣服を全て脱いでベッドの上に座る。悠太の腕を引いて、自らの脚の間へと導いた。
悠太の目の前に、勃起した剛直がそそり立っている。
ずっしりと太く大きな肉塊で視界を埋め尽くされ、悠太は躊躇った。
触手を口に突っ込まれたことはあるが、それとは比べものにならない。
早まったかもしれない、と悠太は思った。
そっと魔王を見上げると、期待と欲望でギラギラした瞳で悠太を凝視していた。
今更、できないとは言えない雰囲気だった。
諦めて、悠太は陰茎に触れた。熱くて硬い感触が指に伝わる。
「ユータの小さく可愛らしい手が……っ」
軽く握っただけで、はあはあと魔王の息が上がる。
興奮した息遣いを聞きながら、悠太は舌を伸ばして裏筋を舐めた。びくびくと、生き物のように肉棒が跳ねる。
「くっ……ユータの柔らかい舌が、艶かしく私のものを……っ」
少し心配になるほど息が荒くなっている。
上目遣いに窺うと、反り返った陰茎が更に体積を増した。
すかさず魔王の指示が飛ぶ。
「ユータ、そのまま、私の目を見たまま口に咥えるんだっ」
「ええー」
目を合わせた状態で、ちゅうっと先端に口づけた。ペロペロと、孔の部分を舐める。たらたらと唾液が零れて、口と亀頭を汚した。
欲に濡れた魔王の視線が突き刺さり、耐え難い羞恥を悠太にもたらした。
思わず視線を落とすと、顎を掴まれ視線を戻される。
「ユータ、ちゃんと私の目を見ていろ」
「だって、恥ずかしい……」
「はあっ……恥じらうユータは堪らなく愛らしい……。さあ、その小さな口に、私のものを迎え入れるんだ」
「ん、む……」
唇に押し付けられ、自分から言い出したことなので悠太はおとなしく陰茎を口に咥えた。大きいそれは、当然全てを口に含むことはできなかった。余った部分を手で握り、口の中いっぱいに肉棒を頬張る。
魔王は悠太から片時も目を離さない。恥ずかしくて何度も目を瞑りそうになりながら、悠太は懸命に舌を這わせた。
ちゅぱちゅぱと先走りの滲む先端をしゃぶり、歯を立てないように慎重に奥まで咥える。喉を圧迫され涙が零れる。
魔王に口淫されたときのことを思い出しながら口全体で吸い上げ、頭を動かして陰茎を出し入れする。
「ふぅっ、んんっ、んっ、んんぁっ」
「ああ、ユータ、涙を浮かべながら可愛らしい口をいっぱいにしてっ……一生懸命、私のものを口で扱くユータはなんていやらしくて可憐なんだ……っ」
魔王は興奮した様子で、悠太の頬を撫で回す。
「可愛い、ユータ、もう出る、出すぞっ」
「んうっ、んっ」
「ぐっ……」
「っんむ……」
どぷどぷっと精液が吐き出される。喉の奥に叩きつけるように流し込まれ、躊躇う余裕もなく飲み込んだ。
けれど量が多すぎて、途中で口を離してしまう。残った精液が、悠太の顔に飛び散った。
「んんーっ」
ぎゅっと目を閉じた悠太の顔を、どろどろの体液が汚した。
「はあっはあっ、ユータの天使のように無垢な顔が、私の精液まみれに……っ」
吐精したというのに、魔王の興奮は全く治まっていないようだ。
目を開けると、先程と変わらず欲情した顔でこちらをガン見していた。
「えっと、気持ちよかった……?」
「ああ。視覚的にも肉体的にも最高の一時だった」
顔はべとべとに汚されたけれど、魔王が喜んでいるのなら良かったと、そう思うことにした。
「今度は私の番だ。私もユータを味わいたい」
「え、わっ……!?」
体をひっくり返され、四つん這いになる。
魔王の唇が背中に落とされ、ちゅ、ちゅ、と食むように何度も口付けられた。
背中から、徐々に下へ移動する。腰を通り、双丘へと辿り着いた。かぷりと甘噛みされ、悠太はぴくんと震える。
「やっ……」
「はあっ、柔らかくて滑らかで、ユータの体はどこも美味いな……」
「ひゃっ、舐め、るの、やぁっ」
臀部を舐め回し、やがて舌はアナルへと伸ばされる。
「やっ、やだ、そこ、やだぁっ」
身を捩って抵抗するが、しっかりと腰を掴まれて逃げられない。
表面をぴちゃぴちゃとねぶられると、まるで催促するようにアナルが口を開けてしまう。
綻んだ後孔に、にゅるんと長い舌が差し込まれた。
「ひうぅっ」
指とも触手とも陰茎とも違うぬるぬるとした感触に、悠太はシーツを掴んで身悶える。
魔王の長い舌は、指と同じくらい奥まで侵入を果たした。腸壁を味わうように舌が動き回る。そして、敏感な膨らみを擦るように舐めた。
「ひぃんっ、らめ、らめ、そこ、舐めちゃだめぇっ」
ぞくぞくっと快感が駆け抜け、悠太は震えながら腰を突き出した。
前立腺を刺激しながら、にゅぷにゅぷと舌が抜き差しを繰り返す。
「やっ、やぁっ、あぁんっ」
嫌だと拒絶する言葉は、意味を成さないほどに甘く蕩けている。肉筒は快感に蠢き、舌に絡みつく。悠太の性器は痛いくらいに張り詰めていた。
にゅぽっと舌が抜かれ、今度は指を挿入される。けれど体が求めているのはそれではない。
「あっ、やだ、も、入れてぇ……っ」
「入れているだろう? 美味そうに指を根本まで咥え込んでいるぞ」
「違、指じゃな……んんっ、指、じゃなくて、ちんちん、入れてっ」
「はあっ……私をほしがるユータは最高に淫らで可愛いな。すぐにユータの中を私でいっぱいにしてやる」
魔王は指を引き抜き、後ろから悠太の体を抱え、ベッドの上に座る自分の膝に乗せた。背後から悠太を抱き締めながら、するすると触手を伸ばす。
部屋の隅に向かう触手に、悠太は首を傾げた。
触手は壁に立て掛けられたなにかを持って戻ってくる。くるりと反転し、ベッドの傍らに置かれたそれは姿見だった。
全裸の二人の姿が鏡に映り、悠太はぎょっとした。
「な、なん、なんで、鏡……っ」
「後ろからだと、ユータの顔が見れないのが不満なのだ。だが、これがあればユータの感じている淫靡な表情もしっかり見ることができるだろう」
そのためにわざわざ用意したと言うのだろうか。魔王の得意気な顔にいらっとする。
「やだやだやだ、俺は自分の顔なんて見たくないっ」
「ユータは私を見ていればいい」
「んあっ」
ぐりっと、アナルに亀頭が押し当てられた。
魔王が、後ろから悠太の脚を広げて抱え上げる。恥部が丸出しの恥ずかしいポーズを取らされ、悠太は全身を真っ赤に染めた。
鏡を片付けさせたいのに、じわじわと楔が沈められ、快感に喘ぐことしか許されなくなる。
鏡に、後孔が太い肉棒を飲み込んでいく様が映っている。それが視界に入り、悠太は慌てて目を閉じた。
「くっ……すごいな、ユータの中がうねって……引き込まれる……っ」
「あっ、あ──っ!」
ずぷんっと一気に奥まで貫かれた。
悠太のペニスから、触れられぬままに精液が吹き出す。
「ひぁっ、いってる、のに、あっ、あっ」
下からずんずんと突き上げられるたびに、ぴゅっぴゅっと精液が飛び散る。
自分の痴態が鏡に映され、それを魔王に見られているのだと思うと恥ずかしくて目を開けられなかった。
「はあっはあっ、可愛い、ユータ、好きだ。そんなに顔を赤く染めて……私に突き上げられながら精液を漏らすユータが可愛くて、私も止められなくなる……っ」
「んあっ、あっ、はげし、奥、いっぱいされたら、おかしくなるぅっ」
ぐぼっぐぽっと何度も奥を抉られ、悠太は快感に涙を流してよがった。
「ユータ、目を開けて、私を見ろ」
「やっ、見るの、恥ずかしぃ、んあぁっ」
「見るんだ。自分が誰に犯されているのか、目に映して、刻み付けろっ」
「ひゃああぁっ」
ぐぷぷっと、奥の奥まで陰茎を捩じ込まれ、悠太は目を見開いて嬌声を上げた。
開いた目に飛び込んできたのは、後ろから体を抱えられ、激しく犯される自分の姿だ。
そして、その自分のあられもない姿を、どろどろとした欲を孕んだ魔王の瞳が見つめている。
目が合った瞬間、悠太はまた達していた。精液を吹き上げながら、胎内の陰茎を腸壁で絞り上げる。
促されるように、魔王も欲望を吐き出した。内奥に大量の熱い精液を注がれる。
「はひっ……ふあっ、あっ」
「っく……ユータ」
熱を帯びた声音で名前を呼ばれ、背後から強く抱き締められる自分の姿を、悠太は恍惚とした表情で見ていた。
それから何度も何度も求められ、悠太の週末はほとんどベッドの上で過ごして終わった。予想はしていたが、凄まじい体験だった。
ぐったりとベッドに横たわる悠太の傍らには、ぴったりと魔王が寄り添っている。満ち足りた顔で、悠太の頭に頬擦りしていた。
「可愛い、ユータ、好きだ、愛してる」
「…………うん」
ここで自分も好きだと言葉を返せたら、魔王の不安は薄れるのだろうか。
それとも、悪化するだろうか。
それは、言ってみなければわからない。
いつか伝える日が来るのだろうが、とりあえず今はまだ、この状況がつづきそうだ。
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