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過去の惨劇
ザシュッ...ザシュッ
「あっ.....ぁ.....っ......」
鋭く尖った爪を赤く染めた何者かが自分に近付いてくる。
今起こっている悪夢から目を反らしたいのに目蓋1つ動かせず、開いたままの口からは意味もない音が漏れ出る。
「...ん?僕のことそんなに見つめちゃってどうしたの?可愛いなぁ、食べたくなっちゃう」
その何者か--いや、悪魔は長い舌を出すと僕の頬をベロリとひと舐めした。
その行動に誘発されたのか今更のように身体がガタガタと震え始めると愛犬のアオが飛び出してきて相手の脚に噛み付いた。
「...っ、痛いなぁ。あー痛いなっ!駄犬も纏めて喰ってやるよ!!」
アオの攻撃で急に態度を変え、怒りを顕にした悪魔はアオと僕を掴みあげ、その体長に見合わない程の大きな口を開けると僕達を呑み込もうとする。
その悪魔の姿と置かれた状況にもはや意識を失いかけた時、自分のものではない悲鳴と共に何かが切り裂かれる音が突如耳に届いた。
次の瞬間には誰かの冷たい腕に抱き抱えられた気がしたのだが、そこで僕の意識は完全に途絶えてしまったのだった。
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