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華の指輪

「はぁ、はぁ...っ」 悪夢で唐突に目が覚めた。 夢の内容ははっきりと覚えている。 .....もう嫌というほど何度も見てきたものだから。 無意識に額に手をやると、どうやら冷や汗をかいていたようで手が湿り気を帯びる。 その手を眼前に持ってきて左手の薬指に巻き付いている「華の指輪」をじっと見つめた。 僕は19年前、この小さな村に生を受けた。 産まれた時には既に左の薬指にユリの花が一輪咲いていた。 ユリの花は普通のものと違い調度瞳くらいの大きさで、ユリから伸びた茎が指に巻き付き花弁を支えていた。 このように花を付けて産まれた者は「華持ち」と呼ばれている。 特に珍しい存在でもなく、この村でも半数が「華持ち」あるいは「華嫁」である。 「華嫁」とは「華持ち」が花を持たざる者と婚姻の契りを結んだ後に呼ばれる名だ。 僕が一般的な「華持ち」と異なるところと言えば、このユリの色だけだろう。 「華持ち」たちは皆、花を付けて産まれてくる点では共通しているが、その花の種類は様々である。 花はその花を持つ人物の魂が反映されていて、例えば明るく温かな魂を持つものは黄色の向日葵の花を指に咲かせている。 僕のユリの花は元々真っ白な色をしていた。 母はよく「真白(ましろ)は純粋で真っ直ぐな子だから真っ白な花を咲かせて産まれたのね」と語っていた。 しかし、今はその純白に漆黒が半分程混ざっている。 これは本来の僕の魂の色ではない。 僕の大切な、とても大切な人の魂の色だ。

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