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悪魔の魂
「真白.....またあの夢を見たのか?俺がいる限りもう二度とあのようなことは起こらない。余計なことは考えるな」
この家に一つしかないベッドの隣に寝ていた黒耀 が目を覚まし、自分の腕の中に僕を抱き込み宥める。
この黒耀こそが、両親を殺め僕とアオを襲った狂気の悪魔から助け出してくた恩人、そして--僕の魂の半分を司る者だ。
僕は悪魔に食べられそうになった時、あまりの恐怖に意識を失ったのかと思っていた。
しかし、実は悪魔に頬を舐められた際に魂の半分を抜かれたため起きた現象だと、後に彼に聞いて知った。
人間は魂が少しでも欠けてしまえば生きていくことは出来ず、半分も削り取られてしまっていては数分と持たないそうだ。
そんな僕が何故未だに生き長らえているかというと、悪魔の彼が自分の魂を半分僕に移してくれたからに他ならない。
その黒耀の魂が今、黒く、僕のユリの花を彩っているのである。
悪魔は上位の者になるとある程度魂が欠けても時間をかけて修復出来るようで、死ぬことはないらしい。
それが真実だとしても、彼が何故僕に魂を分け与えてくれたのかは未だに謎である。
初めて会った、しかも種族の異なる人間に。
近年、悪魔と人間は住み分けをしていて、表だった争いは起きていない。
だからと言って関係が良好な訳でもなく、両者ともこれ以上争いを続けていたら絶滅に追い込まれてもおかしくない勢いであったため、不可侵条約が締結されたに過ぎないのだ。
その為、食人を好み、その欲求を抑えられなかった悪魔が実際に人間の領域に踏み込み襲ってきた訳であるし、そうでなくとも人間を好む悪魔や逆に悪魔を好む人間は数少ないと言えるだろう。
黒耀に1度だけ魂を与えてくれた理由を聞いてみたことがある。
彼は暫く僕の方をみて沈黙したあと「.....気まぐれだ」と答えた。
確かに悪魔に食われる瞬間を助けてくれたのは気まぐれかもしれない。
更に100歩譲って魂を分け与えてくれたのも気紛れということにしておこう。
だが、当時7歳で身寄りのなくなった僕を、この村で育て、今も変わらず共にいてくれるのも気まぐれなのであろうか。
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