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第2話・俺の大好きな樟くん

俺のクラスの樟 翔太郎(くすのき しょうたろう)という男は、その見た目で〝損〟をしている。 染めた様な淡い茶色の髪に、片耳にだけ開けた2つのピアス ピアスは日によって変えてくる。 今日は2連チェーン、昨日はネジ型のピアスと輪っか… そんな容貌だから、悪目立ちが先行している。 今日だって、先生に呼び出されているらしく、教室にその姿は無かった。 (今日はどんな理由で呼び出されたんだろ) 自分の机に肘を突くと顎に手をあてた。 樟くんを「不良」や「チャラい」とか言って噂しているけど、俺から言わせたらだ。 樟くんからは、俺の様なの匂いなんてしない。 寧ろ、その逆でーーー 「いやぁ、酷い目に遭った」 そう言いながら、樟くんは教室に入ってきた。 「今度はセンセーに何て言われたんだよ」 クラスメイトが声を掛ける 「いつもと同じ…髪色、ピアス!」 片手をヒラヒラとさせながら溜息を1つ。 樟くんは、自分の前髪を人差し指と親指で摘むと「地毛だって言ってるのになぁ」と呟いていた。 そんな姿を眺めていたら、樟くんと目が合った。 「おはよう、水稀くん」 フッと瞳を細め俺に挨拶をしてくる。 「ぁ、おは、よ」 俺は俯いて小声になってしまった。 樟くんは微笑みを浮かべて、コチラへ近寄ってくる そしてー 「ね、今日もしてるの?」 樟くんの吐息が耳元に掛かると、俺はゾクリと震えた。 「ぇ?は??」 早まる鼓動を抑えつけながら、耳元で囁いてきた樟くんを見遣る。 きっと彼なりの配慮なのだろう 「舌ピ」 更に声を潜めて囁いてくる。 周りに聞かれない様にと思った配慮が、逆に俺を刺激する。 「…試してみる?」 舌ピがギリギリ見えない所まで舌を出して問い掛けた。 樟くんは顔を真っ赤にしながら「節度!」と小声で言って、俺から離れた。 俺は樟くんが大好きだ。 俺なんかとは違う 「水稀くん」 樟くんが俺を呼ぶ 「今日も一緒に帰ろうね」 そう唇が動く。 樟くんは、本当にーーー 俺の事を考えているのだろう。 あの時、告白した俺に樟くんは言ってくれた 〝ちゃんと考えるよ〟 樟くんは真面目で優しい 俺とは違う 樟くんは見た目で〝損〟をしている。 だけど、それを知っているのは俺だけでいい。 (俺を好きになって欲しいな…ね、お願い) .

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