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第24話
片付けを済ませてコスプレ撮影スペースとやらに来た。
そこいらにカラフルな頭がいるし、日常では見かけないような服の人がいる。あれは夏樹の好きなゲームのキャラだ。胸をあんなに露出していて大丈夫なのだろうか。盗撮されないか心配だ。もしくは、されても良いくらいの心意気でいるのか? 犯罪は犯罪だから、取り締まるべきだと思う。
「お兄ちゃん、絡み撮影はNGだから、イチャイチャしちゃ駄目だよ!」
「しねぇよ!」
「あ、でも、シーン再現とかして欲しい! コウちゃん! これやって!」
ふゆにスマホ画面を見せられる。
夏樹を引っ張って、片腕で担ぎ上げた。米俵と同じような扱いだ。
「すごいねぇ。片腕で持てるんだね」
「なちゅは軽いですからね」
「おまえがマッチョだからってのもあるぞ」
「はーい、撮りまーす! 3,2,1!」
カウントダウンの後にシャッター音。しかも連写だ。ふゆは嬉しそうに色んな角度から撮影している。いつの間にか周りに人が集まってきていた。
「あの、撮らせてください!」
「どうぞ」
「ありがとうございます! 目線お願いしまーす!」
撮影されることは慣れているから良いが、人が多い。次から次にカメラを抱えた人が来る。
隣でふゆも撮影されていた。春日も撮影されている。
それにしても暑いな。熱中症になりそうだ。
「ありがとうございましたー!」
「こちらこそありがとうございます」
「なちゅのアカウントに紐づけよろしくなー!」
「はーい!」
夏樹はカメラマン一人ずつに名刺を渡していた。ふゆが用意してくれたらしい。似顔絵とバエスタのアカウントが記載されている。手書きのメッセージがついているが、印刷だ。ぱっと見は1枚ずつ書いているように見える。
「おー、ふゆもなんだかんだで撮影されてるなぁ」
「お前と似ているから顔は可愛いと思いますよ」
「『顔は』って何だよ。おれにとっては、可愛い妹だぞ! 確かに性格はちょっとアレだけどさ……」
「兄のお前がアレとか言ってやらないでください」
男性のカメラマンがふゆにポーズの指示をしている。……あれは、キャラとしてどうなんだ? シンタローのキャラ設定には合わないはずだ。
と考えている間に、春日がカメラのレンズを隠していた。
「な、何するんだ!?」
「なぁに、この子ばっか撮って、あたいは眼中に無さそうだから、気になってねぇ。あたいも撮ってくれて良いだろ? おっぱい撮るってんならね!」
「ぐぅっ!」
逃げていった。
やっぱりそういう狙いだったか。さっきから夏樹のスカートの中を撮ろうとしていたやつもいたくらいだ。こういうのは迷惑行為だと思う。
夏樹を撮っても面白味は無いと思う。スカートの中はスパッツをはいているし、下着は花柄だったから、色気が無い。可愛いとは思ったが。
「ああいうのがたまにいるから困るんだよねぇ」
「春日さんありがとう! さっきからしつこくて困ってたの!」
「良いよ良いよ。あたいも、ちょうど列を切りたかったのさ」
元カノの姉と自分の妹が仲良くなっていることについて、何も思わないのだろうか。夏樹は嬉しそうだ。なんとなく可愛く見えたので頭を撫でてやったら、更に破顔した。人懐こい犬のような笑顔だ。尻尾をぶんぶん振っているように見える。
夕方前にはイベント会場を後にしたが、地元に帰ってきた頃には夜になっていた。
春日とふゆは、2人で今日の戦利品について語りにカラオケに行くらしい。駅前で下りていった。
「イベント楽しかったなぁ」
「そうですね。人酔いも熱中症にもならなくて良かったです。良い本も手に入りました」
「そりゃ良かったよ。メイレイちゃん可愛かったしな」
「夏樹も可愛かったですよ。普段から可愛いですけど」
「ほんとか!? えへへ、嬉しいなぁ。ちょっと複雑な気分になっちまうけど」
夏樹は頬を掻きながら眉を八の字に下げる。言葉を間違えたか? 「カッコイイ」と言ってもらいたいようだが、彼はどう見ても「カッコイイ」より「カワイイ」に当てはまる。嘘を吐くよりも、真心で褒めたほうが良いと思う。
「なあ小焼。コスプレしてセックスしたいって言ってたよな?」
「言ってないです。お前の妄想では?」
「そんなことねぇよ! コスプレして何するのかってので、セックスって言ってたろ!?」
「記憶の捏造ですか」
言ったような言ってなかったような。どうでもよくて覚えていない。
そういえば、乳首にシートを貼ったままだった。夏樹に剥がしてもらわないと。
「これ剥がしてもらえますか?」
「ん。わかった。おれが剥がすんだな」
「夏樹が貼ったんですから、夏樹が剥がすものでしょう」
「そういうもんか? まあ、小焼が剥がせって言うなら剥がすよ。任せろ!」
上機嫌の夏樹は鼻歌を奏でている。赤信号の度にタバコを吸うから歌も途切れるし、しかも同じところを繰り返しているようで、曲としては全く先に進んでいない。サビならまだしも、ずっとAメロだ。さっさとBメロもしくはサビに進んで欲しくなってくる。だが、ここで鼻歌について話しても彼は「ここが好きなんだ!」としか言わないと思う。メロディラインではなくてギター部分だけを歌っているのも気になってきた。謎の変調アレンジまで加えだしてきたので、もう別の曲になっている。
夏樹編曲の謎のヒットソングを聴いている間に車は私の家についた。
ドアを開けば心地良い冷気が体を包んでくれる。冷房の設定は完璧だったようだ。
洗い物を洗濯機に投げ入れ、服を脱ぐ。もうシャワーを浴びるか。夏樹が脱衣所に来た。
「シャワー浴びて良いですか」
「おう。濡らしたほうがシートも剥がしやすいと思うし、おれも一緒に入る!」
「はいはい」
夏樹には……、適当にこの辺りのものでも着せるか。
浴室は生温い。ここにはエアコンの風も入らないから仕方ないか。遠くで蝉の鳴く声が聞こえる。夜でも鳴いているものらしい。
服を脱いだ夏樹が浴室に入って来る。下半身は……珍しく変化が無い。
「あー! 今、おれのエクスカリバー見たな!」
「今日は元気が無いですね」
「おれだってしょっちゅう勃ってるわけじゃねぇよ!」
「それもそうですね」
ずっと勃起したままだと日常生活に影響しそうだ。
それでも、徐々に勃っているとは思う。
腹が空いてきた。そういえば、昼飯をあまり食べていないんだった。差し入れだとかでお菓子は貰ったが、足りない。
夏樹の手が胸に伸びる。軽く触れられただけで、自分では想像できないような甘い吐息がこぼれた。彼は驚いたようで、手を離した。
「ご、ごめん! 痛かったか?」
「ぃえ、大丈夫です」
「そ、そんじゃ、剥がすから」
「お願いしますっ」
シャワーを浴びるだけで、体が痺れるようになる。
触れられただけなのに、妙な気分になる。勝手に声が出る。片方のシールが剥がれた。ピンッ、と刺激を期待して膨らんだ乳首が気まずい。
「もう片方も剥いでくけど、どうする? ちょっと休憩すっか?」
「何の、休憩ですかっ、ぁ」
「い、いやぁ、なんか、必要かなぁって。休憩入れずに剥がしたほうが良いな!」
「ぅあ、アッ!」
「痛いか? もうちょっとだから」
痛いわけじゃない。変な声が勝手に出てしまう。乳首にシャワーがあたるだけで、腰がジンジンしてくる。勃ってしまっている。こんなことになるなんて、全部、こいつの所為だ。
「剥がれたー!」
「ひっ、あ、にゃ」
「よしよし、よく頑張ったな!」
よくわからないまま褒められた。シャワーを止める。水代が勿体無い。
彼の手が私の頬を撫で、唇を重ねられた。絡んできた舌が気持ち良い。擦りつけられた熱いモノに触れる。先走りなのかシャワーかで濡れていた。
「はぁ、あ、小焼ぇ」
「けっきょく、勃ってますね」
「だって、おまえ、すっごいエロい声出すし、エロい顔してんだもん!」
「……夏樹が触るからですよ」
「うっ、何でそんな可愛いこと言うんだよ。出ちゃっただろ」
「変なタイミングでうちの浴室を汚さないでくれますか」
私が扱いていたからってのもあるかもしれないが、床に精液が散っていた。でも、夏樹が落ち着く様子は全く無い。逆に興奮しているようにも見えてくる。
手が胸を掴む。乳首を爪の先で弾かれ、一瞬視界に星が散った。腰がガクガク震える。唇に挟まれて吸われたり舐められたりする度に、体中を電流が駆け巡るように痺れてくる。意志とは関係無くこぼれる甘い声が妙に気恥ずかしい。床に白濁が散る。下を触られていないのに……。
「ん。気持ち良かったか? 乳首だけでイけるようになって、えっちだな!」
「ば、かぁ!」
「ごめんごめん! そんじゃ、こっち、触って良いか? したい」
いつもより色気を含んだ低い声に腹が絞られるような感覚がした。尻を撫でる手が優しい。腹の虫が鳴く。さみしい。欲しい。いっぱい、欲しい。
「『待て』」
「ん。わかった。待つ」
欲しい。早く欲しい。しかし、準備してないから、駄目だ。夏樹は離れる。私の言うことをよく聞く。無理強いすることは無い。必ずコマンドに従う忠犬だ。
普段は柴犬のような可愛さがあるのに、今はハスキー犬のような色気がある。目を見ていたらニコッと笑われた。
「おれ、きちんと待ってる! だから、見ててくれ」
そう言って、彼は自慰を始める。
恥ずかしさは無くなったのか。見られて興奮している変態だ。それを見て興奮する私も変態かもしれない。鈴口からたらたらと蜜が溢れ出ている。自身を扱くスピードが上がっている。
「……こんなことして恥ずかしくないんですか?」
「恥ずかしいぃっ! 恥ずかしっ、いけど、小焼が、見てっから……っ、あ、手、止まんないぃ! きもちぃっ」
「誰が気持ち良くなっていいなんて言いました」
「ふぇっ!? あ、ご、ごめっ、んンッ!」
ぼたた……。床に精液が散る。今のでイクのか。
涙目で見上げてくる。
「ごめん。おれ、勝手に、ひとりで気持ち良くなってた……。小焼も気持ち良くなろ?」
跪いて自身に擦りつきながら言われる。そして、彼は勝手にしゃぶり始めたので、任せることにした。
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