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第80話

はると先生は関わったみんなを教室に集めて両方の話を聞き、自分が言われて悲しい事は言ってはいけない事、 顔や身体の事で嫌ったり悪口を言う事は絶対にしてはいけない事、もし言ってしまったらすぐに謝る事を伝えていた。 加害者の子供たちは素直に聞いて謝ってくれて、悠太郎とはるみくんもそれで安心できたみたいだった。 「悠太郎くん、春海くんを守ったみたいですね……」 ホールに4人を送り届けた後、ぼくは、はると先生と職員室で話をした。 職員室では、はるき先生がホールに設置された防犯カメラのモニター映像を時折気にしながらパソコンに向かっている。 それまで、悠太郎は特定のお友達がいる訳でもなかったから、その行動にぼくはびっくりしたし、感動した。 「悠太郎くんの事……春楓みたいだって思いました。そして、春海くんは僕みたいだって……」 はると先生は何か考えている様子だった。 お母さんがイギリス人で肌の色は他の子よりも白く、茶色くてふわふわの髪に緑色の目をした杜(もり)アーサー春海くん。 昔の宗教画に出てくる天使みたいな見た目の子だなって思ってたけど、はると先生も小さい頃ははるみくんと同じ、天使みたいな子だったのかな。 「……僕に意地悪な事をしていたの、春海くんのお父さんなんです」 「えっ!?」 少しの間を置いて話したはると先生の言葉に、ぼくはどう反応すべきか分からなかった。 「理由は高校生になってから分かってその時謝罪もされましたけど、意地悪をされていた間は本当に辛くて悲しかったです。今回、春海くんがこんな事になってしまって彼に説明しなければいけないと思うのですが、複雑な気持ちになりますね……」 「あの……ぼくが代わりにお話しますか……?」 苦しそうにも見えるはると先生に、ぼくは勇気を振り絞って言った。 「ありがとうございます。これは僕から話すべき事だと思いますので僕に任せて頂けませんか?僕自身の為にもそうしたいんです」 「分かりました……」 「……頑張って」 それまで、ずっと黙っていたはるき先生が突然口を開く。 「ありがとう、春希。君の分まで頑張るよ」 「? ?」 一体、どういう事なんだろう。 ぼくが首を傾げていると、はると先生が笑って言った。 「春希も春海くんのお父さんに意地悪されてたんですよ」 「えっ、そうなんですか?」 「えぇ。その時の僕らは、ずっと春楓に守ってもらってきました。春楓がいてくれたから今があるんです」 ぼくがびっくりしていると、はるき先生はいつもより優しい顔で話した……様に見えた。

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