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よしののおまけ-えち編***
投票ありがとうございました!接近していたので、こちらも書きました。
これで本当に終わりです。
お付き合いいただき、ありがとうございます!
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眠れない。
吉野はベッドの中で相変わらず律に抱きつかれながら、悶々としていた。一度シたあとなので、本来なら緩やかな眠気に襲われるはずなのだけれど、その眠気はいつまで経ってもこなかった。要するに、
足りない。
律が足りない。あんなに鳴かされたあとなのに、今だって律の鼻先は吉野の裸の肩にうずめられて、背後に律の体温と寝息を感じるのに、足りない。腹に緩く回された腕を、指先でなぞる。前腕を撫でて、大きな骨ばった手のひらの輪郭をなぞる。
この手がさっきまで吉野の頭を撫でていた。「吉野くん、いい子」と何度も何度も耳元で囁かれた。今だって思い出せる。低くて甘い声で、下腹部に響く声だ。
また言われたい。今、言われたい。
脳裏で勝手に再生される「吉野くん、いい子」に腰が疼く。今は吉野の腹に回されている手で、からだ中を愛撫して欲しい。
ちょっとなら意地悪されてもいい。乳首を指の腹で潰して、爪で引っ掻いて、摘まんで、無理矢理勃たせておいて、楽しそうに「吉野くんのえっち」って言われてもいい。
「うう……」
そんな想像だけで、からだが熱くなる。律はうしろで相変わらず寝息を立てている。起こしてしまおうか、とも思う。けれど何と言って起こせばいいんだ。まさか「足りないから、もう一回して」なんて言えない。
すん、と背後の律が鼻を鳴らしたので、びく、と吉野の肩が揺れた。起きているのだろうか。
「律、さん?」
呼んでみるけれど、返ってくるのは規則正しい寝息ばかりだ。溜め息を吐く。当たり前だ。
ただ意識すると、律の呼吸が微かに剥き出しの肩にかかっているのがわかって、それだけでもどきどきした。
律の手のひらが吉野の腹を軽く撫でる。
「ん……っ」
突然のことに声が漏れそうになって、吉野は慌てて両手で口を覆った。ソウイウことを考えているから、ただの寝相がこんなふうに感じられるのだ。わかってはいるけれど、熱を溜め込んだからだはそうはいかない。
片手で口を覆って、律がするようにからだを撫でていく。鎖骨のラインをなぞって、そっと手のひらを下へ移動させる。手のひらで、もう既に勃っている乳首を転がす。
「ん、ふ……」
背後ではいつ目覚めるかわからない律が眠っている、という事実に背徳感と興奮を覚える。
これ、ハマったら、やばいかも。
律の指の動きを意識してからだの線を撫でていく。太腿のつけ根に指を這わせた頃には、先走りでべたべたになっていた。
こんなことしてるなんて、律さんには言えない。
頭ではそう思っているのに、吉野の手は自身への愛撫をしはじめる。ゆるゆると扱いて、熱を集めていく。手のひらで先端をやわやわと撫でる。
「は……ぁ」
塞いだ手のひらの間から、息と一緒に押し殺した喘ぎ声が漏れる。律には聞こえているのだろうか。どうか聞かないでいて欲しい。それと同じくらい聞こえていて欲しい。
くちゅ、くちゅ、と水音が立つ。この音ばかりは消せないので、せめて控えめな愛撫になる。それがじれったくて、腰をもぞもぞと動かしてしまう。もうちょっとでいけるのだ。意識が下半身に集中する。
「吉野くんの悪い子」
突然耳元で囁かれて、吉野はびくりと大きく肩を揺らした。羞恥と後悔と、それ以外にも色々な感情が相まって、うしろを振り返れない。その間にも律の手のひらは吉野の腹をやわやわと撫でる。
「ひとりでしてたの?」
耳元で問われる。それに頷くには勇気がいった。目に涙が浮かぶ。けれど返事をすると、律の手のひらは吉野の下腹部を撫で上げてくれる。ずっと欲しかった刺激に「んん……っ」と声が漏れそうになる。
でも触って欲しいのはそこじゃない。律はわかっていて、わざと直接的には触らないつもりらしい。下腹部を撫でていた手のひらは、今度は太腿の内側の際どいところを触っている。
「りつ、せんせぇ」
もう我慢できない。吉野は涙目で律に懇願する。
律は小さく笑って「その呼び方、久し振り」と言った。
「触って欲しい?」
耳元で背後から律に訊かれる。それに、こくこく、と吉野は何度も頷く。
「も、ちょっと、なの」
吉野が懇願すると、背中で律がくすくす笑う。「うん、知ってる」
そう言うと、律は吉野自身を手のひらで包んで、ようやく欲しかった刺激をくれる。
「ん、んん……っ」
相変わらず吉野は声を押し殺していると、口を覆う手を律のもう片方の手に掴まれた。
「声、聴かせて」
それと同時に律動が速くなる。
「あ、やぁ……んっ」
くちゅ、くちゅ、という水音が大きくなる。頭が何も考えなくなる。
「吉野くん、いい子だから」
律が耳元で囁く。
同時に、吉野は律の手の中に、どろりと白濁を吐き出した。
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