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前編 真っ直ぐな想い/1
暖かい布団に包まれ、気怠い朝の感覚に酔いしれる。
枕元に置いてあるデジタル時計に目をやると、まだ6時過ぎだった。
「…で、何でお前は此処にいるんだ?」
「…えへっ」
「『えへっ』じゃねぇよ」
こんな朝っぱらから人の寝顔を眺めては布団の前でヘラヘラ笑ってるのは、近所に住むうちの上の姉貴のとこの長男、隼人。
「お前、また勝手に人ん家に入り込んで。不法侵入で訴えるぞ」
「嫌だなぁ、母さんからちゃんと合鍵預かってんだから、そんな冷たい言い方しないでよ。 それより、今朝は何が食べたい? 俊也さん」
三十路前にもなって今だ独り身の上、女の影もちらつかない弟の身の上を案じ、家事が得意な息子を送り込んできたのは良いが、これでは余計女も寄り付かないという状況に気付いていないのだろうか、うちの姉貴様は。
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