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前編 真っ直ぐな想い/12
アイツが案内してくれたのは、映画館や飲食店を含む大型のショッピングモール。最近出来たばかりということもあり、建物内は家族連れやカップルで溢れ返っていた。
「休みの日にこんな疲れる場所…」
「たまには良いじゃん」
そう言って嬉しそうな顔をしながら、俺の横を歩く隼人。…まぁ、良いか。今日はプレゼントの為だし。そう自分に言い聞かせると、俺は一息吐いて隼人に歩調を合わせた。
昼を回り、時計を見ると丁度周りのカフェが込み合う午後三時に差し掛かっていた。結構な店舗は回ったし、それなりに隼人が反応を示した物もあった。あとは適当にそこから見繕って…、そんな事を考えながら不意に回りを見渡した瞬間、俺の視界に意外な人物が飛び込んできた。
「…真島さん…」
思わずそう呟いた瞬間、向こうも此方に気付いたようで、目が合った。
「おぉ、誰かと思ったら井端じゃないか。昨日はあれから、ちゃんと家に帰れたか?」
「あ…、 昨夜は本当にすみませんでしたっ!」
「『お客さん』間に合った? …もしかして彼が例の高校生君?」
真島さんは俺の隣にいた隼人に目を向けると、ほんの少し口の端を持ち上げた。
「 …そっか。彼が『お客さん』で、今の井端の『良い人』ってわけか」
「…真っ!」
「ははっ、冗談冗談。ちょっと虐め過ぎたかな? さて、邪魔者は退散しますか」
そう言って去ろうと一歩踏み出した真島さんがふと振り返り、俺の腰に実に自然に腕を回した。そして…。
「埋め合わせ、楽しみにしてるから」
俺の耳元で静かにそう言い残すと、いつもの爽やかな笑顔で去って行った。
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