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ルカと公園で別れてからの俺には、自己嫌悪しかなかった。ルカは俺に何度か打ち明けようとしていたし、そうしたくてもできなかった気持ちも今は理解できる。あの夜、話も聞かずに逃げだした自分を殴ってやりたい。でも、どんなに後悔しようと過去は変えられない。
昼休憩を館内で摂りながら、ルカに何かしてあげられないだろうかと知恵を絞った。ひどい仕打ちをした俺に、感謝してると言ってくれたルカに、せめて何か罪滅ぼしがしたかった。
ぼんやりとスクリーンを眺めているうちに、突然、アイデアが降ってきた。ひとつだけ、俺にもできるかもしれないことがある。それが正解かは、やってみないとわからないけれど。
仕事が終わってからも俺はロビーに居座って、支配人が出先から戻るのを待っていた。そんな俺を不審に思ってか、いつもならさっさと帰る高島さんも残って、小糸さん、坂井ちゃんと何やらひそひそ話をしていた。
一時間後にようやく戻ってきた支配人に、まずはお茶を淹れて、ねぎらいの言葉をかけた。相手が落ち着いたところで切りだす。
「なんとかなりませんか」
頼みの綱は権藤支配人しかいない。だが、計画を打ち明けた後、その表情はくもっていた。
「ちょっと厳しいな。そもそも、なんの得にもならないし」
相変わらず利益重視の支配人に腹が立ったが、懸命に堪え、頭を下げる。
「それも充分、承知してます。その為なら、この先一生タダ働きでも構いません。どうか、お願いします! 俺じゃなくてルカの為に、ぜひ‼」
祈りを込めて叫ぶ。するとそこへ、思ってもみなかった加勢が現われた。
「私からもお願いします。タダ働きはしませんけど」
颯爽と登場した坂井ちゃんの背後には、高島さんと小糸さんの姿もあった。
「支配人はルカに借りがあるんじゃないですか」
坂井ちゃんの心強い発言が続く。
「ルカのおかげで女性客が増えて、何度か大入り袋だって出たくらいですよね。忘れたなんて言わせませんよ」
「いや、それはそうだが……」
汗をかく支配人に、更に二人の従業員が追い打ちをかける。
「そうですよ。ルカくんへのお餞別だと思えば安いものですよ」
「支配人の力があればできますって。日頃から、俺にはいくつもコネがあるって言ってるじゃないですか」
四対一の勝負に、とうとう支配人は白旗を挙げた。
「ああ、ああ、わかった、わかった! なんとか掛け合ってみる。ただし確約はできないぞ」
支配人室を出ると、俺はみんなに感謝を伝えた。本当に嬉しかった。そして、これは俺じゃなくて、ルカがどれほど慕われていたかという証しだった。
「ルカの為だよ。つかっちゃんの為じゃないから」
坂井ちゃんにもそう言われた。でも、その口元はほころんでいたし、久し振りに、つかっちゃんと呼んでもらえた。
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