10 / 105

第一章・2

 とても、寝てなんかいられない!  要人は寝具を蹴飛ばし、勢いよく跳ね起きた。  熱いシャワーを浴び、キッチンで軽食を作る。  寮の食堂へ行く時間は充分あったが、今朝は自分の好きなものを、自分の手で作って食べたかった。  優希に会う前に、大勢の人間に揉まれるのも、いやだった。  昨日とは違う、俺と優希の関係。  見るものが、聞こえるものが、触れるものが、すべて新鮮だった。  世の中、こんなにたくさんの喜びに満ちていたのか。  レタスの青に驚き、卵の爆ぜる音に感動し、パンの柔らかさに息を呑む。  全てが、昨日とは違う彩り。  世界が、まるごと生まれ変わったかのよう。  昨日と同じ制服に袖を通しながらも、やはり湧き上がる胸の高鳴りにウキウキしながら、要人は外へと飛び出した。

ともだちにシェアしよう!