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第二章・16
もぞり、と要人が動いた。
優希はどきりと身を固くして、今から始まるであろう羞恥の儀式に身構えた。
だが、要人の腕はこちらへとは伸びて来なかった。
ベッドサイドを探り、いくつかのボタンを操作するかすかな音がした。
「優希、天井を見て」
「え?」
暗い、何も見えない天井。
じっと目を凝らすうちに、ひとつ、またひとつと小さな瞬く光が現れ始めた。
やがてそれらの小さな光は無数の星々となって、全天を飾り上げた。
「う……わぁ……」
「すごいだろ?」
まさか、寝室にプラネタリウムを造っているなんて!
時間が経つと星座は巡り、冬のタウラスから春のレオへと変わる。
夏のスコーピオンを経て、秋のピスケスに移る。
時折流れ星がすうっとそれらの星座を横切り、その度に二人で指差して教え合う。
そんな事をしていると、ぽつりと要人が優希に向かって一言話した。
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