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第三章・15
すっかり短くなってしまったプレッツェルをつまむと、優希はうなだれ大きく息をついた。
「ごめん、要人。今夜は、今夜こそはと思ってたんだけど」
今夜こそ、何をしようと思っていたのか、などという無粋な問いかけはしない要人だった。
恋人として付き合い始めて、もうかなり経つ。
ポッキーゲームなんて口実を作って、ビールでアルコールの力まで借りて、何とか俺を受け入れようと頑張ってくれたんだ。
「いいんだよ、優希。そのままの君と一緒にいるだけで、俺は楽しいし嬉しいんだ」
そして、勝者の証として、優希の近くに放ってある本に手を伸ばしかけた。
だが、そろりとその手を引いた。
「あの、さ。優希。この本いらないから、別の賞品が欲しい」
「別の賞品?」
「そ。本より貴重な、価値のある賞品」
何だろう、と首をかしげる優希。
ああもう、これでも気付かないとか、食べてしまいたいくらい愛おしい。
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