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第四章・7
帰宅への道すがら、優希は時々何か言いかけてはやめる、ということを繰り返していた。
「あの、な。要人。実は……」
「ん?」
「いや、何でもない」
この繰り返し。
そんな言葉を交わしながら、要人は、優希はきっと謝りたいんだろうな、と感じていた。
プレゼント、用意してなくてごめん。
来年は、きっと二人で交換しよう。
こんな感じで、一言告げたいに違いない。
しかし、恥ずかしがり屋の優希の事だ。
ごめん、までは言えても、来年は二人で、とは言えないのだろう。
恋愛に、まだまだ奥手な優希。
いいんだよ、優希。
その気持ちだけで充分だ。
そんなことを考えているうちに、ついに要人の寮の前まで来てしまった。
「じゃあ、また明日」
最後の挨拶をした要人。
立ち去ろうとする彼のコートを、優希の手がすばやく掴んでいた。
「え? 何!?」
「ごっ、ごめん。要人!」
必死の顔つきと声色に、要人は驚いた。
まさか、ここまで気にしていたとは。
それだけではない。優希は自分のバッグを開くと、中から急いで赤い箱を取り出した。
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