55 / 105
第四章・6
慎重に包み紙を剥がしていく優希の真剣な顔を見ながら、要人は幸福感を味わっていた。
(自己満足かもしれないけど、やっぱり贈ってよかった)
プレゼントを開く時の優希の顔。
中を見て目を輝かせる優希の顔。
そして、手に取りだして満面の笑みをこぼす優希の顔。
どれも、初めて見る顔だった。
すごい、素敵だ、ありがとう。
そんな言葉の数々が、とても嬉しく心に沁みる。
「気に入ってくれて、よかった」
「大切にするよ」
その後すぐに、優希が何か言おうと口を開きかけたが、突然隣の6人掛けの席に踊り込んできた女子学生の集団に、あっという間に阻まれた。
女子たちは、少女特有の甲高い大声と少しワルぶった汚い言葉遣いで、今日のバレンタインデーの話に花を咲かせている。
誰に渡した、何を選んだ、いくらかかった、だのと騒がしい事この上ない。
「行こうか」
「うん」
要人と優希は、まるで追い出されるかのような気持ちでカフェを退散した。
ともだちにシェアしよう!