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第四章・5
放課後は一緒に帰ろう、と再び優希に誘われて、要人は妙な気持ちになった。
いつもなら、自分が優希に言いだすようなことだ。
なぜ、今日に限って優希の方からばかり。
昼食しかり、帰途しかり。
それでも優希と一緒にいられることは嬉しいので、要人はもちろん二つ返事でOKした。
優希が気にしないように、バレンタインの話題はしっかり封印しようと心に決めながら。
途中、いつものカフェに立ち寄ろうと言い出したのは、やはり優希の方だった。
席に着くやいなや、バッグを引き寄せ中を探る優希に、要人は嬉しくなってしまった。
「あ! 優希、ここで開けて見せてよ。今朝、俺が渡したプレゼント!」
その言葉に、優希は一瞬迷った顔をして見せたが、バッグを探りくだんの赤い箱をテーブルの上に乗せた。
「要人、本当にありがとう」
「どういたしまして」
わざとおどけたような口調で、要人は場を和ませた。
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