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エピローグ・6

「これからも、優希。俺と一緒にいてくれる?」 「もちろんだよ」  もし優希が俺と別れたい、と言ったら。 (その時は、引き留める努力をしよう)  たとえ無様でも、何とか俺のそばにいてくれるようにお願いしよう。  優希は、過去に付き合ってきた女の子とは違うんだから。  特別で、最高の、恋人だから。    ふと気づくと、吐く息が白い。  かなり冷えてきたようだ。 「ね、優希。こうやって、大きく息を吐いて」  そう言って、要人は白い息を長く吐いた。  冷たい空気の中、要人の吐く白い息は、かすかにミントの香りがした。 「いいよ」  優希は、言われるまま大きく息を吐いた。  空気に、優希の体温が混じってゆく。  その優希の吐く白い息に、要人は自分の吐く白い息を重ねた。  二つの息が、混じってゆく。  二人の吐く息が、一つに重なる。 「覚えてる? 高校生の頃、こうやって間接キスしたこと」 「覚えてるよ。要人に、無理やりキスされそうになったね」  無理やりとは、ちょっと違うよ、と要人は笑う。  穏やかに笑い合いながら、二人は並木道を歩く。  和やかな日常に、互いがあることを感謝しながら。 「好きだよ、優希。愛してる」 「僕も要人のこと、愛してるよ」  やがて訪れる、冬。  それでも二人の間だけは、温かかった。

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