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幸せの音
そのまま十二月の後半も、師走らしくあっという間に時間は進み。予定通りに両親は純の親と遊ぶためにアメリカへ向かい結斗は家に一人になった。
暗い顔をわざと明るくして取り繕うのも、そろそろ面倒だったから親が遠くへ出かけてくれたのは正直なところありがたかった。
そんなふうに周りと一切関わらずに過ごしていた。バイト先が同じ瀬川には今年最後の授業の日に捕まってしまった。
――十二月二十四日。
「やっと会えた! 桃谷、俺なんかした? いや、まぁ動画の件だよな、分かるけど」
あの手この手でわざとらしくメッセージをかわし続けたのだから、瀬川が不審に思うのはもっともだった。
「……えぇと」
バイト終わりにカフェテリアの入り口で手を掴まれて近くの席まで連行される。
「とりあえず、お前が「歌手とかプロ」とか言われるの嫌だったのは、よーっく、わかったから逃げるなよ。もう言わないから、そんなことで友達やめられたら困る!」
「いや、そこまで、深刻なことじゃなくて」
「……あのあと峰たちと話しててさ、他人が褒め言葉でも「プロ」とか「職業」に結びつけるのは、よくないなって反省した。無責任に聞こえるしウザかったなって。考えてみれば軽音の奴らだって、楽しくて楽器やってるだけだし」
「ち、ちが、ホント、瀬川たちが気にするようなことじゃ」
「じゃあ、もしかして、動画のことで『純』と喧嘩した?」
「え? それ、どうして」
瀬川から急に純の名前が出て驚く。結斗が何も言わないうちに、それで瀬川は勝手に納得したので余計に訳がわからなかった。
「なるほど、そっちか」
「え?」
「たしかにいつも一緒にいる相方に黙って動画上げたなら感じ悪かったかも。いまランキング荒らしみたいにMOMOの動画が一位になってるし」
「べ、別に純は動画のランキングとかは、気にしてなかったけど」
「そうなの? だって、この前の日曜日から『純』動画上げてないし、毎週何か上げてたからさ、動画主同士でバチバチになって喧嘩してたらどうしようかって」
「いや、まぁ、純と喧嘩はしたんだけど、別のことで、だから瀬川はホント関係なくて、峰くんには、また遊ぼうって言うつもりだったから」
「そっか、良かった峰も喜ぶと思う」
「うん」
「じゃあ『純』はお前と喧嘩して、機嫌悪くてピアノ弾く気になれないのかな」
「いや、俺は関係ないけど」
「でも、喧嘩はしたんだろ?」
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