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第1話(R15)

 伊福直樹(いふくなおき)の誕生日は7月、彼の恋人の沓名雅雪(くつなまさゆき)の誕生日は3月の筈で、5月も下旬に差し掛かったその日は伊福にとってその日は何でもない日の筈だった。 「く、沓名さん、どうしたんですか? とにかく、ふく! 服を、着てください」  184cmと日本人にしてみると、長身とも言える体躯は恐ろしくほっそりとしていて、名前の通り、雪を思わせる真っ白な肌は目の毒だ。  そんな裸体を余すところなく曝け出し、沓名は伊福の部屋にいた伊福の前に立っていたので、とりあえず、沓名をベッドに座らせて、ベッドの上にあったブランケットで沓名の下半身を覆う。そして、自身のシャツを脱ぎ、沓名に着させる。  伊福は沓名よりも背が僅かに低く、オーダーメイドのようにピッタリと合う訳ではないが、沓名は体躯の割に華奢ということもあり、着られないことはない。 「最近、暖かくなってきたからって、流石に全裸は駄目、ですよ? 流石に!」  伊福はベッドの前に屈み、伊福の指がボタンを1つ、2つとボタンホールに嵌めていく。  すると、あとホールに嵌っていないボタンが2つあるかというところで、沓名の手が伊福の手を止めた。 「直樹くん。僕、そんなに魅力ないですか?」

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