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第13話
『シラー・ドルフェス XX23.1.15〜XX42.5.13 安らかにここへ眠る』という趣旨の墓標。
シラー・ドルフェスが亡くなったXX42は今から、100年も前のことだった。
彼はアイドクレースでも指折りの資産家の息子だったが、19歳と若くしてこの世を去った。愛する両親、そして、青灰色の瞳と髪を持つ友人を残して。
「こっちにあったぞ」
2人の青年は古い墓を手分けして探していると、1人の青年がシラーの墓を見つける。
墓を見つけた方の青年は良質な木を思わせる優しい茶色の髪をしていて、若草の色を与えられたような優しい緑をした瞳をしている。
「ありがとうございます」
100年近くシラーの墓を参っていなかったこともあり、先に墓を見つけられなかった青年は柔和な笑顔で墓を見つけた方の青年に礼を言う。
青年達はひとしきり夭逝のシラーに祈りを捧げると、彼の墓標近くに1つの瓶を置いた。この世のものとは思えない程、美しい緑の霊薬を湛えた瓶は墓場という場にも馴染み、美しかった。
「良かったのか? あれがあれば、君の友人は……」
茶色の髪の青年が言う。
すると、もう1人の青年は「はい」と答えた。
「確かに彼には会いたいですが、私は貴方がいれば良いです」
青年が迷いなく言うと、茶色の髪の青年は「そうか」と満足気に笑う。
すると、青年達を緑の光が包み、青年達の短かった髪は長くなり、耳は横へと尖っていく。
人からアールヴの姿へ。
緑の光が消えると、茶色の髪の青年も青灰色の青年もいなくなっていた。
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