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第12話

「私には、貴方が……分かりません……」  カルセドは戸惑うようにやっと声に出す。  ベリルトは「何が?」と言わず、カルセドが落ち着き、次の言葉を言うのを待つ。 「貴方は酷いけど、優しくて、見るだけでドキドキしてしまって……」  カルセドはまとまらない言葉を言っていくと、絡まった糸の結び目を1つ1つ、解いていくように説明していく。  確かにカルセドはベリルトに惹かれていたが、無理矢理身体を開かれて弄ばれたのは傷ついたし、酷いと思った。  その割にさっきは抵抗したのにカルセドを殴ったり、拘束したりもしないで、熱いキスをして、嫌いだと言う人間の姿をなってくれた。あと、今もカルセドの言葉を急かすこともなく、聞いてくれている。 「私は賭けに負けてしまって……どうこう言えるような立場じゃないのは分かっています。でも、もう、頭がぐちゃぐちゃで……」  ヴェリル、もしくは、ベリルトに好き勝手に身体を弄ばれた時、痛みと快楽に支配されつつも、必死に考えた。  方法としてはベリルトかヴェリルに考えることなく心を奪われても良かったし、ヴェリルかベリルトを考えることなく憎んでも良かっただろう。  森で倒れていたところを救ってくれた命の恩人。その代償に、無慈悲な賭けを持ちかけるアールヴ。  それぞれ違った美しさを持つ姿の男。  カルセドはベリルトの顔も見れなくて、ブランケットをヴェールのように被った。すると、今度はブランケットを持つカルセドの手を優しく握った。 「ベリルト・レリプットの時、我は言った筈だ。人間は面倒だ。面倒なのに、実に愚か。実に愚かなのに、複雑さを装う」  それは恋に対してああだ、こうだと考えることを言うのだろうか。確かに、誰かを好きになることにあれこれ理由をつけることはできても、それはやはり真実の一部だったり、思い込みや偽りでさえある場合もあったりする。  カルセドはブランケットの中で目を伏せ、思いを巡らせるが、ヴェリルがブランケットをゆっくり剥ぐと、カルセドは飛び込んできた光に目を向けた。  光。それはベリルトからヴェリルへと戻る時に彼を包む緑の光だ。 「ヴェリル、さん……」  「ただ、存外、お前は気に入ってる。今までの人間とは違って、不思議なことに」  今までもヴェリルが出会った人間はどんな人間だったかはカルセドには分からないが、ヴェリルはカルセドに好いてくれているのだろう。  信じたい。信じきるのは怖いけど、ベリルトも、ヴェリルも信じたいとカルセドは涙を流した。  そして、 「私の、身と心を貴方に」  カルセドはヴェリルの唇に唇を重ねる。  ブランケットがその瞬間、はらりとベッドに落ちて、要らなくなったヴェールのように広がった。

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