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新たなはじまり(5)

新曲の歌詞とメロディーが出来上がった。 本気…と言えるかどうか微妙なところだが、 いつか見た、冬樹の夢の内容を思い出して作った。 もう1曲は… なんと、圭が急に歌詞を書いてくれたので、 それをメロディーに合わせる事で完成した。 よかったー 「すごい、良い感じになったじゃん」 一輔も褒めてくれた。 「メロディーもいいね、サビとか、結構キャッチーで、覚えやすいかも」 尚人も言ってくれた。 「この調子で、もっと作ってもらおうかなー」 「いやもうお腹いっぱいです!!」 新曲も完成し…練習も何回もやった。 曲順や構成のミーティングも重ねた。 そんな感じで、とても充実した合宿も… とうとう最後の夜を迎えた。 「お疲れ様ー」 「乾杯ー」 その夜、僕らは盛大に打上げをした。 「残ってる酒、全部飲んじゃわないとねー」 「ムリすんなよ、来年のためにとっとけばいいよ」 「郁、お前一応病み上がりなんだから、あんまり飲むなよー」 「え…今更って感じしますけどー」 しばらく飲んでるうちに、 一輔がギターを持ち出してきて、 次々に、色んな曲を弾き始めた。 皆、それに合わせて歌いながら、また飲んだ。 「郁、マジで歌上手くなったよねー」 「そうですか?」 「何かやった?」 「…いや実は…音楽の先生に、レッスンしてもらってるんです…」 「そーなんだ!へえー」 「なんだよ、郁も意外にやる気満々なんだな」 「いや…そこまでは…」 「よかったら、ずっとボーカルやってくれない?」 「ええー?…でも、受験もあるし…」 「じゃあ、卒業したらまたやってくれる?」 「…うーん…考えときます…」 そう言ってもらえるのは嬉しかったけど… まだLIVEの本番もやってないし… 果たして続けていけるのかどうか、 そのときの僕には、計りようがなかった。 そして夜がすっかり更けた頃… 尚人はリビングのソファーに横になったまま、 完全に眠り込んでしまった。 一輔もギターを置いて、 反対側のソファーに転がった。 「俺、もうここでいい…おやすみ…」 そう言い残して、目を閉じてしまった… 「おい、ちょっと…風邪ひくから、布団で寝た方がいいって…」 圭は2人を揺り動かしたが… 2人とも、ピクリともしなかった。 「しょうがないなーもう…」 圭は上から、毛布を2枚持ってきた。 それぞれを2人にかけた。 「郁、お前は絶対!ちゃんと上で寝ろよ」 「…はい…」 僕は、フラつく足取りで、2階へ上がった。 圭も後からついてきた。 そして僕らは、ドアを開けて…寝室に入った。 「酔ってない?」 「酔ってない酔ってない…」 「うそばっかり…」 僕はドサッとベッドに倒れ込んだ。 「はあー気持ちいい…」 と、気付くと…圭が、 妙に真剣な顔で、僕を見下ろしていた。 「…圭?」 彼はゆっくり、僕に顔を近付けてきた。 そして僕の顔を両手で押さえて… しばらくじっと目を見つめていた。 「…」 そして…くちびるを重ねてきた… 「…!」 僕は一瞬、とても驚いたが… 抵抗もせず… やがて目を閉じて、彼のくちびるを受け入れた。 しばらくして、くちびるを離してから… 圭は、再び言った。 「…ホントに、弘真とつき合ってないの?」 僕はゆっくり頷いた。 「…うん」 「本当?」 聞き返してから、彼は… 少しだけ恥ずかしそうな表情で、続けた。 「だったら…俺が、お前を…抱いても構わないの?」 僕は答えた。 「構わないけど?…圭には、借りもあるし…」 それを聞くと、圭はベッドに腰掛けた。 そしてもう一度…僕に口付けた。 「…でも、なんで?」 彼がまた口を離したところで、僕は訊いた。 「彼女いるんじゃないの?そういう類の人じゃないと思ってたのに…」 圭は、じっと僕を見下ろした。 そして、口を開いた。 「…お前に…触発されちゃったんだよね…」 「…えっ?」 「お前は…覚えてないかもしれないけど…」 そして彼は、少し震える手で、 僕のシャツのボタンを外しながら続けた。 「あのとき、混乱してたお前は…誰かと間違えて、俺のことを押し倒してきたんだ…」 「えっ…」 僕はビックリして… あのときの夢の内容を、思い出した。 「…それじゃ…もしかして…」 「うん…」 圭は、また少し恥ずかしそうな顔をした。 「…口でされた上に、挿れさせられた…」 …そうだったのか。 夢だと思って、恭吾にやっていたことを… 僕は圭を相手に、やってしまっていたのか… 「…ごめんなさい…」 「ううん…それは、いいんだ、全然…」 圭は、言いながら… 僕のシャツを、両側に開いた。 「だからさ…試しに、本当の俺と、してみて欲しくなっちゃったんだ…」 彼は、少し頬を赤らめていた。 僕は、彼のそんな様子が、 とても新鮮で、嬉しくなった。 「…わかった…いいよ」 そう言って…僕は、 僕の方から、圭の首に腕を絡めた。 そして、彼の耳元で囁いた。 「…ちゃんと…抱いて」 「男を抱くのは初めてだ…」 圭は呟いた。 「…いや正確には2度目だけどね…」 弘真の悪い予感は… やっぱり的中してたってわけだ。

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