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第2話 チートじゃん

「先ずは1番近いそこの大きいの、魔法陣の上に立て」 「……ウッス」 あまりのことに真田も大人しく言うことを聞いて、魔法陣の中央に立った。 「よし。他の物は魔法陣を踏まないように、精度が落ちてしまうのでな」 ベルトルトさんが再び天高く杖を上げた。魔法陣が光り輝いて、中にいる真田見えなくなる。大丈夫だろうか、たとへ不良でも怪我をしたり死んでしまったりしたら悲しい物だ。でも僕達の心配とは裏腹に、光が収まる頃には普通に真田の影が見えた。 でもなんだか着ている服がおかしい、いや元々制服の原型も無いくらいには着崩されていたけれど、今着ているのはもう全てにおいて制服ではなかった。制服など知らぬと言わんばかりの黒を基調とした侍の様な和風な装いに、しかも刀を携えている。これじゃあ本当に侍みたいだ。 「成る程、お前の職業《クラス》はサムライじゃな。この地方では珍しいのう」 「サムライ?」 ベルトルトさん曰く、サムライはここより遠く離れた地方でよく見かける職業《クラス》のようで、カウンター戦法を得意としているらしい。待ちの技が多いらしい。 「あと、お前達は勇者じゃから、個人の力もこの世界に住む者の10倍近い力を秘めているぞ。試しに、この魔物を倒してみよ」 指パッチンの音と共に、無駄に広いこの大広間の天井の暗闇から大きなドラゴンが降ってきた。あんなの見たのとない、いや現実にいてたまるか。あんなのさすがの真田でも無理に決まって…… 空を縦横無尽に飛び回るドラゴン。でも対する真田は冷静だった。信じられない、外野の俺たちですら真っ青だったのに。みんなが真田逃げろ、危ないぞとそれぞれで必死に騒いでいた。でも真田はそんなのに聞く耳を持たずに鞘にはまった刀の持ち手に手をかけた。 「おじさん、やめてくれ!あんなのに勝てるわけ……」 浅野奏《あさのかなで》。クラスのムードメーカーが声を上げた。そりゃそうだ。あいつは誰にだって優しいやつだ、俺みたいな日陰者にも優しくしてくれる陰キャに優しいタイプの陽キャだ、それは多分不良相手でも変わらない。こう言う局面で先ずこう言うことを言うのは浅野だろうな。 でもベルトルトさんはフォッフォと、笑ってみせた。そして真田も、 「……心配ねえ。こいつは倒せる」 と凛とした顔と声で意思表明をした。ドラゴンの尻尾が真田を叩き伏せようとしなり飛んで来る。もうダメだ、見たくない。俺は顔を逸らして目を両手で覆った。 ……しばらくして聞こえたのは、悲鳴ではなくどよめきだった。少なくとも俺が予想していたそれとは違った。恐る恐る目を開けてそちらを見る。どよめきの理由がわかった。そこにいたのは尻尾が切れて地面に這いつくばりながら苦しみ悶えているドラゴンと、一切として動かずにドラゴンを撃ち落とした勝利者の真田だった。 「流石じゃな、勇者の1人として素晴らしい力よ。しかしこれはあくまでワシが即興で作った召喚獣とも呼べないただの知能のない魔力の塊。魔王はこんな物ではないぞ。……いけるか?」 「はい!」 不良とは思えないぐらいの気持ちの良い返事をして、真田はその場で一礼した。凄い。ひょっとして、俺たち全員にあんな力があるのか? 「お前達、次は誰の職業《クラス》を見ようか。早く並べ」 ベルトルトさんの言葉を引き金に、みんなが我先にと並んだ。当然だ。俺たちは高校生、魔法や力に興奮しないわけがない。でも俺は40人の中でも後ろの方だった上、全員の気迫に押し返されて、最後尾だった。残り物には福があると信じて待つことにした。異世界転移は想像以上に面白そうだった、、

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