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第20話 欲望の熟成

右手の中指が信じられないくらいすんなり入った。ああ、コレは普通に抜けるかも。ベットの上で悶えながら入っている指を動かすことのなんと恥ずかしいことか。それでも、この部屋にいるのは自分だけと言う安心感からか、大胆な動きが取れた。 両脚を遠慮なくM字に開く。あいも変わらず異物感が拭えないが、それでも唸る肉壁から仁が突いていたアレを探し回った。 「んッッ! み、見つけた……」 あった。思ったより手前だった。覚悟も無しにゴリっと擦ってしまったからだろうか、一瞬身体が飛ぶほどビクンとした。 暫くそこをいじることに専念しよう。奥の方にまだムズムズを感じるが、それでも目先の気持ちよさには敵わなかった。自慰を覚えたばかりの猿のように、一心不乱にのたうち回った。 「うぅぅ〜イけない、、なん、で……?」 ハッキリ言おう、最高に気持ちいい。このまま続けていたら今までのオナニーには戻れないぐらいには気持ちいい。それでもイけなかった。理由なんてものはおおよそ察しがついている。オカズがないんだ。どんなに気持ちよかってもオカズがないとイけない。……そして今の俺の、この状況での俺のオカズなんて1つしかない。 「仁、仁……もっとそこ、を、気持ちいいから……」 脳内のあいつに組み解かれる想像をした。その瞬間、身体中が喜んだ。じっとり汗が滲み出ている肌が、本物を求めてムズムズする。欲しい。仁の体温が、声が、全てが欲しいと強く訴えている。 「じ、ん!もっと、もっと、もう好きに、して、いいから!」 求める声がどんどん大きくなっていっても気にはならない。それはここにいるのは俺1人という安心感からか、そんなにまで身体が強く求めているのかは、分からなかった。おそらく後者かもしれない。 イけそう。けどイきなくない。アレだけ欲しかったはずの刺激を拒否してしまう。もう1人だけでやるのは嫌だ、寂しい。それでも快楽を先行する右指は、どんどん俺の心と体を高めていく。 「い、いや、イヤ、イク!イクから〜……だめぇぇえ!」 体の中、まさに心の臓から肌に至るまでの快楽。雷に打たれたような衝撃が走った。いつもの射精の感覚がない。いや違う。今までは一点にしかないはずの快楽が、身体全体を襲っている。真っ白なベットで真っ昼間からこんな事をしてる自分に嫌気が差したが、そんなら羞恥心を軽く流せるぐらいの快楽がそのにはあった。 「うぅぅ……仁、欲しい、もっと欲しい。お前の太いの入れてくれよ〜」 体の疼きがいつまでまたっても治らない。もう衝動を抑えることなどとうに忘れてしまっている。居もしない男を思って浅ましく腰を振るばかりな自分によって、プライドはもうズタズタだった。その悲しみすらも仁に慰めてもらいたくてたまらない、完璧に詰みだ。 手足についたシャリンシャリンという鈴の音と、自分の淫乱みたいな声だけが鳴り響く部屋で、たった1人。指を抜かないと、これ以上やると落ちてしまう。仁が来てしまう、ごめん、ごめんよ仁。お前で抜いてしまった、それ以上のことをしてしまった。 「ごめん、、うぅ、ん」 ただ指を抜いただけなのに、身体が反応してしまった。もうやめよう、後で謝ろう。守ってくれると約束してくれたんだ、俺も正直にいうのが礼儀ってもんだろう。 「梓、入るぞ」 大きな扉が開いた。仁が来たんだ。重い体を起こして出迎えようとベットから出ようとした。しかし、 カチッ 「え…………?」 「……」 扉の鍵をかけられた瞬間体が固まった。そんなことしなくてもいいのに、そもそも俺もこんなに反応することないはず、でも何か得体の知れないものを感じた。息を呑む、ベットの奥の方へ逃げる。しかし仁は真剣な顔で俺を見ていた。迫ってくる、そして一言。 「梓、俺でイッただろ? ……悪い、盗み聞きするつもりじゃあなかったんだ」 背筋が固まった、血の流れが止まるほどの衝撃と恐怖だった。でも何処かに、身体か、脳か、それとも心か。分からないが、このままいくと気持ちよくなれるという、幸せになれるという感情があった。

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