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第23話 一生

世界がひっくり返るほどの衝撃。真面目に内臓が全部持ってかれるかと思った。挿れられた時よりも大きくなってる気がするそれは、容赦なく俺の前立腺を抉る、えぐる。 「くぅ……痛いか?」 「あぁ……! アッ、ぃやだ、ん、……ンン!? 気持ちいぃ……みる、なっ、ううぅっ!」 「……エロ、いや、問題なさそうだな」 痛いものかと心配していたちょっと前の自分が可愛いいと思った。今の俺は、生理的な涙がボロボロと溢れて、何というか、全然可愛くないと思う。まあ元を正せば男に対して可愛いと思う事自体がおかしい訳で。だから、 「可愛い。梓、めっちゃ可愛い……」 こいつみたいに可愛いと思ってる方がおかしいんだ。そしてそれに喜ぶ気持ちを抑えられない俺も、同じくどうかしているのだろう。 「も、っもぅ、いぃだ、ろ! ヌけ、よ……」 「悪い、お前と俺がイくまで我慢してくれ」 両脚を掴まれ、身体中の筋肉は沼のような快楽に敵わずすっかり陥落した。全ての主導権を剥奪された俺は、もう仁によってもたらされる快楽に身を委ねるしかない。人によっては拷問である人によっては天国とも言えるこの刺激。俺はどちらとも思わなかった。ただこいつがいるだけで、まあ悪くはないと思えた。 「うっいい……気持ち、イイ、もっと!もっと、ヤってよ!」 もう自分で欲望を抑えることなど不可能で、癖になるほどの気持ちよさを一心不乱に受け止めていた。前立腺だけじゃない。どうかこの奥の方に感じるムズキを、押したら気持ちいいと本能でわかるそこを、思う存分ついてくれ。そのまま壊してくれても構わないから。 「ひゃ、ぐグぅ!?ア……?なに、それ?」 「……わるい腰が止まらん」 遂に来た。奥の奥の、気持ちいいところ。子宮があるのではと疑ってしまうほどの快楽をその身で感じた。身も心も溶けるほどの熱には、全身を蹂躙することなど容易すぎる。 気持ちいい、もっとくれと口が勝手に求めている。やめてくれ、今これ以上気持ち良くされたら、壊れてしまう、癖になってしまう。十数年で作り上げてきた己が消え失せる。新しい、淫乱な自分が本体になってしまう。 「ここ、気持ち、いいだろ? 壊れるぐらいしてやるから、覚悟しろ」 仁は完璧に捕食者の目だ。まるで目の前の俺を極上の雌だと、食事と見ているような、雄の目だ。そんなふうに見つめられたら感じてしまう。視線で気持ちよくなってしまう。俺の中が気持ちいいのか、それとも動いていて辛いだけか、息が荒っぽいのもカッコ良かった。気持ちよかったらいいな。一突き一突きが確実に俺の何かを蝕んでいた。 「あア……いく!イク、っイク、から! もう、や、めて、しんじゃう!」 「イけ!目の前でイッてくれ。ちゃんと責任取るから、《《一生》》大事にするから!」 「い、いっしょう!?待って、ま、って、コワイ、ぃやだぁ、らめぇ! ひぃ……んあアぁあ……」 一生大事にする。その言葉で、俺の何か、頭の中の名状し難いチカチカとしたものが爆発した。閃光弾のように、頭の中を真っ白にしていった。身体中の熱が沸騰している事を、快楽が全身を駆け巡っている事を、必死に伝える脳はもう機能停止寸前だった。射精の、いやそれ以上の快楽が全身を回って、ただただ放心した。 「ほんっとに、超可愛かった……」 仁は俺のでこに、頬に、口付けを落とした。こうやってみればこいつも大人しくって可愛いもんだけど、今日はもう勘弁してくれ。ほんとに疲れて、このままやるとさらに俺がおかしくなる。 ……ん? 気が付いた、コイツまだイってない。かと言って全く萎えてる中じゃない。むしろでかくなってやがる。ここまでデカイのが俺の中にあると、もう衝撃映像でも見ている気分になる。しかし常時前立腺を押されるこの感覚は……ちょっといいな……これも癖になりそうだ。 「……ごめん。俺まだイッてないから……もうちょっとだけ我慢してくれ」 こいつ俺のこと殺す気だ。息が止まる事を覚悟した。顔、声色、態度、手つき、全てが不良とは思えないほどに優しい。しかし奥にちらつくハイエナのような、雌を見つけた肉食動物のような眼は、誤魔化しようがなかったようだ。 だが不思議と恐怖は覚えない。差し出される手を、これから俺をふたたび堕とさんとする手を、受け入れた。

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