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第35話 告白

「な、なにを……」 恋人ごっことは何ぞや、具体的に教えてほしい何をするかによって返答が変わってくる。出来ることなら手を出す前に教えて欲しい。まあもう手を出してるも同然だけど。 「僕の子供の頃の夢でした。いつか良い人に巡り会い、将来を誓い合う。もう今となっては諦めてしまいましたが、せめて真似事だけでもお付き合い願えませんか?」 しょ、将来の誓い合い……つまり、結婚ということか? いやいやあくまで真似事。こんなイケメンが俺みたいなの好きになるわけないはず。駄目だ自信無くなってきている、魅了のが発揮されてなかったらいいけど……魅了のスキルの制御ができないのは考えものだ。 それは後でベルトルトさんに相談するとして、そのぐらいだったらしてもいいとは思った。1人の人間の夢を擬似的に叶えると思えばいい。それ以上は流石に気が引けるけど、リーさんは紳士だし、ベルトルトさんの身内で王族だし、そんなことはないだろう。 「いいですよ、ちょっとだけなら……」 めちゃくちゃ弱腰で返事をしてしまった。リーさんを信じている、頭でそう言い聞かせてた。しかし俺の脳裏には、欲に突き動かされ俺の処女を奪った仁が、たった数十分で俺を調教しやがった高松がいつまでもいる。男性不信かよ。 「本当ですか!? 本当にお優しい方だ。実は、小さい時から心に決めた方のために、あらかじめ決めておいた方法がいくつもありまして……」 愛の告白ガチ勢だ。俺の態度の急変も気にせずに話を進めている、熱が入るとあたりが見えなくなるタイプと見た。そんなに告白というか、恋人や結婚に憧れがあったのだろう。魔術の才能がないだけで、それが一方的に剥奪されるのは少し可哀想だ。せめて、俺も真剣にならないとな。 「では、あずささんはそのままで。僕がプロポーズをします!」 「お、お手柔らかに……」 熱気に押されるまま、そのまま承諾してしまう。リーさんも多少は緊張しているみたいだが、それ以上に嬉しそうでもあった。本人にとってもお遊戯だろうに。 「こんな機会、またとないでしょう……」 不意に悲しそうに俯くリーさんを見て、なんだかこちらも胸がキュッとした。俺の方に向き直り、覚悟を決めたような顔をされる。風呂場でプロポーズとか第三者から見たら奇妙だろうけど、そんなことを気にする暇はなかった。 そしてもう一つ、俺は知らなかった。海を越えたどころか、世界を跨いだ別の世界で、告白の仕方が一緒なわけがないのだ。大浴場で隣に座られ、太腿を触っていた手が、いきなり俺の息子に近づいてきた。もう片方で俺の腰を包むように抱きしめられていて、動くことは難しい。 「あ、あの……」 これは流石におかしいと、異論を申し立てようと声を上げた。俺の知ってる愛の告白と違う。リーさんはどうかしたのかと、まるで自分の行いが普通であるかのようなトーンで聞いてきた。 「これ、愛の告白っすよね?」 「はい」 「……ちょっと違くないですか?」 「そうですか?怖がらないように、数ある中でも一番ソフトな物にしたのですが……」 ソフトなもの?よっぽど変な性癖がない限り、告白にソフトもハードもないと思う。そうかそうか、だんだん分かってきた。ひょっとして、俺の知ってる元の世界の告白とは違うの事をしようといているのかもしれない。だったら何をだ?シンプルに怖い。 「ん、んぅ……あ、まっ、て……」 「かわいらしいですね、力を抜いてください。大丈夫ですよ」 そうこうしているうちに、ついにリーさんの手が俺のそこに触れた。恥ずかしい声を出してしまう喉笛が、いつもより憎たらしく感じた。お互いに全裸で、しかも俺は抵抗をしていない、リーさん曰く愛の告白。なんだこれは。もう一度言う、なんだこれは。完全に熱が回る前に言わないと、これは告白ではないのでは?と。 「あの、うぅ、俺の知る告白とは、随分違うみたいですけど……」 その言葉でリーさんの動きがようやく止まった。少し考えたあと、まるで全ての辻褄があったように、あ、と声を上げた。俺のを触っていた手をそそくさと離される。もう半勃ちなだけに寂しかった。 「すいません、この世界とあずささんの世界では、告白の作法が違う事をすっかり忘れていました。配慮が足りず申し訳ありません」 腰に回されていた手までもが離れてしまう。身体がもどかしさでぶるりとした。それでもリーさんの話を聞くべく、気を確かに保つ。 この世界では告白と性行為はほぼ同義との事だ。元の世界からしたら信じられないが、男しかいない、つまり妊娠のリスクがないからと考えれば自ずと納得がいった。よって、告白するときにそういった行為をするのは文化である、それは一般人も王族も関係ない。リーさんみたいな澄ました顔の紳士でもだ。 「すいません。土地や人々については知っていたのですが、まさか告白の作法にまで違いがあったとは……」 「いやいいっす。これに関しては俺が不用心でした」 そうだ。両者共々ここまで習慣が違うとは考えもしなかった、これは一種の事故なのだ。それよりも、俺はリーさんに話したいことがある。 「あの、一つだけお願いが……」 「はい。いかがいたしました?」 今度は俺から、彼の手を握った。はてといった顔をしているなか、そっと俺のあそこに再度持っていった。リーさんの身体が固まったのを感じる。自分から誘うと言う背徳感が俺の思考を蝕む。身体が、むずいて堪らない。俺ってビッチなんかな……? 「お願いします。もうちょっとだけ、触ってくれませんか?」 リーさんの息を呑む音が、小さな小さな音だけれども、しっかりと聞こえた。

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