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第36話 俗に言うネコとネコ
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「成る程、発情体質ですか……難儀ですね」
「うう、ごめんなさい……」
このままではのぼせると、俺を持ち上げて脱衣所まで連れて来てくれた。そして、俺の発情体質について説明した。こんな精神状態だし、支離滅裂な部分もあったかもしれないけど、分かってくれたようだ。でもリーさんの手は、確実に俺へと近づいている。
全裸のまま筋肉を揉まれて、胸の突起を始めとした上半身の性感帯を弄られる。長い髪を後ろにかきあげる姿がカッコいい、俺の身体を気遣ってくれる優しいところががカッコいい、そんな態度とは相反する大きなそれを持っているのもカッコいい。浴場とは違って、ほぼ無音ともいえる脱衣所に、俺の喘ぎ声が響き渡った。恥ずかしくって身体が勝手に逃げるも、背後から優しく押さえつけられ無念に終わる。
「大丈夫ですよ。本番は致しませんので」
逃げるのを拒否だと捉えてしまったのか、少し声色が暗かった。こちらから誘ってしまったのにと少し罪悪感を感じた。すると、俺の身体は何を思ったのか、リーさんに向き直っていた。戸惑いをよそに、俺の身体は着実にそこに近づきつつある。
「あの……あずささん? そこは、その」
リーさんの息子を守るには頼りないバスタオルをハラリと脱がせると、紳士で大人で、綺麗な容姿には似合わないほどの大きなモノがあった。俺より大きい、仁といい勝負だ。人前で晒したことがないのだろう、リーさんはモジモジしている。自慢出来る事ではないが、こういった経験は俺の方があるのだろう。
「あの、僕はそういった経験はないので悪しからず……」
告白の時はあんなにノリノリだったのに、この局面になって恥ずかしがっているのを見て、可愛いと思ってしまった。綺麗な顔、紳士な性格、初心な態度に似合わないバキバキのそれ、全てが相反する事に何故か興奮を覚えた。
堪らず顔を近づけると、身体を洗ったばかりなせいか無臭で、人畜無害を装っていると感じるまでにプルプル震えていた。少し、ほんの少しだけと、大きなモノに魅入られるようにペロリと舐めた。
「んっ」
「あ……」
生々しい味が全くしない綺麗なそれは、まさしく初めての刺激だった。思わず出た歓喜の声を引き金に、俺はゆっくりと二口目を味わった。一口目のように一瞬ではない。まるで溶けることを知らない極上のアイスを堪能するかの如く、口の中に入れた。まさか人生で初めて経験するフェラが自分が、しかも俺からやるとは思いもしなかった。未来は本当にわからない。
「あずささん!? き、汚いですって!」
顔を真っ赤にして恥ずかしがっているリーさんを下から見て、何故だか勝ち誇った気分になれた。しかし余裕なのかと聞かれれば、それは全くの別問題なわけで。無味無臭だからまだ正気を保っている。しかしこれで、男の人特有の匂いがあったり汗の臭いが充満しようものなら、俺の理性は消え失せていただろう。
状況に恵まれただけとはいえ、行為中に優位に立てたことは3回中これが初めてだ。少しだけ調子に乗ってしまった。
「ふぅ、ぅ……待って、ください。このままでは……」
これじゃあどっちが突っ込む立場なのかと心配になった。たぶんリーさんが結婚出来たとしたも行為は女性側だったんだろうな……そしてそんな中一番怖いのが、知らず知らずのうちに自分を女性側だと決めてしまっているところだ。
「いいれひゅよ、だしてくだひゃい」
恥は浴場に汗と共に洗い流してきた。まあ実際は身体が熱くてむずいて開き直ってるだけだけど。自分の口に出せとせがむなど、娼でもやりたがならいだろうな。リーさんは安心なんてできるわけがなくて、更に混乱していた。初々しくて可愛い。
裏筋を優しく舌でなぞれば、まるで全身が性感帯のようにガクガクとしている。先よりも根元の方が好きみたいで、歯が当たってしまいそうなところスレスレでなんとか舐め続けた。やはり男同士だからそう言うのは知り合っていた。気持ちよさに喘いでいるリーさんは、ついに俺の頭をがっしりと掴んだ。んん、と思わず喉が鳴ったが、加えているそれが堅く強くなっているのがすぐに分かって、俺の興奮がそそられるだけに終わった。
「あずささん、ごめんなさい。ありがとう、大好きです!」
しばらくしてリーさんは大きな声をあげて、俺の喉に熱いミルクを流した。無臭だったなか、急にやってきた臭みが愛おしい。思わずうっとりとその余韻を噛み締めた。リーさんに言わないと、急にこんなことしてすみませんって。
しかし俺は、俺たちは油断していた。脱衣所から廊下に出る唯一の扉の前にある存在に気付かなかった。たとえばこんな話はどうだろう。後ろのドアの前は勿論、ロッカーの後ろ、部屋の死角、はたまた天井や床下に、クラスメイト全員がいるなんて事実は。
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