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第42話 挑戦
それからは、俺はゆったりと揺らめく意識の中で、部屋中に響く水音を聴いていた。それらは全て、自分の体から聞こえているものだけれど。
前と後ろを交互に責められると、ボーッとする意識とは反対に、甘ったるい喘ぎ声が鼓膜をから伝わって聞こえてくる。なんとかと口を塞ごうとするも手を取り押さえられ、体の自由すらもなくなってしまった。前をいじられてもうすっかり赤くなっているが、何かが足りない。もっと欲しい快感があると、体の奥が訴えていた。
「どうした? 前じゃなくて背後がいいのか?」
俺の考えを見透かしていたのか、それとも単純に俺が分かりやすいだけなのか。わざとらしく前を弄る動きを止めやがったのが憎たらしい。でもここで素直になったら、後ろをさわってくれるのではないか、気持ちよくしてくれるのではと打算はあった。
「ふぅ、うん……前もぅ、イイか、ら、もう……いじって、うしろさわ、って」
絶え絶えの息で必死に伝えた。ただ気持ちよくなりたいとかいう淫乱みたいな一心で。素直な俺がそんなにいいのか、しばらく満足そうな顔で、俺の頭はなでなでされた。いや、後ろ弄ってくれよ。早くしないと仁のそれ無理矢理俺の尻に突っ込むぞ。逆レイプとかそんな性癖ないけどやってしまうぞ、今の俺なら。
そんな事を考えている俺ってすっかりホモなんだなって、冷めた目線で見る第三の俺の存在を感じる。しかし知らぬ存ぜぬ馬耳東風って感じで、目の前のいつまで経ってもニヤニヤしてる自称俺の恋人に、不満そうな声を出してやった。
「焦らしてんじゃねえよ。ぶち込むぞ、俺の尻に、お前のをぶち込むぞ」
「……言う方、オレとお前逆じゃね?」
「笑うな」
俺の不満そうな声という名のまさかの逆レイプ脅迫に笑いが隠しきれていない。しかも追加でぶち込むぞ二回行ったとさらに笑われた。
思わずカチンときた。おねだりに関しては9割俺の自業自得だから仕方がない。しかし思った、仁は俺のことを可愛い小動物かなんかだと思っている節があると。童貞非処女とはいえ俺も男だぞ、普通にショックだ。俺は決心した。今日は俺が勝つ、なんとしてでも俺のケツでヒーヒー言わせてやる。
そんな戦国時代の武士よりも固い目標を掲げて、俺は自分から尻に指を入れた。
「あ、梓……?」
「うっしぇえ」
仁は多分今日一驚いていた、まあ当然だわな。昨日初めてやることやったのに、二回目しかも次の日で、こんなことするまで成長してるとか考えんもんな。実際本人なはずの俺も驚いてる。このエロいことに対する貪欲さというか、成長性は俺が本来持っていたものなのか、こんな才能手に入れてどうしろってんだ。
「もういいから、後はオレがやるから……」
「いや、今日はお前をケツで絞めてやる。キュッと絞めてやる」
「キュッと……?」
ようやく俺を怒らせたことが分かったようで、仁は申し訳なさそうな態度を取ってきた。まあそんなんでは許さない。俺がイかせるまでなんとしてでも逃がさない。
下半身を見れば、仁のはすでに完全に勃起、略して完勃ちってやつだった。俺のケツも、前の先走りの汁と唾液だけでだったが、なかなか良さげに仕上がってきた。自分で準備することのメリットは前立腺を刺激しなくて済むから、心の余裕が保てることだな。
仁のそれを、俺とは比べ物にならないぐらいデカイそれと、俺の入り口をピトリと合わせた。深呼吸をしたら、最後の静止を無視して、自らグッと入れた。熱い熱いソレが入るのに、今更痛みは感じない。気持ちいい、ただそれだけだ。
「あ、梓、悪かったから……」
仁の反応はというと、悪くなかった。俺の方から入れるってのがいい興奮材料になったと考えるのは、流石に自惚れ過ぎだろう。だがしかし、中で感じるソレは前回より確かに大きくなっているのはすぐに分かった。でも俺は知っている、こいつはまだでかくなる上に絶倫なんだ。戦いはこれからが本番といってもいいだろう。
「今日は俺がやるから、黙って感じてろ」
よし、まだまだ平常心を保っている。なるべく自身の急所である前立腺を刺激しないように……いやデカすぎて不可能だ。まあ重点的に責めなければまだなんとかなる。後は出来るだけ締まりよくしていけばなんとか……
自分から腰を振ると、仁は思った以上に素直に感じてくれた。俺と違って男らしい喘ぎなのは癪だが、この際我慢だ、我慢。いつ間違って前立腺を抉ってしまうかわからない綱渡りな俺だが、今は俺の方が有利だった。
「ふ、ん、どうだ、参ったか!?」
仁は男らしくハーと声を出して、今にも俺を食いちぎらんとする欲情の目で見ている。まだまだじゃあねか、もっと抵抗する意思もなくなるぐらいヘロヘロにしてやりたい。ネコの俺が、ケツで。
改めてなんだこの状況はと思いつつも、一旦ついた俺の闘志は揺らぐことはなかった。
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