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第89話 同じ穴の狢だ

「……あーあ。俺の時と反応違くない? なんで中学ん時から一緒の俺だと嫌がってるくせに、こんな頭の足りない筋肉だるま相手だと抱きしめ返したりすんだよ?」 「そ、そんな言い方はないだろ。それに関しては今までの所業が答えだと思う」 「第一、藤屋が俺たちに手を貸すような真似したんはお前のせいだろ」 「だからなんだよ。過程は問題じゃねえ、今弱りきった梓をレイプしてるのが真実だ。もう友達じゃねえな。最初っから気に食わなかったんだよ、真田と同じ怪力しか脳のないぽっと出の癖にイキんなって……」 何やら不機嫌そうな薫を軸に会話が進行している。違う、違う、ふじやんはそんなんじゃない。くそったれ。頭がぼーっとしてて話を聞くのは勿論言葉も発せられない。ただ大きいとか気持ちいいとか、俺の中に入っている圧倒的強者である雄を誘う言葉しか出すことができない。 ふじやんは律動を繰り返しながら、俺から見て薫が視界に入らないように、大きな身体で盾のように守ってくれた。そのおかげで俺は恐怖の対象の表情を見なくて済んでいる。どんなおぞましい顔をしているのか、蔑んでいる、いや寧ろまるで悪趣味なショーを楽しむ漫画のお金持ちみたいな邪悪な顔かもしれない。 「梓、大丈夫だ。俺だけを見てろ。お前に手出しはさせない」 「うん……ぶじやんしゅき……」 こんなに優しいのに俺を強姦しているだなんて、何かの間違いではといまだに疑ってしまう。力を全て彼に委ねたい、この優しい強姦魔に沢山イかせて欲しい。回らない頭でそんな事を考えながら、体が好き好きアピールを始めている。飼い主に懐く猫のように大きな胸板に顔を擦り付けながら、ガッチリと抱き締める手を強くしている。 俺に覆い被さっている状態だから、ふじやんの顔は俺しか見えない。目に見えて恥ずかしそうなのがちょっとだけ可愛い。思わず笑みが溢れて少し笑ってしまうと、ふじやんも恥ずかしがる表情は隠せないにしろ、いつもの紳士のような笑みを見せてくれた。やっぱりふじやんだな、優しいな。もし何か歴史が違ったら、俺の初恋は仁じゃなくてふじやんだった?……いやいや、それはどうだろう。なんだかんだ友達のままだったかもな、仁が初恋じゃないとしっくりしないような。惚れた弱みだな、これは。 「そんなにラブラブカップル見せつけて満足か? あーミスった、真田も連れてくればよかった。あんな噛みつく凶暴犬、そこらに縛りつけて目の前で梓犯せば最高の見せもんだったろうに」 ……そこまでいう必要はないんじゃないのかとは思う。いや俺も散々暴力主義者だのくまやライオンだの言ってきたけど、ここまでは思ったことは一度もない。勿論頭と心、どちらにおいても。しかし悲しいかな。こいつの声が聞こえるたびに、気配を感じるたびに、体の震えが止まらない。悔し過ぎる、恋人をここまで侮辱されるのってこんなに悲しくて悔しくて、怒りがおさまらないものなんだ。 「大体よく梓もこんな筋肉脳と仲良くやろうなんて思ったよな。筋肉があるのはまあいいとして、自分の力の使い道を知らないからこんな風に利用されてんだぜ、わかってんのか」 「あ、梓のため……」 「だからお前はいつまで経っても藤屋勝なんだよ。はっきりいうぜ、何が紳士だ、お前はただの大バカだ! 俺のいう事を頭だから信じて友達泣かせて、挙げ句の果てにレイプときた!」 ……もうやめてくれ。 「これからお前はいくら罪滅ぼしをしようと、たとへ命をかけて梓を守ることがあっても、お前の罪は拭えない! 何故なら、お前はどう転んでもモノホンの強姦魔だ。俺たちと同じ、同じ穴の狢だ」 ふじやんの手が震えた。そうだよな、憎くて憎くてたまらないよな。俺も同じだ。ふじやんをそんな風にいうなんて許せない。だけど言い返さない。何度も声に出そうと試みるものの、すんでのところで喉で止まる、……だから俺は励ますことにこの限りある体力を使いたい。あんな話のわからない狂人より、目の前にいる筋肉ムキムキで力持ち、素直で優しい彼への励ましをしてあげたい。 「ふじやん、俺、しゅき……」 「……ん?」 「ふじやんのこと、めっちゃすきぃぃ」 「っ!?」 背中に回している手を下ろして、震えている手にそっと触れた。それだけで飛び上がるように驚いていたが、同時にこの上なく嬉しそうな顔をしてくれる。薫の顔はわからない、でも他の二人の目は明らかに俺たちを優しい色で見ているのがわかる。全然チクチクしないんだ。 ……あとやっぱりチンコもデカくなった。これ以上大きくなるのかと少し驚いたが、今はこれで気持ちよくなりたい。そんな雌の欲望が先行していった。足を大きく広げて無抵抗かのように身体を曝け出す。 「なぁ、あと、ちょっとでイケそうなんだ。もっともっと激しく、少しぐらいちょっと痛くしてもいいぜ……?」 「うっ……ぐぅう!」 ひゃんと声が自然と出たとともに、身体の中に熱いのが入った。……ん? ひょっとしてふじやん、さっきのだけでイッたのか? 「ふじやん、なかあちゅいぃ、出してくれたの?」 「わ、わりぃ……」 両者ともに混乱している、何だこのマジの恋人セックスみたいな甘い雰囲気……そう思っていると、 「おい! 梓! 大丈夫か!?」 仁の声が聞こえた。ああ、仁だ、ようやくきてくれた。いや全然待ってない、ちゃんと仁のこと待ってたよ。体当たりで壊された扉から見える仁に手を伸ばすも、俺の意識はここでこときれた。

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