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第101話 四人会議
ここにいる4人で話そう。それはつまり、仁も含めていると言うこと。その本人ときたらもういいぜ来いよみたいな雰囲気で薬湯の方じゃない隣の湯船に浸かっている、シンプルにスタンバイが早い。
……でも確かに明が不在とは言え、遅かれ早かれ話さなくてはいけなかったふじやん達と、ここでちゃんと意見を交えるのはいい事かもしれない。更に俺サイドでの意見だけど仁がいることで、色んな意味で安全性が飛躍的に向上しているのも魅力だ。藤やんの要求は言ってしまえば、俺にとって有利な条件だと思う。
「まあ、仁と一緒なら……いいぞ」
「そうか、よかった。もし目を合わせただけで逃げられたらとか、涙を滝のように流しながら断られたりしたりとか、最悪の想定を8個考えたが問題なかったな!」
「いやそれは考えすぎ」
いつもよりもちょっとだけ心配性になっているふじやんと他愛のない会話をした。隣の暁彦の顔に、俺はどうすればいいのかわかんないと書いていた。さっさと湯船に入ろう。そう誘うだけでちょっとだけ緊張が逸れたようで、軽くかけ湯をしてから湯船に入った。勿論だが、その際隣の湯船は絶対にやめとけと言っておいたからな。
♢
4人が湯船に入って一息つく。左から暁彦、ふじやん、仁そして俺だ。仁を挟んでいるから個人的にはかなりいい席を取ったと思う、流石は不良だ安心感が違う。さて何を話そうか、俺気にしてないよって言うべきかな。でも向こうから話すよう誘ってくれたのに、こっちからガツガツ話すのはなんか違う気がする。きっと2人も何かとっかかりがないか探してくれてるはずだから……
「……見直したぜ」
「ん?」
「お?」
「へ?」
いざと言うときに立ち上がるけど、とりあえず静観するポジションだと思っていた仁が急に喋り出した。いや全然いいぞ、4人が喋る、つまりは全員に発言権があるから、それに話のとっかかりも無事に出来たし。それにしても本当に脈拍ないな。全員がもれなく完璧に油断していたから、同じタイミングで声出しちまったよ。
「藤屋と高林、明とかに出くわしたときさ、もし最初に梓に言う言葉が言い訳だったら叩き斬ってやろうと思ってた」
怖い。でも仁の目は何処までも正直で、真っ直ぐで。仁の衝動によって手が出るのではなく、俺を守るために言ってくれているんだなって思えた。でもその目は真剣とは言え怒ってはいなかった、それはわかる。
「その、藤屋が話進めてくれてたから話すタイミングなかったけどさ、真田的にオレもセーフなんか?」
「ん? ……まあ元々高林は無害だからセーフだと思う。羽原みたいなやつだったら昨日の時点で首掻っ切ってたぜ」
「ヒェッ」
「冗談だよ。羽原見てみろ、今日も首だけじゃないだろ」
へえ、うんなるほど。なんかわかった気がする。ひょっとしたら仁は、最初から暁彦を許すつもりだったんじゃないのかって。なんというかふじやんと対応がいい意味で全然違うような気がする。とにかくちょっとだけ力が抜けた、安心が身体を伝う。薬湯じゃないから安心だと肩まで親に使った。
するとふじやんが覚悟を決めたように、よしと一言言う。どうしたんだろう。何かさらに言いたいことがあったんだろうか……?
「その、あれだ。申し訳ない梓! 俺、まさか仲間の羽原が嘘を言うなんて思ってなかったんだ! だからって騙された理由にはならないけど……本当に、すまなかった!」
「お、落ち着けよ! 梓が聞いてると言うより押されてるから……」
熱意は伝わるけど、いきなりそんな大声出されて捲し立てられたら許そう許さない以前に驚いてしまう、言葉が出ない。もう俺としては明も含めて許してやりたい気持ちが強い、本音を言えば仲間内のトラブルはそこまで引きずりたくない。俺にもある種の責任があるわけだし、そんなに思い詰めないで欲しかった。しかしそんな中でも仁は最高に俺の晒ししてくれていた。
「ちょいと待て、羽原に騙されたって一体何吹き込まれたんだよ」
確かに。そういえばレイプされてる時、ずっと梓のため梓のためって言ってたけども、あれはいったいどう言う意味なのだろうか。ふじやんは暁彦の静止と仁の質問によってようやっと正気に戻ったみたいた。しどろもどろだったけど、重い口を開いてくれた。
薫は、俺が仁に恋人のフリしといて無理矢理レイプされて、毎日泣いていると言っていたようだ。それだけでも仁はキレるとこ寸前、俺と暁彦のおかげでなんとか怒りを抑えていた。しかし、これだけでは終わらない。なんとここで薫は俺は梓を守りたいと善人面をしていたらしい。俺もここから言葉を失い始めた。元々そこが知らないやつだとは思っていたけど、ここまでの百枚舌とは恐れ入った。前世狐かよ。
「梓を解放するには、俺たちで寝取るしかないって……俺だってレイプは嫌だったけどさ、俺がする事で梓が助かるならって思ったんだ……」
そんな事言ってたのか……俺は薫への恐怖がぶり返しそうになってた。用意周到すぎる、前世はただの狐じゃねえな、化け狐だ。
「……おい高林、お前も薫にそうやって嘘つかれたんか?」
「へ!? お、俺は……俺も、同じ、かな?」
一目でわかった。暁彦は嘘をついている、仁は気付いてないかもだけど、目が泳ぎ過ぎてて面白いぐらいだ。行くあてのない怒りが仁を襲っているようで、体が震えているのが見ていて辛かった。その時、
「2人とも、湯加減はどうだい? 特に手前は薬湯だから気持ちがいい……なんで真田と梓までいるの?」
天からの女神か、それとも悪魔の嫌がらせか。吉と出るか凶と出るかわからない男、その名も瀬戸未来がやってきてしまった。
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