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第118話 俺弱すぎだろ

腕立て伏せから始まり、上体起こし、プランクなどなどやれるだけの事をやり尽くしてやった。他の連中には無理させたら悪いと休憩時間を多めに設けたが、その中でも俺はトレーニングを続けた。みんなに追いつくためには倍のトレーニングをしなければならない。後で迷惑をかけてしまう前に、今ちょっとだけ迷惑な行動をするのは許して欲しい。 俺としては新しいスポーツウェア(成に無理を言って作ってもらった)もあるし、モチベーションは未だかつてないほどに高い。まさに絶好調という表現がふさわしいだろう。しかし周りは納得いかなかったようで、俺を静止する言葉は後をたたない。結局俺がプランクの途中で倒れてしまったのをきっかけに、無理矢理休まさせた。 「筋トレになると熱くなるんだな……それにしても無理はよくねーよ」 「過度なトレーニングしてもいいことないと思う。超回復を狙うにしても効率が悪すぎだ」 「それにしても何でそんなにトレーニングするん? やっぱりアレか、魔物倒したいけんか」 「魔物をいっぱい倒したいなら、僕が教えてあげるよ!」 言葉の滝を頭からかけれて、俺も頭が冷えたらしい。確かにちょっと熱くなりすぎたな。倒れながらのトレーニングはコンディションを落としやすいから今度から気をつけなければ。……それにしても健吾と暁彦の魔物退治の話は的を射ていると思った。 仁の筋肉を見ていて思ったのは、閉鎖的な環境で決まったトレーニングをするよか、計画性がなくても喧嘩なんかで実践的に筋肉を使った方が鍛えがいいと言うことだ。やっぱり実践で使う筋肉ってのは質は勿論効率も全然違う。出来ることならすぐにでも魔物と殴り合ってみたいものだがここは船上、水の中の魔物は初めてには向かないだろう。ということで…… 「おいお前ら、次は相撲だ」 「す、相撲?」 「ああ。俺と相撲をとってくれ!」 最初に言っておくが俺は至って真面目だし、相撲をすることによって実践経験は勿論、今自分の足りていない筋肉だってわかるかもと思った次第だ。しかし他の連中は、外で成り行きを見守る外野含めて思い通りにはならなかった。慌てふためいているのは何故なのだろう。 「その、梓と相撲取るのか?」 「その汗だくのスポーツウェアのまんまで」 「エッチなことはダメだと思うよ!」 「それに……ぶっちゃけ言いたくないけど、踊り子だと筋力上げるだけ無駄な気が……」 コイツらはまだ俺のことを女の子扱いしてやがる。まあ実質今の俺は筋力的にも下ネタ的にもそんなもんだけどさ、それでも納得できるかと聞かれればそれは別問題なわけで。別に今すぐ勝ちたいなんてことは言うつもりはない。むしろここで負けに負けまくって、足りないものを再確認できたらと思ってる。 「その、そんな事しなくてもいざとなったら俺たちが守ってやるから……」 「あっそ、やる気ないんだな。じゃあこの際仁とか薫に頼んでみるかー」 「「「やる!!!」」」 諦めたふりして2人の名前を呼んだら一気にやる気になってくれた。仁は反応がイマイチだったけど、薫を持ち出すと目の色が変わる。いつのまにか仁より危ない人間扱いをされている薫を心配しつつ、俺と順番に試合をする相撲が始まった。先鋒はふじやん次鋒は明と続き、暁彦、そして最後が健吾といった具合で決まった。相撲なんて小学生の頃弟とやってわざと負け続けた記憶しかないが、まあ体で覚えられると挑戦を始めた。 …… ………… ……………… 「はい場外に落として、僕の勝ち!」 「ま、負けた……」 結果としては惨敗だった。まさか一回も引き分ける事なく完膚なきまでに叩きのめされるとは。さっきも言った通り、負けるのなんて想定内の話で驚くは勿論悲しむこともないだろう。しかし俺としてはどうしても納得できない部分がある、めちゃくちゃ手加減された。俺以外はチートで基礎体力が大幅に向上しているのはわかっていたが、まさかこれ程までに無慈悲な物だったとは。仁や薫もなんだかんだで手加減してくれていたのだと今日やっと理解した。 特に傷ついたのは、最後の健吾との試合だった。一回り小さい健吾に軽々とお姫様抱っこされた挙句、何も出来ずに場外に優しく置かれた。力強すぎて何も出来んかったんだけど異世界チート理不尽すぎやしないか? もうちょっと俺にも慈悲をくれても良かったのではないのか? 俺は茫然自失のまま休憩を取り、その間4人が楽しそうに相撲をとっているのをみて、物思いに耽っていた。

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