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第77話
その日はマレウスがサバナクロー寮のレオナの部屋を訪れていた。
「お前のその『好意』ってなんなんだ」
唐突に疑問をぶつけてきたレオナに、マレウスは笑って答えた。
「お前に抱いている想いは『好意』以上だ」
「だから……、その『好意』がどんなもんだって聞いてるんだ」
レオナは言葉が上手く伝えることが出来なくて焦れていた。
「『好意』は特別な想いはないだろうと僕は思う。お前に愛したいし僕の想いはそのくらいの『好意』だ」
レオナはここにきてまた意味が分からなくなっていた。
「意味がわからねぇな」
「愛するのには意味や対価など考えることはやめたほうがいいだろう。生き物の想いは意味のないものだと僕は感じている」
「オマエはそんなこと言うヤツだと思ってなかった」
「なんだ、僕の自論に何か文句でもあるのか」
「いや。ただオマエも色々と思うこともあるんだなと驚いていたところだ」
愛に意味や対価を考えてはいけないのは、レオナもなんとなく思っていたことだった。
「茨の谷に帰れば、こんな恋愛など出来なくなる。だからお前を妃に欲しいと思っているのだが……」
こんなことをマレウスはサラッと言いのけてしまうのだから、純粋なのかタラシなのかレオナは不安に感じた。
「それこそ国際問題だろ。茨の谷の王の妃に夕焼けの草原の第二王子って、どう考えてもおかしい」
「少しは考えてくれるのか、キングスカラー。僕はとても嬉しいぞ」
「だいたい男同士でどうやって結婚するんだよ。前にも言ったがトチ狂った王だと非難されるぞ」
「……そんなこと言っただろうか?茨の谷では同性同士で結婚など稀にあることだ。さして気にすることはない」
「とにかく!!……俺みたいな厄介者を受け入れてもらう事は考えてない」
「僕はことを早めようとは思ってはいない。お前の気持ち次第だ」
こんな話をするつもりはなかったレオナは溜息を吐いて横になった。
ただ『好意』について聞きたかっただけなのに。
「僕はもう夜伽など、お前以外としたくはない。そう感じているだけなのだ」
レオナも真剣に『好意』について聞いたのだが、マレウスの想いも真剣だった。
きっとマレウスが思っているよりもレオナは初心で、レオナが思っているよりもマレウスは初心ではないのだろう。
「……話はもういい。今日が終わっちまう前にさっさとシテ寝る」
レオナはそう言うと、マレウスをベッドに誘った。
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