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第9話

 ガチャンと玄関の閉まる音がして、ナナトのふりをしたヨゾラが息を吐く。 「……良かったんですか、ナナト」 「別に好きでもねーし、いいよ。潮時でしょ。ヨゾラこそ、あの子の事ちょっと気にしてたじゃん」 「知ってたんですか」 「まーね。二週間前に俺がヨゾラのバイト先に行った時、ヨゾラがチラチラあの子を見てたからさ」 「ええ、骨格が綺麗で気になったんです。中身は最悪でしたが」 「相変わらず変なとこ見てるね。この五日間、俺があの子を甘やかしてる時のヨゾラの顔、最高だったよ」  ヨゾラの姿でナナトは口角を上げて笑う。 「嫉妬塗れのはしたない顔。色んな感情が混じってて、ぐちゃぐちゃの顔。俺、その顔を特等席で見たいから、ついつい女の子連れ込んじゃうんだよ」 「彼女で十三人目ですか、あなたもたいがい悪趣味だ。僕の嫉妬がみたいばかりに好きでもない女に愛を囁くとは」 「ヨゾラだって一緒に入れ替わって遊んでるじゃん。でもね、ヨゾラは俺に嘘つかないし、物静かだし、ずっと一緒にいるからだいたいわかるし、俺の事をよくわかってるから好き、愛してる。ねぇ、女の子に嫉妬するぐらい俺のこと好きなんでしょ? 」  ナナトの急な告白にヨゾラはきょとんとした後、微笑みを深くする。 「僕も骨格が美しくて、思いやりがあって、よく話してくれるナナトを愛しています。僕だけにあなたの愛をください」  ヨゾラの返答にナナトは嬉しそうに頬を赤らめ、笑う。 「なんだ、余計なことしなくても最初から俺達両思いじゃん」 「ずっと俺だけ見てて。俺のこと理解して。俺が望むヨゾラでいてよ、ヨゾラ」 「誰にも触れさせないで。有象無象に愛を囁かないで。僕に秘密を作らないで話をしてください、ナナト」  お互いの姿を模した二人は手を絡め、静かに額を合わせた。

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